勉強 好きになってほしい 特支元教諭ら発達障害児らを支援 諫早・放課後等デイサービス「オトナリ」

横尾さん(中央)の指導で、カードを使って漢字を覚える学習に取り組む児童=諫早市、オトナリ

 長崎県諫早市天満町の児童発達支援・放課後等デイサービス事業所「オトナリ」は、学習障害(LD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)の発達障害児らを対象に、学習特化型の支援に取り組んでいる。特別支援教育に携わっていた元教諭らが「学校の勉強について行けなくなる子を減らしたい」と開設。平日の放課後デイに加え、8月から毎週土曜に集中指導を行うクラスを新設した。

 ■土曜に集中指導

 10月、土曜日のクラス「ルート」があっている同事業所を訪れた。約80平方メートルの一室で午前9時~午後3時半、昼食などをはさんで30分授業を5こま実施。この日は5人が参加。壁際にある長机では、3人の児童生徒が一人ずつ職員と並んで座って勉強している。部屋の中央に座卓が置かれ、職員の横尾篤記さん(41)が小学3年の男児2人を指導していた。

 2人は軽度のADHDの疑いがあり、学校では通常学級で学んでいる。横尾さんが目を離すと寝転んだり、机を離れたりと、じっとしていないが、漢字の学習が始まると熱心に取り組んだ。へんとつくりがバラバラに記された24枚のカードを組み合わせ、制限時間内に12個の漢字を完成させるゲーム形式。答え合わせを終え、男児が「もう一回したい!」と声を弾ませた。

 ■ここなら楽しい

 職員は保育士らを含め4人。未就学児向けの児童発達支援を合わせ現在、幼児から中学生まで32人が利用している。放課後デイでは子どもの障害の内容などに合わせて、宿題や各教科の授業を補う勉強を指導。男児の1人は「勉強はあんまり好きじゃないけど、ここでやるのは楽しい」と話した。

 運営会社代表の横尾さん、事業所管理者の開珠美さん(47)らは小学校や特別支援学校の教諭免許などを所持。開さんは昨年3月まで特別支援学校に勤務していた。当時、発達障害児が中学進学後の勉強について行けず、これを原因に、心身症などの2次障害を発症して苦しむケースを多く目にしたという。

 ■学習態度が安定

 「中学でこうした問題が起きる背景には、小学校で勉強が分からずに嫌いになるという、つまずきがあるのではないか」と考え、放課後デイでの支援を思い立った。旧知の横尾さんらと昨年9月、会社を設立し、同事業所を今春開設。小学校中学年以上は学校の終業時間が遅く、放課後だけで十分指導できないため、土曜の集中的な指導も取り入れた。

 利用する子どもには、学校での学習態度が安定したり、家で自主的に勉強するようになったりといった成果が表れつつある。「低学年から勉強を好きになってもらえれば、進学しやすくなり将来の希望も持ちやすい。最終的に社会で働ける子を増やすため、家庭や学校と協力してしっかり育てたい」と開さん。

 一方で課題は職員の不足。「一緒に取り組んでくれる人を増やしたい」と語った。

 利用には市町の障害福祉サービス受給者証が必要。問い合わせは「オトナリ」(電0957.42.4665)。

© 株式会社長崎新聞社