<大ヒット盤> 椎名林檎『ニュートンの林檎~初めてのベスト盤~』 超人並みの進化の歴史

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椎名林檎『ニュートンの林檎~初めてのベスト盤~』

 デビュー22年目にしてキャリア初となる公式ベスト。新曲以外は、およそ発表順に収録されており、彼女の超人並みの進化の歴史を追うことができる。

 disc1は、デビュー曲『幸福論』から、自身のバンド、東京事変を結成する03年以前の代表曲を収録。『ここでキスして。』や『本能』など若い女性の衝動を、ギターロックに乗せて煽るような歌声が印象的だ。

 これがdisc2になると一変する。サウンドは、管弦楽をふんだんに取り入れたゴージャスなものとなり、歌詞は(特に、09年の『ありあまる富』以降)人間の業を説くような含蓄のある言葉が増え、歌唱面では『カーネーション』での繊細さも『NIPPON』での大胆さも大きく振り切っている。

 新曲の宇多田ヒカルとのデュエット『浪漫と算盤』は、まさに芸術性と商業性を絶妙なバランスで実現できたことへの感謝を綴ったようなミディアム調の楽曲。ロンドン・フィルと打ち込みの新旧の音が混ざり合うのも、このテーマで宇多田と共演するのもすべて織り込み済みだろう。もう一方の新曲『公然の秘密』は、愛しい標的を冷静に見つめつつ、内心独り占めしたいという高揚感を、古き良きアクション映画のテーマ曲風にスリリングに仕上げたアップテンポの楽曲。どちらもJ-POPの可能性を大きく広げた意欲作だ。

 本作を聴けば、何かに徹底的にこだわってしまう自分にも自信が持てるはず。

(ユニバーサル・2CD 3300円+税)=臼井孝