キムタク『グランメゾン東京』高視聴率のワケ…TBS“日曜劇場”枠の王道ノウハウの結晶

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TBS系『グランメゾン東京』公式サイトより
TBS系『グランメゾン東京』公式サイトより

 木村拓哉主演の日曜劇場『グランメゾン東京』(TBS系)の評判がすこぶるいい。初回視聴率は12.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。以後、13.2%(第2話)、11.8%(第3話)、13.3%(第4話)と安定して10%台をキープし、昨今のドラマでは高視聴率といっても過言ではない。

 今回、木村拓哉が演じるのは、パリでレストランを開き、ミシュランから二つ星を獲得するほどの腕前を持つ天才シェフだ。だが、日仏首脳会談の昼食会において仏首脳がアレルギーを起こすきっかけとなる“ナッツ混入事件”の首謀者となってしまい、それを機に地位や名声や仲間すべてを失ってしまう。「日本人シェフの恥」と罵られ、かつての仲間たちからも見捨てられた天才シェフは、事件から3年後に日本に戻り、ミシュラン三つ星を獲得すべくレストランの立ち上げを始める――。

 このあらすじだけ聞くと、「またいつものキムタクドラマだろ?」と即断してしまいそうだが、いつもと何が違うのか? テレビ誌の記者は次のように語る。

「キムタクは『SMAP×SMAP』の『ビストロSMAP』コーナーでさまざまな料理を作ってきたため、腕は相当なもの。今まで何度もシェフを主人公にした企画は持ち上がったそうですが、キムタクはこれらを断ってきたといいます。しかし、今はビストロSMAPもなければSMAPすら存在しない。なので、満を持してシェフ役に挑んでいる形となっており、いつもの連ドラ以上に気合が入っているのではないでしょうか。

 実際にドラマを見ると、やはりキムタクはシェフがよく似合う。今まで、ピアニスト、運び屋、美容師、検事、パイロット、アイスホッケー選手、脳科学者、医師、社長、ボディガード、総理大臣など、四半世紀にわたってさまざまな職業ドラマに主演してきたキムタクですが、キャラクターへの憑依度は今作が群を抜いています。よく『キムタクは何をやってもキムタク』といわれますが、今回に限っていえば、このような天才シェフ役を1話めからしっかり仕上げられる役者は彼以外にいないのではないかとさえ思わされてしまいます。

 人気俳優ひしめくジャニーズ事務所においても、彼を追い抜ける役者はいまだ出てきていない。四半世紀も俳優として独走状態なのは、ギネス級にすごいことです。『キムタクは何をやってもキムタク』という現象は、裏を返せば偉業でもあるんですよ」

気になる鈴木京香との恋愛模様

 そんな人気俳優もすでに47歳。もはやラブストーリーの主演を張れるような年齢ではないが、本作では、ともにレストランを立ち上げるオーナーシェフ役の鈴木京香との恋模様も予感させる展開になっている。あるネットメディアのライターはこう語る。

「鈴木さんは実年齢が51歳で、木村さんと同じく王道のラブストーリーを紡ぐには年を取りすぎていますが、逆にいうとここまで美しい中年女性もそうそういない。人生を賭けてキムタクとレストランを立ち上げ、ときに衝突しながらもミシュランの三つ星を目指すという設定には、恋愛要素がどうしても必要となってきます。じゃないとドラマは持たない。ドロドロした恋愛物語にはなりようがないですが、物語のスパイスとして、2人の恋の行方は今後もカギになっていくと思いますね。

 そもそも、47歳のキムタクの相手役として年上の美人女優を据えたのは“技あり”だといえます。ふたりが『おじさん!』『おばさん!』と言い争っている関係性も、かつての『ロンバケ』(『ロングバケーション』、1996年)を彷彿とさせるようなラブコメ感を覚えますし、今後、沢村一樹さんとの三角関係も含め、中年男女のしつこくない恋物語をしっかり描いてくれるのではないでしょうか。もし本作の恋愛テイストが成功すれば、次はもっと大人の恋愛ドラマに挑むことも考えられる。今後のキムタクドラマの方向性を決定づける作品になると思いますね」

さながら『七人の侍』

 また、本作はTBSの金看板である超高視聴率ドラマ『半沢直樹』(2013年)を生んだ「日曜劇場」枠のノウハウをこれでもかと投入し、このキムタクドラマをよりいっそう骨太な作品へと昇華させている。テレビ業界に詳しいある週刊誌の編集者は次のように語る。

「やはり『半沢直樹』の大成功以降、日曜劇場枠は勧善懲悪のストーリーテリングが本当にうまくなりましたよね。今回、落ち目になったキムタクがかつての仲間を引き入れていくさまは黒澤明の『七人の侍』のようでもあり、相当クラシックな設定を現代版に置き換えているのがお見事。最終回で視聴率20%超えも決して夢ではないのでは。

 脚本家の黒岩勉さんは、『謎解きはディナーのあとで』(フジテレビ系)などを手がけたミステリードラマの名手。“ナッツ事件”も、実は誰かが意図的に混入させていた――といった真相が明かされる気配も感じます。

 演出は『アンナチュラル』(TBS系)などを手がけた塚原あゆ子さん。女性の心の機微を描くのがうまいだけでなく、職業もののディティールをビジュアル化するのも抜群にうまい。今回はフレンチ料理を独特の映像美で表現し、観てるだけでお腹が鳴りそうなほど圧倒的な絵作りだと、業界内でも相当注目を集めています」

 平成に放送された連続ドラマの「全話世帯平均視聴率ベスト10」の上位5位までを独占したという木村拓哉。果たして、令和の時代を迎えてもこの神話は引き継がれるのか? 最終回までお腹を鳴らしながら楽しみたい。

(文=藤原三星)

藤原三星(ふじわら・さんせい)
ドラマ評論家・コメンテーター・脚本家・コピーライターなど、エンタメ業界に潜伏すること15年。独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を中心に量産中。<twitter:@samsungfujiwara