アウディ 新型A1スポーツバック 海外試乗|8年目のフルモデルチェンジで総合力を上げた最小コンパクト

アウディ 新型A1(欧州仕様) ドイツ海外試乗

アウディ 新型A1スポーツバックは理想的なモデルチェンジを果たした

最もコンパクトな末っ子モデル

アウディ A1スポーツバックは、同社のラインナップの中でも最もコンパクトなモデルだ。ちなみにアウディにはA1からA8までがあるのはご存知かしら(SUV系の車名はQ2など“Q”から始まりQ8まである)。

で、A1スポーツバックのひとつ上には欠番のA2を飛び越して、ボディサイズもやや大きめなA3というモデルのハッチバック(A3スポーツバック)とセダンがあるのだが、新型に触れているうちに思ったのは、新型は先代に比べパッケージングが向上しており、実用面でA3スポーツバックと迷いながらA1スポーツバックを選ぶ方も増えそう、ということ。

しかしその一方で、デザインの洗練ぶりや的を得た装備の進化・充実ぶりによって、「A1がいい!」と直感的に選ぶ方がいてもぜーんぜん不思議ではない。

つまり、アウディの底辺を支えるモデルとしては、とても理想的なモデルチェンジを果たしたという印象を受けたのだった。

↓ 日本での発売は2019年11月25日~

少さなサイズアップで大きなゆとり!

広々室内を演出する工夫はドアにあり

というわけで、新型A1スポーツバックです。ボディサイズは全長4040mm×全幅1740mm×全高1435mm。先代に対し、全長は55mm長くなり、ホイールベース(前後のタイヤの間の長さ)にいたっては95mmほど延びている。

その恩恵は、特に後席の前後方向のゆとりの拡大で実感ができた。加えて、車幅は先代とほぼ同数値なのに室内の左右方向も広く感じたのが気のせいかと思ったら、インテリアのドアまわりのデザインによってより空間を広く取る方法を採用しているという。

アウディ 新型A1スポーツバック 35 TFSI 2019年11月フルモデルチェンジ
アウディ 新型A1スポーツバック 35 TFSI 2019年11月フルモデルチェンジ

さらに言えば、全高は約3センチ低くなったのに、ヘッドクリアランスはほぼ同等。シートは十分に重厚で、高さを少し調整してもいるようだ。

そしてトランク容量も270Lから335Lにアップ。ラゲッジのスクエアな空間は視覚的にも使いやすそう。さらに後席の背もたれを倒せばその容量も増す。ドイツでは2人分(大と小)のスーツケースをシートを倒すことなく難なく飲み込んでくれた。

車格が上がったかのような存在感を持つ外観に

「カッコカワイイ」のバランスが変化!?

アウディ 初代A1スポーツバック

A1スポーツバックのデザインは初代から“カッコカワイイ”系という印象があり、かつ初代である先代は見るからにコンパクトな姿をしていた。

が、新型は前述のように見た目の印象を大きく変えるほどボディのサイズアップはしていないのに、車格が一つ上がったかのようなサイズアップを錯覚させるほど存在感が増している。先代の「カッコ<カワイイ」から新型は「カッコ>カワイイ」にバランスがチェンジしていると言いたいくらい。

その印象は、フロントマスクの六角形のシングルフレームグリルとその両サイドに大きく開いたサイドエアインレットによって、ボディが低く構える姿勢が強調されていることによるものだろう。グリルの上に薄く刻まれたスリットもユニークだ。

アウディ 新型A1(欧州仕様) ドイツ海外試乗

ワイドな印象を持たせつつ、A1らしさは失わず

またヘッドライトは矢印が外向きに方向を示すようなデザインを採用し、それはリアのテールランプも同様。これらが前後で先代以上の幅広い印象を与えてくれているようだった。

アウディ 新型A1(欧州仕様) ドイツ海外試乗
アウディ 新型A1(欧州仕様) ドイツ海外試乗

ボディ全体のシルエットは新型でもA1らしさが感じられるのだが、特に後方のCピラーの厚みやテールゲートのガラス下のノッペリとした面の採用などは踏襲されている。そこでどこから見てもA1に違いはないけれど、新しいモデルらしさも存分に楽しめるのではないか。

さらに、カラーバリエーションもカラフルな色が増色されている。ドイツでショールームを見渡すと、ターボブルーという試乗車にも採用されていたブルー色が他のモデルにも採用されていて、トレンドになっているみたい。正直、奇抜だけどカッコイイ。こんなブルーを纏ったA1を選ぶ人が増えて”増殖”ならぬ”増色”したら、街中の風景も変わりそう。

アウディ 新型A1(欧州仕様) ドイツ海外試乗

インテリアにも品格を保つ工夫が

コンパクトながら上品さを維持

インテリアは操作系をややドライバーに向けてデザインされ、コクピット感を強めるスポーティな印象がある。

が、子供っぽくならないというか質感を維持しているのは、最新の高精彩なフル液晶ディスプレイをセンターパネルとメーターパネル(他モデルにも採用されているバーチャルコクピット)に採用し、先代以上に先進性を感じられるところだろう。加えて水平感や多角形のモチーフを適度に取り入れることで、クールな上品さが保たれている。

アウディ 新型A1(欧州仕様) ドイツ海外試乗
アウディ 新型A1(欧州仕様) ドイツ海外試乗

アウディの他モデルを知る方から見れば、例えばレザーを多用している上級モデルに比べれば樹脂パーツの採用率の高さは否めないが、アウディらしい品格をカジュアルかつ最もコンパクトなモデルにも上手く取り入れている点は、A1スポーツバックの一つの特徴であり見どころとも言えそう。

待望の運転支援機能を装備!

ところで、装備として追加されたもので「遂に!」と安堵したのが、ドライバーアシスト機能だ。

衝突軽減ブレーキや車線逸脱警報・防止機能、さらにアダプティブクルーズコントロールや危険を察知するとシートベルトを自動で巻き上げ乗員を傷害から守るシステムのほか、ハイビームアシストなどが装備される。

いよいよ試乗! この安定感と一体感が嬉しい

地元の人みたいにスイスイ走れるサイズ感

それではいよいよ、そんな新型A1スポーツバックのドライブフィールを。

まず、不慣れな土地でもこのサイズ感には安心感があり、地元の人のようにスイスイと走らせることのできる扱いやすさは魅力的だった。

今回のドイツ試乗では日本未導入の2L直噴ターボエンジン+7速Sトロニック(AT)を組み合わせたモデルだったが、エンジンサイズ(トルクやパワー)が大きくなるとやはり懐感の大きさや深さは排気量の大きなエンジンのほうが有利だ。

A1スポーツバックのボディサイズに対し、感覚的にはオーバースペックぶりを少し贅沢に、もしくはスポーツモデルのような感覚で街中から郊外の田園地帯を走らせることができた。

アウディ 新型A1(欧州仕様) ドイツ海外試乗

が、新型として注目すべきはホイールベースが拡がったことと、車幅は変わらないがフロントのトレッドは拡がっていること。

直進走行もコーナリングもドッシリとした安定感が増していると感じ、またコンパクトさが活きた相変わらずのコーナリングの応答性の良さや軽快感が、この安定感とともにドライブフィールの質を向上させている。運転席と四隅に置かれたタイヤが直ぐそばにある一体感は、A1ならではのものだ。

新開発1.5Lエンジンは期待大

アウディ 新型A1(欧州仕様) ドイツ海外試乗

日本には1.5L直噴ターボエンジン(150PS/250Nm)を搭載した35 TFSIが導入される。これは新開発のエンジンだ。

その印象はまた改めてご紹介したいのだけれど、そもそもすでに在る1Lターボエンジンを搭載したQ2の走りにもなんら不満を抱くことはないわけで、新開発の1.5Lターボエンジンを搭載したA1の走りにはむしろ「どんなドライブフィールを新たに生んでいるのか」という興味と期待を抱く。

総合力アップで、日本導入が楽しみな1台

A1とA3、結局どっち!?

アウディ A3 スポーツバック 1.4TFSI Sport[FF]<アウディA3スポーツバック vs ボルボV40どっちが買い!?>

フロントシートに比べリアシートは少しだけ乗り心地が硬く感じるかもしれないから、後席にもう少し広さと乗り心地などの快適性を求めるならA3スポーツバックがベター。でも日常のパーソナルユース+αを1台のモデルでと考えたら、実用面ではA1スポーツバックでも十分に満たしてくれるかもしれない。

冒頭で申したようにA3スポーツバックのパッケージングと比べて迷いながら、デザイン性や、車格を上げた走りや、十分な実用性を持つコンパクトなA1は、「これでいい」ではなく、「A1がいい」と思う方も増殖するのではないか。その際にはぜひ好きな色を選んで、無難さよりも個性も主張することをクルマ好きは願うばかり。

アウディ 新型A1(欧州仕様) ドイツ海外試乗

性能や装備にすごく特別な飛び道具を有するわけではないけれど、総合力で底上げ、車格アップを果たし、安心感と頼もしさは確実に増量。そんなA1スポーツバックなら、サイズ以上にカーライフも変わりそうなギャップが、毎日楽しみながら味わえるかもしれない。

[筆者:飯田 裕子]

アウディ 新型A1スポーツバックの主なスペック

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