『決算!忠臣蔵』 松竹「新」時代劇の集大成

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 冬の風物詩・忠臣蔵を、何と討ち入りに掛かった“予算”を切り口に描いた時代劇だ。だから、大石内蔵助役の堤真一と赤穂藩の勘定方・矢頭長助を演じる岡村隆史がW主演を務めている。本作を説明する上でキーワードとなるのは2点。1点は、近年の松竹時代劇の系譜。もう1点は、中村義洋監督である。

 松竹は近年、時代劇に力を入れている。きっかけは、2010年の『武士の家計簿』のヒットだろう。松竹ホームドラマの伝統が息づく“生活者”の目線に立った人情時代劇だった。一方で松竹は、14年にコメディー要素のある軽妙で痛快な時代劇『超高速!参勤交代』もヒットさせる。本作は、その二つの流れが合流した近年の松竹時代劇の集大成といえる。

 その松竹で『白ゆき姫殺人事件』『残穢 -住んではいけない部屋-』を手掛けた中村監督が、この流れに参加したのは、16年の『殿、利息でござる!』だった。既に生活者の目線と軽妙さを併せ持っていたこの作品を、誰もが知る忠臣蔵を使ってさらに発展させたのが本作である。彼が時代劇を撮るのは、『殿、利息~』『忍びの国』に続き今回で3作連続となり、もはやこのジャンルを完全に自家薬籠中の物としている。原作ものを得意とする職人タイプの監督だけに、国際舞台での認知度は高くないが、日本が誇る時代劇というジャンルをきっかけに、ぜひ世界へと羽ばたいてほしい逸材だ。★★★★☆(外山真也)

監督・脚本:中村義洋

原作:山本博文

出演:堤真一、岡村隆史

11月22日(金)から全国公開

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