桜を見る会夕食会、こんなに多くの疑問

1億7200万円の首相夫妻主催晩さん会もニューオータニ

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竹田昌弘

共同通信編集委員(憲法・司法・事件)

竹田昌弘

共同通信編集委員(憲法・司法・事件)

 1961年富山県生まれ。毎日新聞から共同通信の記者に転じ、宇都宮支局、社会部、大阪社会部などに在籍。社会部次長、司法キャップなどを経て現職。共同通信社の「事件報道のガイドライン」や事業継続計画(BCP)作成の事務局も担当した。

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 安倍晋三首相主催の「桜を見る会」前日、東京都千代田区のホテルニューオータニ宴会場で、地元の支援者らが多数参加して開かれた夕食会について、首相は15日と18日に官邸で記者団の「ぶら下がり取材」に応じた。しかし、首相の説明は十分とはいえず、疑問や不明な点が多い。ニューオータニも「個別の案件」として説明しようとせず、告発を受けた捜査機関による事実の解明が待たれる。(共同通信編集委員=竹田昌弘)

ホテルニューオータニ外観(空撮)=2008年3月21日撮影、東京都千代田区

「費用は参加者負担、事務所や後援会に収支ない」と首相

  首相が「(自らの)事務所から詳細な報告を受けた」などとして、説明した内容の要旨は次の通り。①~④が15日、⑤~⑥は18日。 

 ①夕食会を含め、旅費、宿泊費など全ての費用は参加者の自己負担で支払われている。安倍事務所や後援会としての収入、支出は一切ないことを確認した。 

 ②旅費、宿泊費は各参加者が旅行代理店に支払い、夕食会の費用は会場の入り口受付で、安倍事務所の職員が1人5千円を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手渡した。受け付け終了後、集金した全ての現金をホテル側に渡すという形で、参加者からホテル側への支払いがなされた。 

 ③夕食会の価格が安過ぎるのではないかとの指摘もあるが、大多数がホテルの宿泊者という事情を踏まえ、ホテル側が設定した価格との報告を受けている。毎年使っているとか、規模であるとか、宿泊をしているかをホテル側が総合的に勘案して決めることだと思う。 

 ④政治資金規正法では、収支が発生して初めて(政治資金収支報告書に)記載義務が生じるが、収支は発生しておらず、同法違反には全く当たらない。 

 ⑤(夕食会の費用は)参加者が直接支払っている。事務所にも後援会にも入金はない。(事務所は)領収書の発行を行っていない。ホテル側が発行し、事務所の者が渡している。(夕食会の総額を示した明細書のようなものは)事務所に確認したが、そうしたものはない。 

 ⑥夕食会の出席者は約800人で、その大半が桜を見る会に出席した。

記者に囲まれ「桜を見る会」と前日の夕食会を巡る質問に答える安倍首相=15日夕、首相官邸

 後援会主催、ホテル「一般的には、領収書は入金と同時」

 まず前提として、夕食会は安倍晋三事務所名で今年2月に出された「『桜を見る会』のご案内」には「あべ晋三後援会主催」と書かれ、ニューオータニの広報担当者は「一般的には、入金と同時に領収書を渡す」と話している。 ②の説明のように、安倍事務所の職員が各参加者から5千円を受け取り、ニューオータニの領収書を渡すためには、ニューオータニから事前に領収書をもらっていなければならない。領収書は入金と同時と言うのであれば、後援会は夕食会の前に費用を立て替え払いしたことになり、①や⑤の説明と矛盾する。

 ①と②の説明では、夕食会に参加した首相本人や昭恵夫人、安倍事務所職員らの費用はどうしたのか、明らかではない。後援会が参加者や首相らの費用を立て替え払いしたり、支払っていたりしていれば、政治資金収支報告書に記載しなければならないが、首相は①と⑤で後援会として収入、入金、支出は一切ないとして、④で政治資金規正法違反はないと主張している。 

安倍晋三事務所名で今年出された「『桜を見る会』のご案内」。夕食会については「あべ晋三後援会主催」と書かれている。

 ②と⑥によると、夕食会の総費用は5千円×約800人で約400万円。印紙税法により、主催者の後援会がまとめて支払うと、ニューオータニは領収書に1千円の印紙を貼らなければならない。②の説明のように、参加者1人ずつに5千円の領収書を渡した場合、印紙を貼る必要はない。パーティーの領収書を夕食会のような形で参加者に渡し、印紙税を免れることがよくあるのかどうかについて、ニューオータニの広報担当者は「一概には言えない」とコメントした。 

 ニューオータニの宴会場で、立食形式のパーティーを催す場合、ホームページによると、1人1万1千円(宴会場使用料、税、サービス料など込み)からなので、夕食会は半額以下に値引きしたことになる。首相が言う③のような事情によるものかどうか、ニューオータニの広報担当者は「個別の案件なので答えられない」としている。

刑事法学者の園田寿・甲南大教授

捜査しなければ、また事実うやむやに  

 刑事法学者の園田寿・甲南大教授によると、安倍事務所や後援会が夕食会の費用を立て替え払いしたり、費用の一部を負担したりしていれば、政治資金規正法違反(不記載)や公選法違反(有権者への寄付行為)に当たる。園田教授はさらに「即位の礼へ参列するため来日した外国の首脳らを招いた、首相夫妻主催の晩さん会が10月23日、夕食会の会場と同じニューオータニの『鶴の間』で開かれている。費用は1億7200万円(予算)。不当な値引きの背景には、こうした国発注の行事もあるのではないか」と指摘している。値引きと晩さん会の関係について、ニューオータニの広報担当者は「異なる利用客の個別の案件なので、答えられない」としている。 

 「桜を見る会」と夕食会を巡り、東京都内の男性は公選法違反などに当たるとして、既に首相に対する告発状を東京地検に郵送し、市民団体「税金私物化を許さない市民の会」はやはり公選法違反などの疑いで、東京地検に首相を告発すると記者会見して明らかにしている。 

首相主催の「桜を見る会」を巡る問題で、記者会見する市民団体「税金私物化を許さない市民の会」の田中正道共同代表(中央)ら=18日午後、東京都内

 端緒を得た東京地検特捜部が今度こそ捜査に乗り出さなければ、甘利明元経済再生担当相の金銭授受や下村博文元文部科学相のパーティー券代金不記載、森友学園への国有地売却と決裁文書改ざん、加計学園の獣医学部新設巡る問題などのように、またもや事実がうやむやにされてしまう。

 なおニューオータニを巡っては、外務省の課長補佐(懲戒免職)が1995年にホテルニューオータニ大阪で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)などのホテル代を外務省に水増し請求し、約4億2200万円をだまし取った事件で、うち約1億1千万円の詐欺には、ニューオータニの課長(懲戒解雇)が関与し、有罪判決を受けている。詐取した金は「預かり金」として、ニューオータニの口座にプールされ、課長が管理していたことも当時の警視庁の捜査で明らかになった。