今夏の「国内間移籍」が見事に成功しているJリーガー5名

シーズンも終盤を迎えている明治安田生命J1リーグ。

2019シーズンはその特長の1つとして、来年に自国開催のオリンピックが控えているため若手が出場機会を重要視したことと、海外からの日本の市場への関心が高まっていることで、夏のマーケットが例年より活発だったことが挙げられる。

海外移籍を発端とした国内間での玉突き移籍も多かった。開幕前から選手が多く入れ替わったチームもあり、今シーズンの選手名鑑は既に体を成していない。

しかし、移籍は必ずしも成功するとは限らず、加入直後に自身を欲した監督が解任されるなんて事態も特段珍しくない。そんなリスクが伴う中で、今シーズンの夏の国内間移籍が見事に成功している選手を取り上げる。

オ・ジェソク(FC東京)

シーズン序盤はスタメン出場も多かったが、チームが3バックに舵を切った影響で適性ポジションがなくなり、以降のリーグ戦で出番は0。ベンチに入ることすらできなくなっていた。

それでも7年目を迎えていたガンバ大阪を退団することは考えていなかったが、突如として舞い降りたFC東京からのオファー。誰よりも強いガンバ愛が故に即答することはできなかったが、国内三冠を達成したときの恩師からの誘いということもあり移籍を決断した。

東京では、離脱中の小川諒也に変わって主力に定着。強みである粘り強い対人守備を武器に、首位を走るチームを守備から支えている。

長谷川サッカーを熟知し、タイトルの獲り方を知る男の加入は非常に大きかった。

金井 貢史(サガン鳥栖)

昨シーズン途中に名古屋グランパスに加入してからは、直後にチームを7連勝に導くなど、大きな貢献を果たして主力に定着した。

しかし、今シーズンはリーグ屈指の実力者である吉田豊が移籍してきたことで出場機会が大幅に激減。FC東京から出場機会を求めて加入した太田宏介に押し出される形で、サガン鳥栖へ2年連続の夏移籍となった。

鳥栖ではすぐに出番を得ると、デビュー戦でロスタイムに勝ち越し弾をあげていきなりヒーローに。次の試合でもゴールを記録し、以降はすべての試合でスタメンを張っている。

第31節の松本山雅FC戦でも、残留争いのライバルから決勝弾を奪い、チームは残留に大きく前進した。ディフェンダーながら、ずば抜けた得点感覚に要注目である。

大久保 択生(清水エスパルス)

2年を過ごしたFC東京では出番が少なかったが、セカンドゴールキーパーとしてベンチに座らせておくのはもったいない能力を持っており、今シーズンから加入したサガン鳥栖では開幕からゴールマウスを守った。

しかし、チームとして結果が出ない中で、監督交代を機に控えへ降格。代わりに高丘陽平がスタメンを掴んだ。

そんな状況で、六反勇治を負傷とオーバートレーニング症候群の長期離脱で欠き、新守護神を探していた清水エスパルスが大久保に目を付け、指揮官と東京時代以来再び共闘することとなった。

清水では加入間もなくポジションを奪い出場を続けているが、チームの状況はかなり苦しい。失点が一向に減らないチームを自らの力で残留に導くことはできるか。

小泉 慶(鹿島アントラーズ)

昨シーズン移籍した柏レイソルでは、個人では2年連続となるJ2降格という憂き目に遭っった。

今シーズンは再出発を図るクラブと共にJ2での厳しい戦いに挑むことになったが、J2では反則級の戦力を擁すためボールと主導権を握る展開が多かったからか、ネルシーニョ監督から戦力として必要とされていなかった。

リーグ戦の出場は途中出場の1試合だけで、それも13分のみ。紅白戦から外されることもあった。そこで、主力の海外移籍に加え、怪我人も多かった鹿島アントラーズへ加入することになった。

チームとのプレースタイルの相性はもちろん、複数のポジションを担えることや、レオ・シルバとはアルビレックス新潟時代にコンビを組んでいたため連携に問題がない点など、非常にメリットの多い移籍となり、一定の出場機会を得て優勝を争うチームの力となっている。

飯倉 大樹(ヴィッセル神戸)

下部組織から横浜F・マリノス一筋だったが、この夏に別の港町への移籍を決断。朴一圭の加入によりベンチに座る機会が増えていた中で、ヴィッセル神戸と飯倉両者の思惑が一致した移籍となった。

GKに外国人枠を割く必要がなくなり、前任者のキム・スンギュよりポゼッションスタイルの素養は高く、この加入で神戸は2つの大きなメリットを得ることとなった。

また、3バックの左右が開き、最終ラインまで上がってきた飯倉と大崎玲央が並ぶ後ろ4枚でのビルドアップは、常に数的優位を維持でき、相手のプレスを混乱に陥れる。

戦力の大幅な上積みとなったトーマス・フェルマーレンと酒井高徳の加入も大きかったが、戦術の幅を広げたという意味では、飯倉の加入の効果は計り知れない。

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