揺れる佐世保市の2学期制 明確な学力向上 見えず 目配りに余裕、現場は実感

教員(左)のアドバイスを受けながら社会科見学の発表練習をする子どもたち=佐世保市立祇園小

 長崎県佐世保市の市立小中学校の学校2学期制が揺れている。学力向上などを目指して2006年度に導入したが、学力テストでは明確な効果は出ていない。一方、学校現場は児童生徒の学習態度の向上や子どもと関わる時間の確保など効果を実感。長崎県内で3学期制に戻す自治体も出る中“ジレンマ”に直面している。

 新学期最初の授業日となった10月16日午前。佐世保市立祇園小(祇園町)の小学3年の学級では、スーパーでの社会科見学の発表練習に取り組んでいた。「いろいろな産地から商品が集まっています」。児童らの明るい声が響いた。

 佐世保市では、授業時間の確保などを目的に、2006年度に市内全ての市立小中学校で2学期制を始めた。1年間を前期(4月~10月第2月曜)と後期(10月第2月曜の翌日~3月)に分けている。

 佐世保市では、2003年に2学期制の導入が提言された。教員や市民などで構成する「佐世保市の教育を考える市民会議」は、確かな学力を形成する手段として打ち出した。しかし、変更後の2007~2018年度に実施した全国学力テストでは、小学6年、中学3年ともに全ての項目で全国平均を下回った年度が6回にのぼった。

 「明確に数字が出ていないのに、2学期制がいいとは言い切れない」。佐世保市教委が今後の望ましい学期制の在り方を諮問した「市学校学期制検討委員会」の委員の一人はこう漏らす。8回の審議を重ねた検討委員会は8月、2学期制の継続の有無について「結論を出すに至らなかった」と答申。委員は学校での空調整備や土曜授業の広がりを挙げ、「導入当初より学期制の違いが見えなくなっている」と指摘する。

 佐世保市内の中学校の校長も、2学期制で確保できる20時間程度の授業時間では学力向上につながらないと指摘する。一方で、通知表を出す回数が減った効果を訴える。2学期が始まるまで約1カ月の夏休みを挟む3学期制に対し、2学期制は前期が終わった4日後には後期が始まる。生徒は通知表を受け取って上がったモチベーションを保ったまま授業に集中できるようになった。教員も通知表作成の時間的、精神的な負担が減り、生徒に目が行き届きやすくなったと強調。「教科担任制の中学校では生徒と向き合う時間が取りにくい。2学期制の何がまずいのか」と首をひねる。
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 佐世保市と同じ2006年度に2学期制を始めた大村市は、来年度から3学期制に戻す。学校週5日制の導入を受け、当初は限られた授業時間の中で児童や生徒と接する時間を確保するため2学期制を選択。だが、保護者と地域からなじみのある3学期制を望む声が根強く、検討委員会が発足。2017年に「3学期制への移行が望ましい」と答申した。

 「決して簡単に結論を出せたわけではない」。委員長を務めた長崎大地域教育総合支援センターの池田浩副センター長は念押しした上で、新しい時代に必要な学力やコミュニケーション能力を育てるために地域と保護者の連携を重視したことを説明。「ここで議論を終えるのではなく、地域の多様な大人が子どもをどう育てるか考えるきっかけにするべきだ」と投げ掛ける。

 佐世保市は12月、朝長則男市長と教育委員が参加する総合教育会議を開く予定。市教委は年度内に継続の有無を決める方針という。

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