「最長」の首相

 「電光」は稲光で「石火」は火打ち石の火のことらしい。動作が素早いさまを「電光石火」という。何事も電光石火の早業で済めばよいが、世の中なかなかそううまくはいかず、小欄も電光石火には程遠く…▲善しあしは別にして、電光石火をお手の物とする方もいる。日本のトップがそうだろう。5年前の今頃、「経済政策は道半ば。このまま進めるべきか審判を」といきなり衆院解散し、師走の決戦で圧勝した▲消費税率を引き上げた後、増収分の使い道を「教育の無償化」などに見直したい。そう語って、おととし9月にもいきなり衆院解散し、またも大勝した。その頃、増収分をどうするのかと世間が騒いでいたわけでもない▲野党の不意を突き、より多く勝てるタイミングで選挙を打つ。大義はその場その場で編み出す。電光石火の早業、いや、力業だろう。国政選挙で6連勝し、1強体制を築いて、安倍晋三首相の通算在職日数は史上最長になった▲近頃は不祥事の煙が立てば閣僚もさっさと辞めさせる「電光石火」もある。今は「桜を見る会」を巡り矢面に立たされるが、きょうの気分は晴れやかだろうか▲長期政権だから安定しているとは直ちにいえず、ほころびも目立つ。人口減少、少子高齢化、社会保障制度と難事ならば山とあり、早業では片が付かない。(徹)

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