アルゼンチンのSTC2000、天王山の第10戦もルノー・フルーエンスGTが完勝

 南米大陸アルゼンチンを代表する人気ツーリングカー選手権、スーパーTC2000(STC2000)シリーズ最大の1戦、第10戦ブエノスアイレス200kmが11月9~10日に開催され、2019年シーズンを席巻するルノースポール勢が躍動。選手権首位を守ってきたリオネル・ペーニャと、耐久コドライバーに起用された元トヨタのダミアン・フィネンチ組ルノー・フルーエンスGTが勝利を挙げている。

 2019年から新たにフランス・オレカ製の2リッター直列4気筒直噴ターボを採用したSTC2000シリーズは、今季序盤からルノースポール・アルゼンティーナとTOYOTA GAZOO Racing YPF INFINIAが2強を形成。フルーエンスGTとカローラによる一騎打ちの状況が続いてきた。

 その流れはこのシリーズ最大の祭典“ブエノスアイレス200km”でも維持され、プラクティスからルノー勢がタイムシートの上位を独占。シーズン中盤に巻き返しをみせてきたトヨタ勢ですら、完全に彼らの後塵を拝す展開となった。

 迎えた予選は、長距離の決勝に向けこの1戦限りで招聘されたゲスト参加のBドライバー勢がまず20分のセッションを戦い、続いてレギュラー勢が出走する同じく20分の計時予選を実施。その合算タイムで決勝グリッドを決める方式が採用された。

 ここでポールポジションを奪ったのは、現在シリーズ連覇中の王者ファクンド・アルドゥソとガブリエル・ポンス・デ・レオン組で、2017年にはトヨタにも所属したレオンもトップタイムを記録し、ディフェンディングチャンピオンの最前列スタートを完璧にアシストしてみせた。

 フロントロウ2番手にもペーニャ/フィネンチ組、セカンドロウ3番手にもマティアス・ミラ/フランコ・ヴィヴィアン組がつけるなど、予選でもルノー・フルーエンスGTがトップ3を占拠する結果に。

 続く4番手にトヨタ勢最上位のジュリアン・サンテロ/エミリアーノ・スパタロ組が続き、タイトルを争うマティアス・ロッシ(トヨタ・カローラ)と、TCRヨーロッパ・シリーズのフロントランナーでもあるサンティアゴ・ウルティアのペアは8番グリッドに。そしてWTCR世界ツーリングカー・カップ参戦中のネストール・ジロラミと、ホセ-アンヘル・ロッソのホンダ・シビックSTC2000は13番手からのスタートとなった。

 明けた日曜の200km決勝は各ドライバー25ラップの最低義務周回が設けられ、35ラップを超えて走行することも制限されるなど、ピットタイミングと各ドライバーの担当周回数が勝敗のカギとなった。

予選で1-2-3を決めたルノー・フルーエンスGTだったが、スタートでは思わぬ波乱も
トヨタ勢予選最上位につけたジュリアン・サンテロ/エミリアーノ・スパタロ組は、そのポジションによりエースカーを好アシスト
自らのスティントで好走を披露した元王者ネストール・ジロラミだが、トップ10入りはならず

 しかしスタートではその戦略を早々に吹き飛ばすようなアクシデントが発生し、ポールシッターのレオンがまさかのエンジンストール。周囲や後続ドライバーがぎりぎりのところでかわしていき大惨事には至らなかったものの、これでグリッド後方にまで下がると、代わって2番手にいたポイントリーダーのペーニャがレースを牽引していく。

 車列中団では、トヨタのファクトリーマシンをドライブするウルティアが、TCR規定マシンとは異なる流儀に戸惑ったか、序盤3周で8番手スタートから12番手にまでポジションを落としてしまう。

 対照的にこのシリーズで2014-15年に連覇を達成し、プジョーとともに王者獲得経験を持つジロラミは、2019年からワークス参戦を開始したホンダ・シビックSTC2000をモノにし、序盤からトップ10圏内に浮上してくる。

 10周を経過したところで首位のペーニャは2番手のミラに約4秒のマージンを築く盤石のレース運びを見せ、ストールで後退したレオンも12周目にはウルティアとの接触バトルを制して12番手にまでポジションを回復してくるなど、決勝レースでもフルーエンスGTの優位性が遺憾なく発揮されることに。

 ミニマムの25周でピットへと向かった選手権リーダーのペーニャは、フロント2輪交換の奇策でフィネンチへとスイッチ。すると元フォードのプライベーターチームで活躍し、昨季はトヨタでもドライブした実力派は、後続に脅かされることなくレースを支配していく。

 200kmのレース距離より先に最大制限時間の80分に到達したことで、フィネンチが57ラップでトップチェッカー。ペーニャにとっては王座に近づく勝利となり、2位にもミラ/ヴィヴィアン組が入り、ルノー・フルーエンスGTがワン・ツー・フィニッシュを達成。

 そして3位表彰台争いはポイントスタンディングにも大きく影響を及ぼす展開となり、終盤までその位置を守ってきた2016年王者のアグスティン・カナピノ/フランコ・ジロラミ組のシボレーYPFクルーズが突如エンジントラブルに見舞われ、誤作動によりスピードリミッターが固定されリタイアに。

 代わって3番手にサンテロ/スパタロ組のカローラが浮上するも、すぐ背後まで追い上げていたエースのロッシ(ウルティア組)にポジションを譲りフィニッシュラインへ。これで3位表彰台に立ったロッシは宿敵ペーニャを5ポイント逆転し、再びポイントリーダーの座に返り咲いた。

 終盤戦に突入したSTC2000の2019年シーズンも残すは2戦。第11戦は11月23〜24日の週末に、コルドバのリオ・クアルトで開催される。

ピットイン時にフロントのロワグリルに詰まった雑草の除去で遅れたアグスティン・カナピノ/フランコ・ジロラミ組。これもエンジントラブルの遠因か
トヨタのマティアス・ロッシは選手権首位を奪還。王者ファクンド・アルドゥソ組は5位まで挽回してみせた
2019年シーズンを席巻するルノースポール・アルゼンティーナ。終盤2戦も、トヨタとの一騎打ちに

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