『グランメゾン東京』絶好調の裏に潜む死角…あえて“キムタクのドラマ”踏襲の功罪

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「日曜劇場『グランメゾン東京』|TBSテレビ」より
「日曜劇場『グランメゾン東京』|TBSテレビ」より

 料理はどれも美しく、いかにもおいしそう。第1話のパリロケを筆頭に、映像は終始ビビッドで鮮やか。俳優の顔ぶれも豪華で、それぞれの演技は安定している。

 視聴率もネット上の評判も絶好調の『グランメゾン東京』(TBS系)。「型破りなシェフが三ツ星レストランを目指す」というオーソドックスな物語であるにもかかわらず、なぜこれほど好意的に受け入れられたのだろうか?

 その理由を掘り下げていくと、いくつかの死角も見えてくる。平成のドラマ史を牽引した木村拓哉と、TBS伝統のドラマ枠『日曜劇場』。両者が持つ存在感の大きさが成否を左右しそうなのだ。ここでは『グランメゾン東京』の長所と短所、両面を掘り下げていく。

先の展開を予想できる『日曜劇場』の魅力

 好意的な声の多くを占めているのは、「尾花夏樹(木村拓哉)、早見倫子(鈴木京香)、京野陸太郎(沢村一樹)、相沢瓶人(及川光博)らが力を合わせて店を立ち上げ、メニューをつくり上げる」というチームワークの妙。

 尾花が倫子と出会い、京野、相沢、松井萌絵(吉谷彩子)と、1人ずつ同志を増やし、さらに「伝説の食材ハンター」も仲間に加えて、悪事を繰り返すライバル店「gaku」に勝って三ツ星の称号を得る……。まるで、アニメやゲームのようなプロットであり、これを「浅い」「ベタ」と感じる人は楽しめないのだが、わかりやすさを最優先に考える現在の視聴者には合うのだろう。

 大半の視聴者は、「彼は仲間入りするはず」「まだこのコンテストでは勝てないだろう」「プレオープンはピンチがあっても成功しそう」「最後はきっとこうなる」という先の展開を予想できていて、それが実現していく様子を楽しむ作品なのだ。「ハラハラ」「ドキドキ」よりも「ホッ」「スカッ」とする作風は『日曜劇場』の十八番であり、同枠の固定ファンに向けたものにも見える。

 もうひとつ、好意的な声につながっているのは“キムタク”らしさを前面に押し出したプロデュース。「ずば抜けた才能と技術を持つが性格に難あり」の主人公、振り回されながらも徐々に心を通わせていく周囲の人々、誰が見ても悪そうなけれんみたっぷりの敵……。

 これまで、『プライド』『エンジン』『月の恋人~Moon Lovers~』(いずれもフジテレビ系)、『MR.BRAIN』『A LIFE~愛しき人~』(いずれもTBS系)、『BG~身辺警護人』(テレビ朝日系)などで見せてきた“スーパースター・キムタクのドラマ”を踏襲したことが、往年のファンを喜ばせている。大半の俳優やスタッフは「新たなものを見せたい」と思うものだが、「自我を抑えてファンサービスに徹する」という意味で、当作の木村とスタッフは本当のプロフェッショナルなのかもしれない。

 ただ今後、ライバル店との対決ムードや三ツ星をめぐる戦いが過熱していくなか、“スーパースター・キムタクのドラマ”に偏りすぎると、ファン以外の視聴者が離れるリスクは高まるだろう。

 そもそも、レストランを舞台にした作品はチームワークを最優先に描くケースが多いのだが、当作は尾花のカリスマ性をベースにした物語。第3話でも、「相沢の娘・アメリー(マノン・ディー)にこっそりキャラ弁をつくってあげる」というシーンで優しさを印象づけるなど、尾花だけを特別視した脚本・演出が目立つが、これ以上「やりすぎない」というバランス感覚が求められる。

アラフィフのベテラン俳優ばかりの理由

 木村拓哉(47歳)の脇を固めるのは、鈴木京香(51歳)、沢村一樹(52歳)、及川光博(50歳)らアラフィフのベテラン勢。レストランのメンバーには、玉森裕太(29歳)、吉谷彩子(28歳)、寛一郎(23歳)もいるが、あくまで“3番手グループ”の助演にすぎない。

 ベテラン俳優たちの巧さと安定感は「さすが」と思わせる半面、「『現在の生活を捨ててイチから店を立ち上げて三ツ星獲るぞ』と決意するには、あまりに熟年すぎないか?」「あれだけの職人をそろえると人件費が払えないのでは?」……などとツッコミを入れたくなる年齢なのだ。さらに、敵役の尾上菊之助(42歳)と手塚とおる(57歳)や、春風亭昇太(59歳)や石丸幹二(54歳)ら各回のゲストも含めて、かなり年齢層が高い。

 中高年層キャストばかりの理由は、「高収入でなければなかなか食べられない高級店が舞台の物語」だから。消費税の軽減税率が話題になる世の中で、「ミシュラン」「三ツ星」を連呼するブルジョアな世界観にフィットできるのはベテラン俳優しかいないのだろう。

 もちろん作り手側も親近感を与える工夫を凝らしていて、早見倫子の古びた自宅を事務所として使い、台所で和食を味わうシーンを入れていた。「トップシェフに視聴者と同じものを食べさせる」ことで身近な印象を与えているのだ。

 とはいえ、第3話では「ライバル店・gakuが食材買い占めと審査員買収の不正を行う」「恋のもつれからロッカーに画びょうを仕込む」。第4話でも、「gakuがスパイを送り込んでプレオープンを妨害する」などの昭和的な嫌がらせのシーンが相次いだ。

 このあたりは、2013年の『半沢直樹』以降、勧善懲悪を貫くドラマ枠『日曜劇場』のテイストであり、やはり中高年層をメインターゲットにした視聴率の面で手堅い作品と言える。こうした昭和的な嫌がらせや過剰な勧善懲悪もまた、「やりすぎない」というバランス感覚が求められるところではないか。

誰もが思い出す「BISTRO SMAP」の姿

 いくつかの不安点こそあるが、それでも特筆すべきは、冒頭に書いた映像の美しさ。とりわけ料理を華やかに見せる演出は素晴らしく、随所に工夫や努力を感じさせる。

 たとえば、料理をおいしそうに見せるのはもちろんのこと、こだわりが感じられたのは、食べる人に対する演出。第2話では汐瀬智哉(春風亭昇太)が「おいしいです。こんなもん食べたことない」「うまいなあ……うまい」、第3話では峰岸剛志(石丸幹二)が「バカうめえなあ、こりゃあ。ハッハッハッ」と食べる人の演技が料理をおいしそうに見せている。このような高級レストランの物語を「遠い世界」と思わせない工夫を随所に施しているからこそ、ここまでの結果につながっているのだろう。

 ネット上には、かつての主演作とは異なり、同世代の仲間たちに助けられながら一つひとつ成果を重ねて成長していく尾花の姿を、木村拓哉に重ねたがる声も多い。

 つまり、尾花は木村拓哉で、倫子、京野、相沢はSMAPのメンバー……と、かつてのSMAPに思いを馳せてしまうのだろう。頭の中には『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)の「BISTRO SMAP」が浮かんでいるはずだ。

 SMAPが絶好調のとき、常に木村拓哉のドラマは社会的な関心を得ていた。そんな木村拓哉にとってのよき時代を彷彿とさせる作品だからこそ、筋書きとしてはベタながらも支持を集めているのではないか。

(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)

●木村隆志(きむら・たかし)
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』(フジテレビ系)、『TBSレビュー』(TBS系)などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。