「これまで見たことがない新しいアクションを」──『HYDRA』園村健介監督&主演・三元雅芸インタビュー

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押井守監督の『東京無国籍少女』やジョン・ウー監督の『マンハント』など、コレオグラファーとしての手腕を高く評価されているアクション監督・園村健介。満を持して監督デビューを飾るのが、渋谷ユーロスペースにて11月23日公開の映画『HYDRA』だ。

主演を務めるのは、ドラマ『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』や映画『RE:BORN』などアクション作品には欠かせない実力派俳優・三元雅芸。また本作のヒロインで、舞台となるBar「HYDRA」のオーナーバーテンダー・梨奈役には「ViVi」の専属モデル・miuが抜擢されている。

三元演じる高志は「HYDRA」の厨房担当であり、恩師の娘・梨奈を見守りつつも心に闇を抱えているという役どころ。他にも共演者として、永瀬匡・青柳尊哉・川本直弘・仁科貴・野村宏伸・田中要次・田口トモロヲといった多彩なキャストが顔を揃えた。謎の組織「東京生活機構」やコロシ専門の「間引き屋」、さらに警察まで入り乱れる“殺し合い”をハードボイルドタッチで描いた本作。今回は園村健介監督と主演・三元雅芸のインタビューを通して、作品の裏側にじっくりと迫っていきたい。

園村健介・三元雅芸インタビュー

──よろしくお願いします。まずは園村監督にお聞きしたいのですが、今回初監督に至った経緯から教えていただけますか?

園村健介監督(以下・園村監督):実は発端は三元さんからなんです。僕が合流する前の経緯は三元さんの方が詳しいんですけど、三元さんから僕の方に「監督してみませんか?」と打診がありまして。僕ももともと監督志望だったというところがあって、三元さんが主演ならぜひやりたいなということで受けさせてもらいました。

三元雅芸(以下・三元):今回のプロデューサーとエグゼクティブプロデューサーから、何か作品を作りませんかという話があって。どういう内容にするとかっていうのは全くなかったんですけど、お話をいただいて僕としてはストーリーどうこうの前に、園村さんとだったらやりたいなっていうのがありました。

──では園村監督に依頼した時点では、物語の概要などもなかったということですか?

三元:全くなかったですね。こういうストーリーでやりませんか、みたいなプロットをちょっと用意してもらった時に、園村さんに「これどう思われますか?」って見てもらったんですよ。けどそれは今回のストーリーとは全然違う内容で、二転三転して『HYDRA』が生まれたんです。園村さんからの「こうした方がいい、こうやった方が面白いんじゃないか」っていう言葉が的確だったので、やっぱりどんな作品・ストーリーになろうとも園村さんがいないと絶対面白くならないと思いましたね。

──三元さん演じる高志は、無愛想でありながら人間的な魅力もしっかり備えているように感じした。役を演じる上で意識した点があれば教えてください。

三元:高志は梨奈のお父さんとの間にある大きな出来事が起きてしまうんですけど、なのになぜ高志は梨奈の前にいるのかというところでがあって。僕の根幹としては“償いきれない罪を償おう”というのがありますね。彼女のそばにいることに自分の人生を費やし、彼女を守るということだけを軸に役作りしました。それと監督からのオーダーがあったんですけど、役を演じる上であまり表現として表に出さないよう、内側へ隠すように今回はやってみましょうという演出がありましたね。そこは軸ではなくて、演じる上で意識したところではあります。

園村監督:芝居に関しては、内側に秘めてもらうということが一番核となる部分かなと。いつも三元さんが演じている役はどちらかというと熱い役が多かったので、違う三元さんというか、三元さんはこういうこともできるんですよっていうのを知ってもらいたいという思いがあって。あまり三元さんがやらないような役だったら面白いかなと感じたんです。

三元:嬉しいですねぇ(笑)。

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──共演にモデルのmiuさんや永瀬匡さん、野村宏伸さん、仁科貴さん、田口トモロヲさんら多彩な顔触れが集まっています。キャスティングはどのように行われたのでしょうか。

園村監督:正直な話をすると、ほとんどキャスティングの方で「この人はどうですか」と何人かリストアップしてもらっていて、この人なら大丈夫だという方を選んでいます。ただ仁科貴さんだけは最初からイメージがあって、僕が「仁科さんにお願いできればいいな」とちょくちょく言っていたら実現に至りましたね。

──確かに仁科さんの存在感はすごかったですね。得体の知れない怖さというか…。

三元:仁科さんはひと言もしゃべってないですからね!

──三元さんはmiuさんとの共演時間が一番長かったと思いますが、miuさんの印象はいかがでしたか?

三元:最初はやっぱり緊張されていたというか、そんなに芝居の経験がないということで不安を感じていたかもしれませんね。けど逆に経験していなかった分、ナチュラルに演じられていたんじゃないかなと思います。すごく透明感があって、セリフのやり取り自体は少なかったんですけど、梨奈を守ろうって思えたのはmiuちゃんのおかげですね。

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──『HYDRA』では殺し屋の組織など、日本ではあまり馴染みのない設定が多く見られました。ノワール的な雰囲気やハードボイルド感を出すことは最初から決まっていたのですか?

園村監督:ノワールの雰囲気は、プロットの段階で誰が観ても感じるだろうなというのはありました。日本では殺し屋はあまり馴染みがないので、そういった組織が実は生活に密着していても不思議じゃないように見えたらある意味一番日本らしいかなと思って。今回銃とかも出てきたりはするんですけど、どうしても平和な国っていうイメージがあるので、どこかにそういうものが潜んでいる方が日本ならではのノワールになるかなという印象ですね。

──ちなみにタイトルとバーの名前が共通して「HYDRA」になっていますが、何か意味があるのでしょうか?

園村監督:これはですねぇ…… 実はプロデューサーの行きつけの「HYDRA」っていうバーが中目黒にありまして(笑)。プロデューサーに「マスターにバーを使わせてもらえるよう交渉してきたよ」と言われて、じゃあバー主体で物語を考えましょうというところから始まったんですね。低予算ならではというか、“台本に合わせてこういう場所を見つけてきました”の逆パターンで、使わせてもらえるならここを拠り所にしましょう、みたいな。バーの名前も看板もそのままで。初日に来たスタッフが「ちゃんと『HYDRA』になってる」と驚いていたんですけど、「いやここは本当に最初から『HYDRA』なんです」という話しをして(笑)。

三元:お店の方からしたらすごいことですよね(笑)。

園村監督:そこに後づけで、「まず“HYDRA”ってなんなの」というところからギリシャ神話のヒドラがどういうものかを調べて。やってもやってもどこからでもそういうヤツらは生まれてきちゃうみたいな、“エンドレスな業”という意味合いに無理やりこじつけたっていう感じですね(笑)。

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──今回は園村監督・三元さん・川本直弘さんがアクションコレオグラファーとしてクレジットされています。お三方の役割や“アクションコレオグラファー”という役職の内容を教えていただけますか?

園村監督:普段は僕もアクション監督という名義でよく仕事をしているんですけど、今回僕自身が監督なので、どちらかというと動きができる人たち同士でアイデアを出し合ってそれを僕が監督したというようなスタイルでした。いわゆるコレオグラファーは直訳すると“振りつけ”になるんですけど、アクションをつける時に僕が俯瞰した状態で見ていて、「展開的にこうしたい」というふうに注文を2人に出して。どう動けますかって三元さんに聞いて、「じゃあここはこういう感じならこういう動きがつきますね」とか「ここでこう殴れますね」と、お互いセッションしながら作っています。

ただ「絶対ここでこうしろ」みたいな作り方というよりは、本人たちが自然に出せる動きを一番重視しつつ、それが僕のイメージしている展開に沿っていけているかどうかを僕がジャッジするような形でしたね。3人でアイデアを出し合って作ったという思いがあったので、アクション監督ではなく3人のクレジットでアクションコレオグラファーにさせてもらったんです。

──ちなみにアクション監督と“アクションコーディネーター”に明確な違いはあるのでしょうか。

園村監督:まずアクション監督っていうのは、アクションシーンを監督するという意味合いで僕らは使っています。普通の作品だったら監督がいて殺陣師がいて、監督に「こういう動きでどうですか」と提案したら、あとは監督とカメラマンで撮り方を決めていきます。けれどやっぱりアクションは特殊だったりするので、アクションを撮り慣れていないとせっかく良い動きをつけても「なんでこうなっちゃったんだろう」ってなる時もあるんです。それで僕が作品に携わってカット割りや編集、効果音だったりMAまで立ち会ったりしている時にはアクション監督という名義でやってますね。

でもそうすると、僕自身やることが多くなるじゃないですか。それを補佐してもらうという意味合いで、アクション監督の下に今度はアクションコーディネーターを入れて、そのアクションコーディネーターには実際に殺陣師と同じ役割を担当してもらいます。監督と殺陣師の関係みたいなものが、アクション監督とアクションコーディネーターの関係性みたいな感覚ですね。アクション監督がいてアクションコーディネーターもいて、どういうことなんだろうって思う人も結構いるかもしれないですけど、実はそうやって細分化されているんです。

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──本作の大きな見どころとして、目で追いきれない高速ファイトが挙げられます。総合格闘技のようにも見えましたが、アクションのベースになった型はありますか?

園村監督:殺し屋の話ではあるんですけど、ちょっと僕自身が久しく素手の闘いをやっていなかったというのがあって。素手でやりたいなというところがあったので、ボクシングだったり総合格闘技だったり実際の試合を見てみたんです。そうしたらボクシングとかでは起こりうるけど、実はアクションとしては映像化されてないような動きって結構あったんですね。

例えばアクションで殴りに行った場合普通は、腕の伸びきる間合で綺麗に受けてしまうような感じになるんです。けど実はそれって、ウソと言えばウソになっちゃうんですよね。だって実際にその距離で殴りに行こうとしたら、止めきれるかどうかわからないじゃないですか。でもやっぱり熱くなっていると、体が近距離になるんですよ。そういう接近した中で、本当に殴り合うというのが実はアクションにはそんなになくて。

じゃあ距離感を変えるとなると、今度は打ち方を変えなきゃいけなくなってくる。なぜなら今まで通り打つと、ただちっちゃく打つだけになってしまう。そうならないように、今回は『HYDRA』用に開発した“擦るパンチ”っていうのを結構頻繁に入れているんです。ボクシングの試合とか見ていてよく出てくるのが、超近間で殴りにいったけど相手が避けちゃって腕が抜けていくっていう場面で。実はそれが、アクション映画であまり表現されていない部分だったんですよね。

この作品はあまりアクションアクションしちゃうとやっぱりリアリティが欠けてしまうし、元々がリアリティのない話をやるので、よくある「あぁ、アクションがやりたかったんですね」っていう作品になってしまうなと。もちろんアクションもすごいやりたいんですけど(笑)、この作品の延長線上にある戦いで、素手をチョイスするとなったら殺し合いに見えないといけないので。それなのに距離感にしても間合いの取り方にしても、相手と離れて“ピタッと綺麗に構えました”っていうのをやったら絶対に冷めちゃうじゃないですか。だから『HYDRA』では間合いを取っている間も微妙にじんわりと止まらず、相手がちょっと動いたらその間合いを外すようなことを合間合間に入れてやったんですね。あまりお客さんが休憩できるところがないのがいいかなと思って。

──では“これまで表現されてこなかったようなアクション”ということで、やはり三元さんにとっても初めての挑戦になったのですか?

三元:そうですね、今までやっていたアクションでは通用しないと思いました。監督も話していたように、ボクシングならこうなるんじゃないかなっていう距離感だったり、あと体の使い方ですよね。今までは“この辺りで止める”ところを、今回は“打ち抜く”っていう体の使い方をクランクインする数カ月前から週3くらいですかね、監督に8時間くらいずっと指導いただいて。

例えば自分が突いたパンチが本当に相手に体重が乗っているのか、それに耐えうる体の作り方になっているのか。本当に相手に力が伝わる“殴る・蹴る・避ける”っていうことを指導してもらっていたので、体術から、ようはゼロから学ばしてもらいましたね。だからアクションの稽古をやった感覚がなんだかなくて。その3、4カ月という期間がなければ、監督はこれがやりたいんだっていうものには近づけられなかったと思います。

──撮影中にケガをするようなことだとか、危険な瞬間はありませんでしたか?

三元:ケガはしてないんですよね、全員。ただ実を言うとラストのシーンとか、お互い顔にパンチが入ってますよ(笑)。お客さんに落ち着かせる間を与えないようなアクションを狙って監督は撮られてましたけど、被写体となる僕たちも同じなんです。相手の川本直弘くんも素晴らしいプレイヤーで、彼はつけた動きとは違う動きを本番でやったりしてきて、僕を試すというか、揺さぶってるんですよ(笑)。

──本番中にですか!?

三元:本当に無茶苦茶なことはしませんけど、“三手殴る”ってあったとしたら三手殴るまでに違う動きを入れてきたりとか。それを僕が最初に決められた形で受けますねっていうことだけをやっていたら、その動きやパンチに対応できないじゃないですか。パンチが来なかったとしても、反応していくために集中していないとダメだったので、しっかりそういう画面になっていると思いますよ。それに気が張っているのでケガはしなかったですし、対応が利く体の使い方などを教えてもらっていたので、全部あのラストファイトに活かされていますね。

園村監督:1度離れて対峙というか間の取り合いをやってる時、相手を揺さぶってやろうっていうのがお互いに出てましたよね(笑)。

三元:(笑)

園村監督:アクションって本当は“わからせる動き”で入るんですけど、今回はなるべくバレないようにバレないようにって、パンチが相手に見えないよう打つみたいな。その緊張感を常にずっと維持してもらっているみたいな感じでした。

三元:そうですね。相手をケガさせないようにはもちろん大切ですしマストなことではあるんですけど、今回は“本当に当ててやろう”ってお互い考えていたと思うし、他のアクションシーンでもそうだと思うんですよ。そうそう、僕と監督の共演シーンがありましたよね。歯磨きのところ。あの対決場面でも、園村さんはアクションだったり武術の先生でもあるので「当たるはずないだろ」と思って狙いにいってたんです(笑)。やっぱりわかるようにパンチを出すと避けられちゃうし、 振りつけとしては避けられてしまう手なんですけど、でもギリギリまで避けさせまいみたいな(笑)。

園村監督:もともと避ける手だったけど、ちょっと当たっているのが逆にリアリティがあって面白いかなとも思いますよね。こっちは避ける動きも一応やろうとしているので完璧に食らうっていうわけではないし、リアルだと“避けている最中に当たっている”というのも有り得るじゃないですか。そういうところが今までのアクションにちょっと飽きてきてるということもあって、すごく新鮮に感じちゃって。僕も当てにいってますから(笑)。

三元:だって監督、歯ブラシをバキッと折ってぐわって迫ってくるじゃないですか。グーッってやってる時に頭に刺さってますからね!(笑)

園村監督:(笑)

三元:OKテイクは刺さってなかったですけど、1発目こられたときに「あぁ、やっぱこれだけの圧できますよね」って。キャップを被っているので血は出てないですけど、思いっきりきたので超面白かったですね(笑)。

園村監督:普通の作品ではできないことを、このメンバーだったらできるなっていうことがあってですけどね、もちろん。この作品だからこそできるという。

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──ラストの格闘シーンはどのくらいの時間をかけて撮影されたのですか?

園村監督:確か10時間くらいだったと思います。あの地下室シーン全体でいうと丸1日なんですけど、もともと予算がないのでアクションで1日撮ることすら本当は惜しい分量ではあったんです。でもアクションが痩せちゃうことはこの作品にとってマイナスでしかないので、1日だけは確保してもらって。事前に練習もしてお互いに合わせてもらっていましたし、細かく割らなかったのでカット数がそんなに多くなかったんですよ。それで10時間くらいで撮れたかなと。普通だったらたぶん2、3日かけて撮るようなシーンではあるんですけど。

──ちなみに1日かけて撮影したアクションシーンで泣く泣くカットしたような部分はありましたか?

園村監督:それはなかったですね。全て詰まっています。

──今回に限らず、お二人がアクションを描く際に心がけていることや重要視していることを教えてください。

園村監督:技術的なところだと、やっぱり編集が一番大事だなというのがありますね。テンポを作ったりだとか。自分の思い描いたリズムに編集で近づけられるかどうかっていうのは、他の人がやった場合ちょっとした微妙なカットのつなぎ目の、“2フレの間が気持ち悪い”みたいなことが結構あったりするんです。あとは構図ですね。「この動きが見える位置はここで、この動作が見えやすいのはここ」というように、せっかく演者がいい動きをしているのにお客さんに伝わらないのはもったいないですから。

演出的な面だと、どうやってお客さんに感情移入させるイベントを作るかというところ。お客さんが一緒になって歯を食いしばって息を止めて観てもらえるのが、お客さんにとっての印象はいいと思うんです。お客さんに俯瞰して見られて、「やってるやってる」って思われるのが僕ら的には悔しいというか。アクションシーンって普通台本に3、4行なんとなく書いてあるだけなので、どこで誰がピンチになってどう盛り返してみたいなことを僕らが作るんですけど、そういう起承転結の作り方はいつも心がけてますね。

──三元さんは演じる上でいかがですか。

三元:僕はケガをさせないのと、テンポとリズムを作ることですね。僕が敵役で相手にかかっていく時、これだったら心地いいんじゃないか、これだったらやりやすいんじゃないかっていうテンポリズムをリードしていく感じです。トントン、トントントントンってゆっくり柔らかくやると、相手もトントン、トントントントンって対応してくれるので。これが心地いいんじゃないかなと思ったら、そういうリズムを相手に提示して共有できるようにリードできるかなと。ケガをさせないっていうところでは、絶対当たらないところを殴るっていう感じですかね。例えばワンツーなんですけど、じゃあ監督、弾いてもらっていいですか?(笑)

園村監督:はい(笑)。

三元:監督、避けないでくださいね。これを(実際に拳を繰り出しながら)パァンパァンって、当たらないところに打つ。でもここで手がちょっとでも触れていれば、彼なり彼女がパッと避けたようには見えるじゃないですか。あとはカメラの位置を考えてカメラの前にインパクトがいくようにしているんです。

でも今回に関して言うとテンポやリズムは全く考えていないんです。相手にケガをさせないという点でも、ケガをするような人じゃない人たちばかりで。本気で狙いにいっても当たらない人たちばかりだから、今まで僕が大切にしてきたことが全く当てはまらないんですよね。それにカメラの位置も意識したのは…… 回し蹴りのところくらい? だけで。そこ以外は監督が「これはここだ、ここで狙うんだ」ってカメラを据えて撮ってくれていると感じていたので。

だから今までの発想と全然ハマってないんですよね、『HYDRA』は。クランクインするまで監督を独り占めして、稽古を1日何時間もやらしてもらって家に帰ってから「あぁわかった!」と思うじゃないですか。それで翌日「これじゃないですか!? なんとなくわかったんですよ!」って言ったら、監督は「そうです。じゃあ次は」って(笑)。できたと思ったらハイハイそれは置いといて、みたいな(笑)。だから毎回、前回のことがなんとなくわかってきたってなった時に「そうそう、OK。ちょっと階段上がってきた。じゃあえっとね」ってその先の階段が常に用意されている状態だったので、本当にインするまでの時間も僕にとっては贅沢な時間でしたね。今後の僕の役者のキャリアの発想としても。今年42歳ですけど、撮影は去年でしたっけ?

園村監督:去年の5月くらいですね。

三元:40、41でもう一回この新しい物差しをもらうことができるという。まっさらな物差しをもらえましたよね、監督から。ちゃんと1つずつ階段を上らせてくれたので最高でしたし、今もその物差し使ってますよ。わからないわからないで終わらずに、優しくわかりやすく教えてくださって。乗せるのが上手いんですよ(笑)。だから達成感の連続なので、わかった時に感じる面白さが今も続いているっていう状態ですね。

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──撮影に入るまでに準備期間はどれくらいあったのでしょうか。

園村監督:まず一番最初に打ち合わせしたのが一昨年の秋くらいだったと思うんですけど、そこから本を考えたりどんな話に持っていくかを詰めて、形になってきのが翌年の2月とか3月くらい。そこから今度は実際にやるアクションはどういう感じにしようかな、というので3月、4月くらいからスタートしたので実質準備期間は半年くらいですね。

──お二人の息の合ったコンビネーションが羨ましいです。お二人が初めて出会ったのはいつ頃だったのでしょうか。

三元:16年前ですね。

園村監督:三元さんがまだアクション部のスタントマンもやっていた時期に、僕もスタントマンというか現場の補助で行った時にお会いしたのが一番最初ですね。

──三元さんはいつ頃からアクション俳優を目指していたのですか?

三元:地元が大阪なんですけど、役者を目指して出てきた東京に出てきたのが16年前で。映像の現場なんて経験したことがなかったんですけど、そういう時に「アクションの仕事があるよ」と。大阪でアクションチームに所属していたこともあって役者を目指してきたんですけど、僕なんかでも現場に行ってもいいのかなっていうところはありつつ、人が足りなかったというラッキーな状態もあって。現場に行かせてもらって、僕も補助とかいろいろなことをやらしてもらったんです。

でも2年か3年くらいですかね、いろんな現場に行かせてもらったりいろんな濃いことを経験させてもらえばさせてもらえるほど、「僕は役者を目指してきたのにな」と感じて。このまま役者を諦めるというか、方向転換してアクションマンスタントマンとしてやっていくのかとなった時に、「最初の思いってなんだったの?」って。じゃあどっちにしようと思って、東京に出てきて3年目にスタントマンを辞めて、またゼロからの出発でしたね。

──では監督の目から見た三元さんの印象を教えてください。

園村監督:すごい魅力的だと思うんですよ、話しをしてても面白くて熱いですし。物事には絶対真面目に取り組むので、投げやりなことも絶対しない。普段の人間性ってお芝居に出るじゃないですか。そこがやっぱり真面目さというか、真っ直ぐに取り組む感じがすごい出る人だなと思いますね。

三元:本人を目の前にして(笑)。いやいや思い残すことはありませんよ、そこまで言って頂いて。

──三元さんから見た園村監督の印象はいかがですか?

三元:園村さんがアクションコーディネーターだったりアクション監督をされている作品にいろいろ参加させてもらっていて、初めてすごく濃い現場だったなと思ったのがゲームの『デビルメイクライ』シリーズでしたね。主人公にダンテとネロというキャラクターがいるんですけど、僕がダンテというキャラクターをやって、園村さんがネロをやってアクションコーディネーターもやっていたんですね。園村さんはセリフも言わなければならないし立ち回りもつけなければならないっていう。僕は全然アクションなかったんですけど、園村さんは主人公のアクションもものすごく多かったですし、ましてそれを全部自分で作っていますから。

その共演で度肝を抜かれたというか、「芝居もできてアクションもできてって理想だな」って、僕自身が目指して出てきたところだったんです。なんだかもう、ここまでできる人に出会ってしまったので僕はその時に「こんなヤツがいるんだったら、もう俺は負けた」って本当に思えて。だから逆に、僕はその数年前に辞めて良かったと思ってるんですよ。やるからには上のところに行っていいものを残していきたいと思った時、「でもこの人には一生勝てないんだ」って思いながらやり続けていたかもっていう洗礼をくれた人だったので。

だからやっぱり、園村さんがアクションコーディネーターやアクション監督を担当する作品に携わらせてもらって、素晴らしいアクション監督が日本に沢山いる中でも稀有な演出をされる人だなと。今まで受けたことがないような演出だとか、今回の体の使い方もそうすよね、どこかで見たことがあるアクションを合わせたものではないですから。園村さんは普段練習していないと応えられないものを演者に求めてこられるので、園村さん自身もずっと練習ばかりしているんですよ。今回もその練習を止めてないんだなって、常に進化し続けているんだなって思いました。

この前ニューヨークの映画祭に行った時に向こうの監督やプロデューサーとも会ったんですけど、「アクションエボリューション、アクションの進化だ」って言ってもらえたんです。それはもう、園村さんがそういうふうにしてくれているんですよね。園村さんが常に「このアクションはやらない、あのアクションもやらない、じゃあ俺は」ってこれまで見たことがない新しいアクションを考えた結果が『HYDRA』であるし、園村さんはアクション監督として今までもそうやって稀有な作品を残してきたんだなって思います。好きですね、僕も本当に尊敬してますから。

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──園村監督はこれまで多くの監督と組まれてきましたが、今回初監督を務める上で目標にしたり意識するような監督はいらっしゃいますか?

園村監督:正直なところそこまで頭が回ってなかったというのがあるんですけど(笑)、今まで観てきた作品だったり自分が何回も観ているもの、みたいなのは節々に出ていたかなと。

三元:例えばどこですか?

園村監督:リドリー・スコット監督の『ブレードランナー』を結構観ていて、あの空気感だけでも出したいなっていう。特に『HYDRA』のような話って、ちょっと間違っちゃうとすごく安くなっちゃうというか、そういう空気感ひとつでちょっとだけ底上げできるかなって意識がありましたね。高志が部屋の中でひとり佇んで座っているところも、なんとなく『ブレードランナー』のデッカードが部屋でちょっとうつらうつらしているみたいな、ああいう空気感を出せたらなと思って。

それと、ある場面で仁科さんがスッと見せる折り鶴ですね。『ブレードランナー』のガフっていう折り紙を作るキャラと、ガフに監視されるデッカードっていう関係性がちょっと似ているかなというのがあったので。折り紙以上のアイテムを思いつかなかったので、これは使わせてもらおうと(笑)。

三元:リスペクト、オマージュですね(笑)。

──それでは最後に、映画ファンへ向けてメッセージをいただけますか?

園村監督:まず受け入れる・受け入れないは結構分かれる作品かなとは思うんです。でも好きになったら、何回も観ていろいろなところに気づいてもらえたらいいなという気持ちがあるので、ぜひ好きになってもらえたらと思います。

三元:今までいろいろな作品をやらせてもらって、その時その時のベストを作品ごとに残せたとは思っているんですけど、『HYDRA』はこの先僕がどうやって超えたらいいのか正直分からないところもあるくらい全力を出しきった作品です。アクションが好きな人はぜひともスクリーンで観ていただきたいですね。「なんなんだあのアクションは!」と間違いなく感じてもらえると思っていますので。

──ありがとうございました!

まとめ

数々の作品でアクションの境地を開拓してきたプロフェッショナルが集まり、さらなる高みを目指して生み出された『HYDRA』。応援コメントでは、『東京無国籍少女』『THE NEXT GENERATON パトレイバー』などで園村監督とタッグを組んだ押井守監督がリアルバトルを称賛。ほかにも映画『キングダム』の左慈役・坂口拓やインドネシア産アクション『ザ・レイド』シリーズのギャレス・エヴァンス監督など、各界から熱いメッセージが寄せられている。

映画は「渋谷ユーロスペース」での1週間限定ロードショー。邦画アクションの歴史に新たに刻まれるべき壮絶なファイトシーンを、ぜひその目に焼きつけてほしい。

(文:葦見川和哉)