オンブズながさき ある相談の経過 2対1指導 トラウマに

 民間の第三者機関「子どもの権利オンブズパーソンながさき」が活動の柱に据えるのは、家庭と学校における仲介と、それを受けた教育や行政機関への提言。ある相談について経過をたどった。

 ■互いに不信感

 生徒のA子さんは県内の中学に通い始めた頃、友人間のトラブルがあった。後日、担任と副担任による指導の際に言い分を伝えたが、「本当か」「相手と言っていることが違う」と聞き入れてもらえなかったと感じた。大人たちの「決めつけ」と傷つき、学校に通うのが難しくなった。
 家庭と学校の直接のやりとりでは問題や解決方法の認識の違いから互いに不信感が募り、当事者だけでは話が進まない状況に陥っていた。相談員は生徒と保護者との面談を重ねていた。学校に行けないことなどに苦しんだ生徒は「死にたい」と家族に漏らした。
 オンブズながさきが意見を求めた医師は、指導がトラウマ(心的外傷)となっており、生徒の苦しみの部分を丁寧に聞いてあげる必要があると助言。心の回復に向けて、市教委を通じて学校関係者や主治医、スクールソーシャルワーカーら関係者が話し合う場をつくった。そこで相談者側が望んだ謝罪の場を設ける方針が決まり、対立関係が変化した。

 ■解決システム

 このケースを基に「どうして問題が起こったのか」を検討した。そこで見えた課題は指導に関する認識。学校側は通例として、生徒指導を適切に行っているという透明性を確保するために教員と生徒を「2対1」のように複数で対応する。話し合いの場では、複数の教員の対応が児童生徒にとって威圧的に感じられ、ストレスの原因にもなり得ると議論した。
 オンブズながさきはこうした経過を踏まえ、両者の言い分を聞くという指導や聞き取りの在り方、特に入学して間もない児童生徒には大きな影響を及ぼす可能性があることを市教委に伝えた。この市教委は、校長会などを通じて今回の出来事を説明し、現場の教員が考える機会をつくったという。
 古豊慶彦代表は「県内に公的な第三者機関がないため、教育現場で起こったトラブルを検証し予防につなげることが難しい現状にある。課題解決のシステムの構築を目指したい」と話している。
 
 オンブズながさきは電話(080.3187.9156)とメール(komb.nagasaki@gmail.com)で相談を受け付けている。

© 株式会社長崎新聞社