法王来崎を待つ<上> 核保有国を動かして 県被爆者手帳友の会会長 朝長万左男さん

「バチカンは核廃絶の一翼を担う存在」と話す朝長さん=長崎市内の自宅

 ローマ法王フランシスコが24日、長崎市を訪問する。法王としては38年ぶりの再訪だ。爆心地公園から平和のメッセージを発信するほか、日本二十六聖人殉教地で祈りをささげ、県営ビッグNスタジアムではミサを執り行う。法王の「発信力」に期待を寄せ、来崎を待つ人々に話を聞いた。
 世界13億人のカトリック信者の頂点に立つローマ法王。「精神世界のリーダーといえる。どんな国もその言葉に耳を傾ける」。長崎の被爆者5団体の一つ、県被爆者手帳友の会会長で、日赤長崎原爆病院名誉院長の朝長万左男さん(76)は法王の発信力を認める。
 東西冷戦期の1981年2月、広島市の平和記念公園。ヨハネ・パウロ2世は「戦争は人間の仕業」「過去を振り返ることは将来への責任を担うこと」と戦争や核兵器を批判する強烈なメッセージを発信した。仏教徒という朝長さんも「カトリックのことはよく知らなかったが、思い切ったことを言ったな」と驚き、歓迎した。
 45年8月の広島と長崎への原爆投下以降、歴代法王は核兵器を批判してきた。バチカン(ローマ法王庁)は2017年に採択された核兵器禁止条約を最初に批准した国でもあり、朝長さんは「核廃絶の一翼を担う存在」と認識している。
 ただ、「核保有国が実際どの程度動いてきたかといえば、そこはなかなか」とも言う。今も9カ国が1万4千発弱の核弾頭を保有し、米国とロシアの中距離核戦力(INF)廃棄条約は今年8月に失効。「核軍拡に戻り始めている」と懸念する。
 5年に一度の核拡散防止条約(NPT)再検討会議が来年春に開かれるが、核保有国と非保有国の溝は深い。そんな中、フランシスコは長崎からどんなメッセージを発信するのか。13年の就任以降、原爆投下を「科学技術のゆがんだ使い方」などと強く非難し、原爆投下後の長崎で撮影されたとされる写真「焼き場に立つ少年」も世界にアピールしてきた。
 朝長さんは「核廃絶に並々ならぬ思いがあるはずだ。核保有国には核廃絶の責任があると強く訴え、核保有国を動かしてほしい」と切に願っている。
 高齢化に伴い被爆者運動は先細りしている。それでも「70代や健康な人はまだおり、あと5年、10年は頑張れる。そして核廃絶を実際に進めるのは次世代だ」と前を向き、被爆地を鼓舞する法王の言葉にも期待する。

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