元ラグビー日本代表の大学教授 神戸・東須磨小問題を語る「目指すは、W杯で体現したワンチーム」 

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平尾剛さん

 神戸市立東須磨小学校(同市須磨区)の教員間暴行・暴言は、社会に大きな衝撃を与えた。子どもたちを導き、育むべき「先生」に、いま、何が起こっているのだろうか。元ラグビー日本代表で、神戸親和女子大学教授の平尾剛さんに聞いた。

 私が所属していた神戸製鋼ラグビー部は、自己主張が強い人たちばかりだった。国籍も経歴もさまざま。それでも、何度も日本一に輝いた。「これだけ『個』の集団でも1位になれるんだ」と実感した。大切なのは切り替えだと思う。

 練習ではボールを前方に落とす「ノックオン」一つとっても「お前のミスでチームが負けるんやぞ」とみんなの前でつるし上げられた。でも試合となると正反対。「気にするな。ええから次行け」って。

 プライベートとグラウンドの切り替えもあった。神鋼の先輩たちは練習後もむやみに引っ張り回すようなことはしなかった。目的意識を持った大人だった。私は寮で映画を見たり本を読んだりする時間を持ち、心を満たした。自尊心を保つことができた。

 人間が集まると価値観や意見の相違があるのは当たり前。ぶつかり合いながらも対立や分断が生まれないように踏みとどまり、チームづくりを目指す。まさにワールドカップ(W杯)で史上初の8強入りした日本代表が体現した「ワンチーム」だ。

 東須磨小の暴行・暴言にかかわった教員らは、対人関係をつくる点で未熟だったように思う。“チーム”の連帯感を得るため、いじめを用いる方法しか持ち合わせていなかったのかもしれない。

 私はスポーツからアカデミックな世界に飛び込み、当初は「スポーツ選手上がり」「経験者が経験を語っているだけ」と言われた。「俺は日本一、日本代表だった」というプライドを抑えるのがしんどかった。

 自分の価値観を書き換える作業には苦痛が伴う。それでもいろいろな人の話に、耳を傾ける姿勢が大切。時間をかけて学べばどこにいても花が咲く。先生には子どもにそのように教えてほしいし、自らもそうあってほしい。(聞き手・堀内達成)

     ◇     ◇ 【ひらお・つよし】1975年大阪府生まれ。同志社大卒。神戸製鋼などでプレーし、1999年W杯に出場。神戸親和女子大大学院修了。同大発達教育学部で教職課程科目を担当。