市長になるには選挙に1,000万円必要って本当?!選挙の立候補にかかるお金の話|選挙プランナーによる必勝講座【選挙ノウハウ】

選挙プランナー松田馨が、政治家を志して選挙に立候補することを考えている方や、現職の方に向けて選挙に勝つためのノウハウを解説していく『地方選挙 必勝講座』。今回はこれまで一番多く質問をいただいたテーマ「選挙費用」について解説します。選挙はいくら用意すれば戦えるのか? これから選挙を始めようという新人候補者の方は、特に参考にしていただければと思います。

また、今回の内容は多岐に渡るためスペースの関係上、本コラムにて全てを記すことは出来ませんでした。詳細は私が出版した選挙マニュアル本「フルカラー図解『地方選挙 必勝の手引』にて解説をしておりますので興味のある方は是非そちらも併せてご一読下さい。

選挙にはいくらお金がかかる?

選挙プランナーとしてよく聞かれる質問の一つが「選挙費用」です。しかし、一体いくらかかるのか?と聞かれても残念ながら即答はできません。なぜなら、選挙にかかる費用は選挙区や情勢によって大きく変動するからです。人口が5万人の市と40万人の市では、有権者数も世帯数も違います。何より、当選に必要な票数が違います。基本的には当選に必要な票数が多ければ多いほど、費用もかかると考えてください。ですから、一般的な市区町村議会議員選挙よりも、都道府県議会議員選挙の方が当選に必要な票数が多く、それに伴って費用もかかります。
それでは選挙費用の内訳を見てみましょう。

選挙費用の内訳

図1:出典:フルカラー図解『地方選挙 必勝の手引』p.35

【供託金】
まず必要になるのが供託金です。このお金は立候補届出前に預けなければならないため、選挙資金としては使えません。ですが、選挙での得票数が「供託金没収点」に達すれば返還されます。供託金没収点の計算は、選挙の種類によって異なりますが市議会議員選挙の場合は以下の計算式で求められるため、仮に有効投票総数が40,000票で、定数が25だった場合は、供託金没収点は160票となります。当選を目指して活動していれば、市議会議員選挙で供託金を没収されることはまずありません。

例)市議会議員選挙での供託金没収点
※選挙の種類によって計算式は異なります

図2:出典:フルカラー図解『地方選挙 必勝の手引』p.34

【印刷物】
選挙関連で最も費用がかかるのは印刷物です。市議選の場合、選挙運動期間中に使用できる印刷物とその活用法は以下の3つになります。

・選挙運動用ポスターの掲示
・選挙運動用ビラの頒布
・選挙運動用葉書の郵送

この内、ポスターとビラについては多くの自治体で公費負担という制度を活用することができます。これはポスターやビラの制作費を自治体が一定負担するという制度で、候補者の負担を抑えることができます。また葉書の郵送代は無料となります。

このように、選挙期間中に使用できる印刷物の費用負担はそれほど大きくはありません。ですが、選挙運動期間が始まる前の政治活動期間に使用する印刷物も必要となるため、この費用を捻出する必要があります。
名刺や後援会リーフレット、政策ビラ、他にもさまざまな印刷物があり、そのデザイン費や配布コストなどもかかります。これらのPRグッズは知名度アップに直接影響するため、限られた予算の中でもなるべく多めに配分したいところです。

【事務所・雑費】
地方議会議員選挙では、候補者の自宅を選挙事務所に設定することもありますが、人が集まって打ち合わせをして種々の活動をしていくため、自宅とは別に選挙事務所を借りるのが一般的です。賃貸契約にあたっては敷金礼金もかかってきますし、地域によっては駐車場が必須のため家賃とは別に駐車場代が必要な場合もありますので、一定の支出は覚悟してください。
また、机や椅子などの什器、コピー機、電話回線やFAXの設置、水道や電気などの費用や、ネット回線やモバイルWi-Fiの契約代、お茶やお茶菓子代といった雑費や郵送費、ミニ集会などを行う際の会場費も必要になります。

【選挙用品】
新人の方は用品類を自分で用意しなければなりません。街頭演説の際に使用する大型メガホンは高価ですが、大は小を兼ねますので、用意できるならできるだけ出力の大きいものを推奨します。街頭でのアイキャッチとなるのぼり旗や、スタッフが着用するイメージカラーのジャンパーやポロシャツ、後援会の立て看板なども必要になります。

【ネット選挙】
2013年のネット選挙解禁、2016年の18歳選挙権の実現、そしてスマートフォン利用者の増加によって、ネット選挙の重要性も年々高まっています。「ネットだけで勝てる」というのは幻想ですが、各種世論調査でも投票の際にネット上の情報を参考にしている層は確実に存在しています。よって、候補者のホームページは必須と考えられますので開設や運営のために予算が必要となります。

【選挙カー】
選挙期間中の7日間に最も活用することになる選挙カーは、自治体によって公費負担制度の有無や金額に差がありますが、基本的には車両のレンタル代、車上看板のデザイン代と音響設備の設置代などの自己負担が発生します。

【人件費】
告示前の政治活動期間中であれば、スタッフに人件費を支払うことができます。また、選挙運動期間中は選挙運動をする人に報酬を払ってはいけませんが、例外的に、選挙管理委員会に届出をした車上運動員(いわゆるウグイス嬢やカラスボーイ)や事務員、労務者には一定金額内で報酬を支払うことができます

試算してみよう

あなたが立候補を考える対象選挙の供託金等を確認し、以上の8項目の合計金額を試算してみて下さい。費用の目安が具体的にイメージできるはずです。

図3:出典:フルカラー図解『地方選挙 必勝の手引』p.37

もっと選挙費用を抑える方法は?

以上の通り、政治活動期間から選挙運動期間までの「選挙費用」で、公費負担分以外の金額を合計すると、それなりに大きな金額となります。当然、実際の選挙では情勢を見て、当選のために印刷物やネット選挙にもっと費用を使われる方もいらっしゃいますし、最小の自己資金で当選された方もいらっしゃいます。
選挙区や選挙区事情にもよりますが、選挙費用を抑えるためには様々なポイントがあります
具体的な内容になるため、ここでは割愛しますが詳細は選挙マニュアル本「フルカラー図解『地方選挙 必勝の手引』にて解説をしております。

後悔のない費用配分を

選挙費用を抑えるための工夫は様々ですが、候補者がホームページの作り方を勉強するようになったら本末転倒です。そんな時間があったら街頭へ出て、一人でも多くの有権者に直接会って、顔と名前を覚えていただく活動に時間を費やしましょう。プロへ外注すると費用はかかりますが、候補者やスタッフの時間を節約できますし、自分たちで作成するよりもクオリティの高いものが手に入ります。候補者の時間は何よりも大切な資源なのです。

また、選挙は何が起こるかわかりません。地方議会議員選挙では数票差で当落が分かれるケースが度々起こります。もし万が一、あなたが選挙カーを使用しなかったことで30万円を節約し、5票差で負けたらどうでしょう。ビラの配布を1回少なくして20万円を節約し、3票差で負けたらどうでしょうか。あなたの大切な選挙費用ですから、できるだけ無駄なことに遣わないように節約するのは大切なことです。しかし、もし僅かな差で落選した時に、後悔しないかどうかも考え合わせて、費用配分についてじっくり検討してみてください。

<関連記事>
選挙プランナーが手の内を全て明かした虎の巻『地方選挙 必勝の手引』の魅力に迫る【PR】
地方議会選挙はこう戦え!有権者全員に好かれなくていい?!|選挙プランナーによる必勝講座【選挙ノウハウ】
知らなかったでは済まされない「運動員買収」を徹底解説!|選挙プランナーによる必勝講座【選挙ノウハウ】
2019年3月解禁の証紙ビラで当落が変わる|選挙プランナーによる必勝講座【選挙ノウハウ】

© 選挙ドットコム株式会社