台風被害の箱根登山鉄道、全線再開は20年秋に

土砂崩れの影響で線路などが流失した現場=6日、箱根町

 台風19号による土砂崩れなどの影響で一部区間で運休が続く箱根登山鉄道は22日、全線の運転再開は2020年秋ごろになるとの見通しを明らかにした。線路が橋脚ごと流失した現場は軌道をずらして復旧し、斜面崩落を感知するセンサーを設置するなど安全対策も徹底する方針だ。箱根観光の主軸復活に約1年を要する形だが、同社は「早期復旧に向け、全力で取り組んでいく」としている。

 箱根町内に記録的豪雨をもたらした台風19号の影響で、同鉄道は箱根湯本-強羅間の約20カ所で倒木や土砂崩れなどの被害を受けた。中でも宮ノ下-小涌谷間では約100メートルにわたり斜面の土砂が崩れ、「蛇骨陸橋」の橋脚や橋桁の一部が約80メートルの線路とともに流失した。

 同社は流失現場の復旧について、現在の軌道を仮設ルートとして復旧させて来年秋にも運転を再開した上で、土砂崩れ被害を回避できる谷側に新たな橋を整備して本復旧を目指す方針。土砂崩れ防止策は国など関係機関と調整するとともに、センサーが危険を感知すると電車が緊急停止する安全対策なども施す。

 一方、被害が少なかった箱根湯本-大平台間の再開は「検討中」とするが、信号回路の変更などに時間を要するという。被害総額は「未定」とし、復旧費用は国などに支援を求めることも検討するとしている。

 復旧まで約1年を見込む理由について、同社の宮原賢一鉄道部長は「現地調査や専門家の所見で大きな損傷を受けた施設の状態が分かり、補修方法の目算がついた」と説明した。

 同鉄道の箱根湯本-強羅間は開通4年後の1923年、関東大震災の大規模な山崩れで全線にわたり線路が寸断。復旧には1年3カ月かかった。48年のアイオン台風でも橋脚が流されるなどの被害を受け、復旧まで約10カ月を要した。

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