モノとお金に頼った人間関係はやめよう、中川淳一郎氏の「プレゼント論」

先日、六本木の飲食店の半個室で食事をしていたのですが、隣はやたらと声のでかい女性2人組でした。話の内容から間違いなくキャバクラ嬢なのですが、延々と客の「ジジイ」の悪口と、男から貢がれた話、ホストに貢いだ話ばかりしていました。

「40万円のバッグ買ってくれたし、5万円くれたからヤッたわ」

男としては、プレゼントを贈ることで彼女の歓心を買い、あわよくばエロに持ち込もうという考えなのでしょう。正直、それまで店に何回も通い、そして高額のプレゼントを贈り、5万円を追加で払うという考えにはまったく理解できないのですが、今回考えたいのは「プレゼント」についてです。


意中のプレゼントをもらうコツ

私自身、女性にプレゼントをした経験がほぼないんですよね。学生時代、交際相手にクリスマスにマフラーを贈ったことは一度ありますが、それ以外はとんと覚えていない。多分ないんじゃないか。一方、自分もあまり物欲がないので、「何か欲しいものある?」と何度も聞かれ、「いらないよ」「でも何かあげたいの」と言われ、「そういえばデジカメがぶっ壊れたので、デジカメが欲しい」と言い、もらったことはあります。それ以外では「この人は『何が欲しい?』と聞いても『何もいらない』と言われるだけ」と相手も考え、以後何ももらったことはありません。

かくしてプレゼントとはあまり縁のない人生を過ごしてきましたが、よくよく記憶を思い出せば、友人にプレゼントをしたことはありました。NFLのニューオリンズ・セインツが好きな友人がいたのですが、以前ニュー・オリンズに行った時は迷うことなく彼のためにセインツのTシャツを買いました。たまたまバーボン・ストリートの土産物屋でシャツを見て「そういえば、あいつ、セインツ好きだったよな」と思い出し、買ったのです。それを渡すことを口実に久々に旧交を温めたのですが、これは喜んでもらえました。

あと、飲み会の時に北海道へ行くことをその場で話したら、そこにいた人から「六花亭のチョコレート買ってきてもらえますか?」と言われて買ったことはありますが、これはあくまでも「お土産」であり、「プレゼント」ではありません。でも、これもたいへん喜んでもらえました。

こうしてプレゼントについて考えを巡らしていると、そういえば自分は意外とプレゼントをもらっていた!ということに気付きました。贈ってくれた人の気持ちが非常に込められていることが分かるものばかりです。この時重要なのは、前述のセインツ好き男のように、自分が好きなものを普段から明言しておくことです。それは口頭でもいいですし、SNSでアピールしておくでもいい。

プレゼントには2種類ある

この5年の間、プレゼントを4人の男性の友人からもらいましたが、こんな感じです。

Aさん:過去3回の誕生日に「ドラゴンクエスト」シリーズの「メタリックモンスター」フィギュアをもらった。「さまようよろい」「はぐれメタル」「ドラキー」「ゴーレム」「スライム」「ひとくいばこ」の6つ。

Bさん:サンリオピューロランドで購入した「KIRIMIちゃん」の筆入れ(写真参照)をなぜかくれた。「最近流行ってるんですよ!」とのこと。これを私がこの6年ほど使い続けていること、かなり汚れていることを知り、先日ピューロランドに行った時に同じような筆入れをくれた。「KIRIMIちゃんがまったく使い物にならなくなった時、コレを使ってください!」と彼は言っていました。

使い込まれたKIRIMIちゃん

Cさん:ドラクエに登場するモンスター「キラーマシン」が好きであることはこれまでに公言してきたが、大きなキラーマシンのフィギュアをサシ飲みの時にくれた。

キラーマシンと映る中川淳一郎氏

Dさん:Aさんがくれたドラクエの「メタリックモンスター」から「スライムナイト」「はぐれメタル」をくれた。「はぐれメタル」はダブってしまったが、2体いても自分としては嬉しいもの。

この4人は完全に「中川さんが喜ぶだろうな~」という気持ちでこれらのプレゼントをしてくれているだけです。私がツイッターに投稿した写真にドラクエの「メタリックモンスター」を並べた写真があったので、そこにかぶっていないフィギュアをわざわざ選んでくれたのです。また、私の部屋を写した写真にCさんのくれた「キラーマシン」があったら、フェイスブックのコメントでCさんは喜んでくれました。

ここまで見てみると、プレゼントには「相手を喜ばせたいプレゼント」と「下心があるプレゼント」というものがあることが分かります。

「モノ」の切れ目が……

そして、ここからは「モノで人の心を動かす」という手法がいかに意味がないか、という話になります。小学校時代のことを思い返すと、金持ちの家に生まれた同級生が、お小遣いをくれたり、最新鋭の文房具をくれたりしていました。それが目当てで我々は彼と放課後遊んだりしていたのですが、結局カネの切れ目が縁の切れ目。彼が自分よりも仲良くしたいと思う対象を見つけたところで、当然それまでの「子分」だった我々も彼から離れていくのです。

私自身、これまでに様々な女性と色々ありましたが、前出の「マフラー」以外にプレゼントをしたことはありません。ある程度の年齢になったら食事代ぐらいは出すものの、プレゼントは一切なし。それでも色々と楽しい思いはできたので、「下心のあるプレゼント」をすることの合理性を一切感じないのです。

冒頭のキャバクラ嬢の会話ですが、「40万円のバッグ買ってくれたし、5万円くれたからヤッたわ」の後に続く、お相手男性への評価がひどい。「クサい」「ダサい」「不細工」「キモい」と罵詈雑言のオンパレードです。彼女にしてもそんな男と事を致したことはまったく幸せではないものの、高額プレゼントと現金の力の前に屈したわけです。男にしても、その下心を満足させるために多額のカネを払い本懐を遂げた。

結論としてはどっちもどっちのお似合いの男女なわけですが、「下心のあるプレゼント」の行きつく先はコレなんですよ。時々、雑誌の法律相談やら悩み相談で「これまでに彼女にプレゼントしたものをすべて返してもらいたい」とか「彼氏と別れる時に、これまでにプレゼントされたものを返して欲しいと言われたものの、質屋に売ってしまっており現品がない。どうすればいいか」みたいなものがあります。

カネに頼らない人間関係を作る

結局、「モノ」で獲得した人間関係というものは、それ以上カネがなくなったら終わってしまうものですし、終わってしまったら「あの投資額をどうしてくれる!」と下心を持った側が怒り狂うだけなんですよね。もらった側にしても「一度もらったものなんだから、所有権は私にあるわけでしょう? その後どうしようがアンタの知ったこっちゃないよ!」とキレたくなる。そりゃそうですよね。

「モノ」を介さない関係性を作っておくと、結局は「好きか嫌いか」だけの勝負になるんですよ。だからこそ、「下心のあるプレゼントをしない」ということを心がけておけば、案外良い恋人や友人に恵まれることとなります。仮に一生の付き合いや配偶者になる人の場合、金銭感覚と物欲が同等であれば、諍いはあまり起こらないものです。

「相手を喜ばせたいプレゼント」と「下心があるプレゼント」――自分はどちらをするタイプかを一度分析してみたいかがでしょうか。後者の側面も持っているのであれば、今後ますます稼ぐ必要が出てくることでしょう。特に、年を重ねれば重ねるほどルックスは衰えていくもの(私自身がそれは日々感じています)ですし、出会いのチャンスも減っていく。「下心があるプレゼント」をし続ける人はより多額のカネがかかってしまいます。

そういった中高年以降を過ごさぬためにも、「相手を喜ばせたいプレゼント」だけをする人生を若いうちからしておくことが肝要です。さすれば「モノ・カネに頼らない人間関係」を構築することができますし、出費を減らすことが可能になります。

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