イオン、4年目の「ブラックフライデー」が過去最大級に大盤振る舞いなワケ

今年で4年目を迎えた、イオンの「ブラックフライデー セール」。これまでの3回は本場・米国のブラックフライデーにならって11月の第4金曜日から開催していましたが、今年は第3金曜日の22日から、開催期間も従来の3日間から2日拡大して5日間の日程で開催します。

前夜祭ということで他店舗に先駆けてセールが始まった、東京のイオンスタイル品川シーサイド店を訪れると、消費増税の直後にもかかわらず、例年に勝るとも劣らない数の買い物客が集まっていました。過去3年の蓄積を踏まえて、今年はどこまで進化したのでしょうか。


「1年かけてお買い得商品を集めた」

全国のイオン、イオンスタイル約510店舗で、11月22日から26日までの5日間の日程で実施される、2019年の「イオン ブラックフライデー セール」。今年は10月に消費税率が10%に引き上げられ、イオンリテールの10月の月次売上高も既存店が前年同月比7.7%減と、大きく落ち込む中での開催となりました。

こうした状況を受けて、イオンとしては過去3回とは異なる、いくつかの目玉施策を取り入れました。

その1つが、過去最大となる半額商品の企画数です。過去3年のセールで売れた商品を精査し、売れる確度の高いラインナップを研究。わかりやすくお買い得感を出すため、半額商品を大幅に増やし、昨年の約1.5倍となる160企画の半額商品を用意しました。

ライトダウンジャケットなどが半額で販売

一例を挙げると、通常価格1万9,800円(税別、以下同)のプライベート・ブランド(PB)羽毛掛ふとんは9,900円。同じくPBのライトダウンジャケットは、通常5,800円の商品が期間中は2,900円で販売されます。そのほかにもビジネススーツなど、日替わりで半額商品が提供される予定です。

「10月は消費マインドが落ち着いて閉塞感がありましたが、ブラックフライデーを契機に、いろいろな商品に触ってみて、お買い物を楽しんでいただきたい。そのために、1年をかけて、スペシャルで価値のある、お買い得商品を集めてきました」(イオンリテールの栢野博子・マーケティング企画部長)

高額消費の取り込みへ予約販売も開始

さらに、今年からの新たな取り組みとして、11月5日から11日までの間、Webと店舗で予約販売会を実施。セール当日は大勢の買い物客で混雑する中、品定めする時間が限られるため、高額商品の購入についてじっくり検討したいというニーズを受けたものです。

予約販売で好調だったのは、「PlayStation 4」をはじめとしたゲーム機や、ベビーカー、ベビーベッドなど高額のベビー用品。そのほかに、ワインやお米にも多くの予約が入ったといいます。

もちろん、ブラック(黒)にちなんだ96円・960円・9,600円の販売企画は、食品から衣料、暮らし関連商品などを中心に今年も展開。例年の人気企画に新たな取り組みを加えて、5日間の商戦に臨む構えです。

本場より1週間早く開催するワケ

もともとは米国で感謝祭の翌日に開催され、1年で最も売り上げが見込める商戦とされてきたブラックフライデー。日本でも、気温が寒くなり消費者の間で冬物への需要が高まるこの時期に、消費の“ヤマ”をもう1つ作りたいという狙いから、小売り各社が2010年代に入ってブラックフライデーのセールを開始しました。

ただ本場・米国にならえば、本来のブラックフライデーは11月29日。イオンは今年、1週間早くセールを開催することに踏み切ったわけです。そこには、いくつかの理由がありました。

1つは、日本の場合、11月20日前後から気温が下がりやすい傾向があり、このタイミングで冬物衣料や冬物寝具の需要が高まる点。「お客様もそろそろ買い物がしたいと思っているはず。実際に先週からグッと寒くなってきたので、この日程がベストだと考えています」(栢野部長)。

また、週明けの25日は多くの企業で給料日に当たります。さらに、イオンでは毎週火曜日に「火曜市」という食品セールを実施しています。金・土・日の週末3日間に加えて、給料日と食品セール日もセール期間に組み込むことで、消費者の異なるニーズを取り込もうという狙いなのです。

大勢の買い物客でごった返す食品フロア

特に注力しているのが、食品。日替わりで特売品を用意することで、セール期間中に何度も来店してもらえるような仕掛けを施したといいます。

建前は前年超え、本音は消費爆発?

3年目までは毎年、セール期間中の売上高が2ケタ成長を続けてきましたが、今年は消費増税の直後であることも踏まえて、「前年超えの数字を取っていきたい」(栢野部長)と控えめな目標を掲げています。

それでも、「お客様は8月、9月に先行してお買い物をされましたが、買いだめは必要最低限だと思われます。ブラックフライデーを待っていたお客様もいらっしゃるので、ぜひここで消費を爆発させて、年末に向けて明るい空気感を作っていきたい」(同)と、色気も見せます。

カウントダウンイベントには、ラグビー日本代表のトンプソン・ルーク選手(中央)やお笑い芸人のレイザーラモンRGさん(右から2人目)らが登場

ブラックフライデーに力を入れることで逆に懸念されるのが、12月のボーナス商戦、クリスマス商戦、年末商戦、そして年明けの初売り商戦の需要を先食いしてしまうことです。この点については、12月から商品ラインナップを新生活や新入学の準備のための商品に変更。11月とは異なる買い物を促していく方針です。

栢野部長によると、これまでイオンに来たことのなかった客層がブラックフライデーをきっかけに来店してくれるようになった、という分析もあるといいます。需要の先食いをうまく抑え、消費増税によって冷え込んだ消費者の心に点火することができるか。今年のブラックフライデー商戦は、例年以上に重要な意味を持っていそうです。

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