吉田拓郎「外は白い雪の夜」秋から冬にかけてカラオケで歌うならこの曲! 1978年 11月21日 吉田拓郎のアルバム「ローリング30」がリリースされた日

吉田拓郎「外は白い雪の夜」松本隆が描く数々の胸に刺さるフレーズ

外は白い雪の夜-- 夏ももうすっかり終わり、きっとまもなく、またそういう夜に出くわしたりもするんだろう。

吉田拓郎が歌う、切ない別れの歌「外は白い雪の夜」。おそらくこれまでぼくがカラオケでうたった回数トップ5には入る大好きな歌。松本隆が描く、ギュッと心臓をつかまれるように息苦しく切ない、刻々と近づく最後の瞬間……

男言葉と女言葉で交互に描かれていく歌のなかのその物語は、ライブで吉田拓郎が雄々しくガラガラに声をからし、身をよじりながらうたうとよけいにヒリヒリと届く。

1978年11月28日、吉田拓郎が32歳で発表した『ローリング30』にこの歌が収められたとき、ぼくはまだ大学1年生で、歌の意味など深くは理解もせず、想像もできず、ただ「いい歌だなあ」と感心していただけだ。

 サヨナラの文字を作るのに
 煙草何本並べればいい

そんな胸に刺さるフレーズの数々にハッとしたのはもっともっと後、まさにローリング30、30歳を過ぎ、30代以降を考えるようになってからじゃなかろうか。

秋から冬にかけてのカラオケならこの曲「外は白い雪の夜」

恋はいつも甘い香りを放って心を誘い、その楽園に足を踏み入れるとそれまでは感じることさえなかったさまざまな思いにジリジリと心を焼かれ、苦い思いも噛みしめるようになる。甘いときには気持ちが昂るし、苦いときには落ちてもいく。

うまくいけば楽園のメインアトラクション、ジェットコースターにふたりで乗って手をつなぎ歓喜絶叫もできる。だけどそのジェットコースターにずっと乗り続けられるわけじゃない。ジェットコースターには始まりも終わりもあるのだ。

どこになのかはわからないけど終りはあって、そのときどんな気持ちで降りていくのか。ふたりで乗っていたなら、そのままもっと穏やかな場所をさがしにいくのか、それとも楽園を出てひとりの部屋に帰っていくのか。

「外は白い雪の夜」に描かれるようなシチュエーションはぼくには経験がない。けど、もうどうにもこうにもならず、男にしても女にしてもたっぷりの思い出を作った楽園から寄り添っては帰れないときのなんともいえない気持ちはわかってしまう。

ガヤガヤと盛り上がるカラオケボックスで、大好きなこの歌をうたいながらヒリヒリと物語に浸る。カラオケのそんな楽しみを覚えてから、10年は経っただろうか。

秋から冬にかけての季節ならこの歌をうたう頻度はナンバーワンかもしれない。まあ、そんなにめちゃカラオケ好きってわけじゃないんだけども(笑)。

もちろん、自分でうたうより、吉田拓郎の歌声をたっぷり浴びるほうがずっといいのだ。

※2016年10月19日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 藤本真

© Reminder LLC