ラーメン「一風堂」が「脱・とんこつ」に力を入れるわけ

とんこつラーメンが人気の「一風堂」を展開する、力の源ホールディングス(HD)が、とんこつスープではない、あるラーメンの開発に力を入れています。そのスープは、鶏ガラをメインにした鶏白湯スープです。

一風堂が「脱・とんこつ」に力を入れるのは、2025年に600店舗体制を目標とする出店戦略とも関連があるようです。11月13日に都内で開かれた決算説明会で、同社の河原成美社長を直撃しました。


河原社長「ラーメンは世界食」

「味噌、魚介、とんこつといった味のあるラーメンはメディアそのもの。どんぶりの中に情報が詰まっている。その楽しさから、世界食になろうとしている。世界に発信してくために、物語づくりをしっかりしていかなければならない」

2019年4~9月期の決算説明会で、河原社長は一風堂の海外展開について、力強くこう語りました。国内の一風堂は「白丸元味」「赤丸新味」といったとんこつラーメンで知られますが、海外でどのようなメニューを出しているのでしょうか。

海外では主に「IPPUDO」の店名でとんこつラーメンを提供しているほかに、スピンオフブランドとしてフードコート業態の「KURO-OBI(黒帯)」をアメリカやシンガポールで展開。とんこつ不使用の鶏白湯スープのラーメンが特徴で、テイクアウトしてオフィスや公園で食べられるように、紙のカップに入れて提供されます。

シンガポールの店舗では、どんぶりに入れて提供(写真:力の源HD提供)

また、フランスではベジタリアンの人が食べられる独自のラーメンを販売。インドネシアでは、ムスリム(イスラム教徒)を中心とした豚を食べられない人向けに「ノンポーク」のラーメンを提供するなど、世界各地で異なるニーズへの対応を進めています。

海外展開に力を入れる経営的理由

力の源HDの展開する海外店舗数は、9月末時点で120店に上ります。アジア圏はシンガポール、タイ、中国・香港などに、欧米圏はイギリスやフランス、アメリカに出店。今年10月にはニュージーランドに進出し、世界15ヵ国・地域へと拡大しています。

国内の店舗数は「一風堂」やフードコート業態「RAMEN EXPRESS」などを含めたセグメントで148店舗。国内と海外の店舗の割合に、あまり差がなくなってきています。

「黒帯 KURO-OBI」NY 570 Lex店(写真:力の源HD提供)

2019年4~9月期の連結売上高は147億円(前年同期比13%増)、営業利益は4億4900万円(同14%増)。売上高構成比を見ると、全体の57.2%が国内店舗、32.3%を海外店舗が占めています。

同社が2025年の目標店舗数として掲げるのは、海外含め600店。IR担当者によると、国内はショッピングモール内に入るRAMEN EXPRESSを中心に200~250店まで拡大させる一方、海外は300店強まで店舗数を増やしたい考えです。

そうした中で今後のカギとなるのが、人口が2.6億人を超えるインドネシアです。「非常に大きく重要な市場」(IR担当者)である同国は、約9割がイスラム教徒。ノンポークのラーメンを提供し、いずれは「ハラール認証」の取得も視野に入れています。

海外ならではの課題をどう克服?

ただし、海外展開が順風満帆かというと、必ずしもそうとは言い切れません。たとえば、アメリカでは西海岸での出店計画に狂いが生じています。原因の1つは、西海岸へ出店するにあたってクリアしなければならない「環境基準」の存在です。

西海岸の州では、寸胴鍋でスープを炊く時に出る熱を排気するダクトや、油を廃棄する設備などに、厳しい基準が求められています。さらに、同じ州でも保健所の管轄が違うと、出してくる結論が変わるといった問題もあるといいます。

また、各国・地域のメニューの開発は各店舗の責任者の裁量に任せている部分もありますが、そうなってくると、本部として一風堂にふさわしいラーメンの品質を維持することが重要になってきます。

そこで10月には、海外拠点のすべてのマネージャーを東京に集め、「グローバル・リーダーシップカンファレンス」という3日間の研修を実施。国内のラーメンの名店を食べ歩いて「日本流のおもてなし」を体験したり、グループワークで課題を議論。限られた時間での新メニュー開発など、2020年に向けてやるべきこと確認しました。

各国のニーズにあわせて、とんこつラーメン以外のメニューの提供に力を入れる力の源HD。海外店舗で開発された新メニューが日本に逆輸入される日も、そう遠くないかもしれません。

© 株式会社マネーフォワード