シャンパンタワーはいくらでできる? 歌舞伎町ホストクラブのお値段

10月25日、缶酎ハイ「カロリ。」(以下、カロリ)の販売終了が発表されました。販売元のサントリーのHPによると、「店頭から製品がなくなり次第販売終了となります」とのことです。

そこで私が思いを巡らすのは、歌舞伎町のホストクラブのことです。皆さんは、ホストクラブのドリンクメニューと聞くと、何を想像されますか? 高額なシャンパン「ドンペリ」あたりでしょうか? じゃあ逆に、一番安いドリンクメニューの定番は何だと思います?

そう、それがカロリなんです。


ホストクラブでは2本で3,000円

ホストクラブでのカロリの値段の相場は、2本で3,000円(TAXと呼ばれるサービス料金を計上した価格)です。この金額、皆さんはどう思われるでしょう? ホストクラブに馴染みのない私のような人間は驚き以外の何ものでもありません。

量販店では1本100円以下で販売されている

ゆえに、私はライフワークである歌舞伎町取材の中で、ホストクラブに通う女性たちと出会うと、彼女たちによく素朴な質問をぶつけてみます。

「ホストって高いでしょ? なのにどうして通うんですか?」

返ってくる答えは2つに大別できます。

一つは、「担当(指名しているホスト)に会うためには店に行くしかないから」というタイプ。もう一つは、「担当の売り上げに貢献したいから」というタイプ。

両者は、共に担当への恋心がホストクラブ通いの動機にこそなっていますが、その思考は大きく異なります。前者はなるべくお金は使いたくなく、できれば店には行かずに担当と会いたいと考えている。対して後者はむしろ店に行き、お金をたくさん使いたいと思っているからです。

私の頭の上にクエスチョンマークが浮かぶのはもちろん後者、貢献タイプのほうです。彼女たちの貢ぎの心理を考察してみましょう。

座って2、3万円かかる

心理考察の前に、まず、ホストクラブがいかにお金のかかる飲み屋なのか、その料金体系を具体的に確認しておきましょう。

どこの店も、新規客を取り込むために“初回”は安く設定(客引きを使うと3,000円以下)されていますが、“2回目以降”は次のようなシステムになります。

①セット料金/10,000円
②指名料/3,000~4,000円
③飲み物代/3,000円(缶酎ハイ『カロリ』)〜5,000万円(ブランデー『ブラックパール』)
④ TAX(サービス料+消費税)/50%

会計の仕方は「(①+②+③)×④」です。ざっくりとした支払い感覚を言うと、席に座って缶酎ハイを2杯飲んで2、3万円だと思ってもらえればいいかと。

また、定番有料サービスである「シャンパンコール」(通称、シャンコ)と「シャンパンタワー」(通称、タワー)についても言及しておきましょう。

シャンパンタワーのお値段

シャンパンコールは、自分の席にホストが何人も集まってきて囃し立ててくれる余興で、値段はだいたい1回5万円以上(のドリンク注文が必要)です。ちなみに、出勤中のホスト全員に集まってもらうことを「オール」と呼びますが、これは1回100万円以上(のドリンク注文が必要)です。

一方、シャンパンタワーのほうは皆さんもご存知でしょう。グラスを重ねて積み上げ、上からお酒を注ぐ例のアレです。料金相場は60万円以上。有名ホストROLANDが在籍するホスクラなんかだと150万円以上かかります。

店によって多少値段の違いはありますが、このあたりが一般的なホスクラの料金体系です。

いずれにせよ、本腰を入れて遊ぶとなると、とんでもなくお金がかかるのがホスクラです。普通のOLさんなんかでは、頻繁に通うのは収入的にまず厳しい。ゆえにホストクラブに頻繁に通えるのは、大富豪か、夜の仕事で荒稼ぎをしている女性です。

女性たちの心理

では、ホストクラブにハマる人たちがどのような人かが確認できたところで本題へ。彼女たちの貢ぎの心理について考えてみましょう。

さしあたり紹介したいのは、2人のエピソードです。

「ホストって高いでしょ? なのにどうして通うんですか?」

そう質問した私に対して、その一人の女性は”売上発表”の思い出を語ってくれました。どこのホストクラブでも毎月末、在籍ホストの月間売上げ発表を行っているのですが、彼女はある月末の店内で、担当と一緒に売上発表を聞いたことがあるんだといいます。

「ほんとにドキドキして。なんかお母さんみたいな気分というか。そしたら担当がナンバー(成績上位者)に入って。頑張って応援してよかった」

だからまたその興奮を味わいたくて、翌月も店に通ったんだそうです。

また、もう一人の女性はこんな話をしてくれました。「夜の仕事をしていると、社会との繋がりがなくなっていくような感覚があるんです」。聞けば、周囲に自分の仕事の話をできないこと、世間一般と金銭感覚や仕事感が違うこと、そういった要因によって疎外感を感じるとのことでした。

「社会との繋がりがないのって、かなり辛いですよ」

なので何だか寂しくて、自分を必要としてくれる担当に会いに行きたくなるんだそうです。

「お母さんみたいな気分」「社会との繋がりがない」。私は2人のこの言葉が、貢ぎの心理をよく現していると思います。

他人の評価に飢えている?

色眼鏡で見られることが多い夜の職業につく彼女たちは、人からの評価に飢えているんじゃないでしょうか。認めてもらいたいのに、それが叶わない。世間からの疎外感を感じながら繁華街を彷徨い、そしてたどり着くのが、自分の頑張りを褒めてもえる場所、ホストクラブなのでしょう。

必死に働き、稼いだ金をさっと貢いでしまう彼女たちの心境は、おそらくや子供に夢を託す母親の気持ちに近いような気がします。私は表舞台に立つことができなかったけど、アナタは頑張ってね、売れっ子になってね、一生懸命応援するから――。

この先、歌舞伎町の多くのホストクラブでは、カロリに代わる定番の缶酎ハイメニューが登場し、これまで同様に2本3,000円で提供されていくと思われます。そして彼女たちの店通いは、儚くも、しかし胸が張り裂けそうなほど熱く、これからも続いていく。夜の経済はつくづく奥が深いなと思います。

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