20年後の「サザエさん」で鈴木雅之監督が描いた変わらぬ家族の絆「茶の間のたわいもない会話こそがエネルギー」

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20年後の「サザエさん」で鈴木雅之監督が描いた変わらぬ家族の絆「茶の間のたわいもない会話こそがエネルギー」

今年10月に放送50周年を迎えたアニメ「サザエさん」(フジテレビ系)。11月24日には、天海祐希主演でサザエさん一家の20年後を描くSPドラマ「磯野家の人々~20年後のサザエさん~」が放送される。

31歳のカツオ(濱田岳)は野球選手、漫画家など、夢見ては挫折するのを繰り返し、今は商店街の洋食店でシェフをしている。しかし、経営がうまくいかず幾度目かの挫折の危機に直面。29歳のワカメ(松岡茉優)はアパレル関係のデザイナーをやっているが、なかなか自分のデザインが採用されず悩んでいる。23歳のタラオ(成田凌)は就職活動中だが、やりたいことが見つからず面接で玉砕する日々。また、74歳の波平(伊武雅刀)は定年退職を迎えて時間の余裕ができ、カツオたちの将来を今まで以上に案ずる一方、距離感の取り方が分からず、歯がゆい思いを抱えている。そんな夫・波平と磯野家の人々の姿を70(?)歳のフネ(市毛良枝)は温かな表情で見守る。48歳のマスオ(西島秀俊)は出世したものの、中間管理職として板ばさみの会社員生活を過ごしている。そんな中、もやもやとした曇り空模様の磯野家に、明るい太陽のような笑顔を取り戻そうと、44歳のサザエ(天海)が奮起。「盆踊り大会に家族みんなで集合!」と呼びかけるが、天気予報によると急に発生した嵐が近づいてきており…。果たして、サザエは磯野家に太陽を照らすことができるのか。

このたび、本作の演出を手掛けた鈴木雅之監督を直撃。「ショムニ」や「HERO」(ともに同系)など、数々の名作を残してきた鈴木監督から、本作への思いを聞いた。

──まず、この作品はどのような思いで作られたのでしょうか?

「これまで何度もドラマ化されていますし、そして50年の歴史がある上に今もなお毎週放送されていて…と、多くの人に愛されている作品なので、最初は私なんかが手を出していいのかとさえ思いました。でも20年後の設定だったら、アニメのモチーフを保ちつつも違う取り組みができるのではないかと思ったので、アニメでは取り組まれていない部分も描くことにしました」

──具体的には、どんな部分でしょうか?

「人々の寂しさや切なさですね。アニメの全てを踏襲するのではなくて、このドラマではそれぞれが切なさを抱えています。けれど、家族で集まったらまた前向きに頑張れるんじゃないかという思いを込めて作りました。もちろん、それぞれのキャラの空気感をアニメからいただいてくることは忘れずに」

──視聴者の皆さんも各キャラクターのイメージは強く持っていると思います。監督は、天海さん演じるサザエさんにどのような印象を抱かれましたか?

「天海さんとは初めてだったのですが、“女優さんだな!”という感じがしましたね。サザエさんはほんわかした雰囲気があるので、強い女のイメージを持つ天海さんだと“サザエさんにしてはカッコよすぎるかな”なんて思っていたのですが、表情がすごく柔らかくて。意外でした。天海さん自身もポイントを絞って役作りをされていた印象を受けましたね」

──キャスティングもすごく豪華ですよね。

「すごくいいキャスティングだと思わないですか?(笑)。西島さんとは一度一緒に仕事をしてみたかったんですが、まさか『サザエさん』で一緒になるとは思いませんでした。成田くんは若いですけど、やっていてこちらがワクワクするようなお芝居をしていて。ファミリーで知っているのは、30年ぶりにご一緒した伊武さんと岳だけだったんですよね。ほとんど知らない方なのに、キャスティングが決まった時に“この人たちとできるんだ”と思うと、うれしかったです」

──役作りではどのようなことを指示なさったのでしょうか?

「初めは『アニメのキャラにそこまで寄せる必要はないですよ』と言っていたのですが、彼らはキャラクターを遠くの方に置きつつも、きちんと意識して芝居をしていました。例えば“これはカツオからインスパイアされたんだろうな”とか“マスオさんのここにこだわってきたな”とか“サザエさんのこの形をやりたかったんだろうな”と、見ているとそういう部分が浮かんできて面白かったですね。アニメのキャラクターをそれぞれ自分自身の役柄の20年前だと思って芝居をしているようでした」

──役者の皆さんとどのような会話をされましたか?

「例えば天海さんと『サザエさんってこういう形で手を振るよね』とか、西島さんとはマスオさんの特徴的な『ええっ!』をどうやって言おうかと相談したり、松岡さんとは『ワカメちゃんならこんな時どうするだろう』と考えたりしました。タラちゃんはすごくキャラが強いわけではないけど、原作からニュアンスを引っ張り出してくるんですよ。『カツオってどういう人?』と聞かれても言葉で説明しづらいと思うんですけど、なんとなく何か感じることを役の中に入れていくんです。役者の皆さんが、材料となる原作から何かをもらってこようとしている姿が面白かったです」

──桜田ひよりさん演じるタラオの妹・ヒトデは、磯野家の中で唯一視聴者も知らないキャラクターですよね。桜田さんにはどのような印象を抱かれましたか?

「桜田さんは編集をしていて“この子すごいな”と思いましたね。反抗期のヒトデは、サザエさんのことを嫌いになるかもしれない初めての人なわけじゃないですか。そういうところをきっかけに人物像を作り上げました。本当は母のことが好きだけど反抗期でうまく伝えられない、でも大好きにはならない、という芝居の度合いが上手だなと感心しました」

──では、アニメのイメージを保ったまま20年後を描いていく中で、こだわったことはありますか?

「まずは磯野家を再現することに注力しました。間取りは変えたくないのでセットを組んで撮影したんですけど、あの平屋の一軒家ってどこかノスタルジックじゃないですか。でも、ワカメが勤めるのはバリバリの都会…。家に向かってだんだんノスタルジックさが出るようにきちんと作ろうと思いました。サザエさんが駆け抜ける商店街も、実際の商店街でやらせていただいたんですが、大変でしたね」

──サザエさんが町の人から愛されていることが分かる重要なシーンですよね。

「サブちゃん(勝俣州和)がいたりとかね。家が一番ノスタルジックな場所だとすると、次に商店街、そしてだんだん現代になっていく…というように見てほしいなと思います」

──作中では、カツオたち若者が自分の進むべき道を迷う一方で、オリジナルキャラクターのヒラマサさん(佐戸井けん太)のように何かを成し遂げる人物も描かれていました。

「子どもから大人になった彼らに降りかかっている問題って、きっと誰にでもありますよね。特殊でもなんでもなくて。その悩みに対して周りの大人たち…例えばヒラマサさんが、自分の仕事をどれだけ好きなのかということを伝えるんです。それがカツオやタラちゃんに響いてくるのですが、彼は“あんなふうに思えたらいいな”と思われる存在として登場しています。悩みから立ち直るという意味では、家族の場面が重要で。彼らは外に出てそれぞれいろんなものと戦って、打ちのめされているじゃないですか。けれど、家族の元に戻ってきて『大変だったね』とかそんな会話は交わさないものの、茶の間で遠慮もなしに、たわいもない話をしていくんです。そんな夜があって、朝起きると“よし、また頑張ろう”と思えるような家族を描きました」

──監督が一番伝えたいところでしょうか。

「そうですね。それぞれ大人になって厳しい世の中に出て行くんですけど、戻って来るとみんなでパーっとしゃべってご飯を食べる…。本作のベースとしてはやはり“家族”があると思います。いいですよね、そんな家族があったら。きっと家族が彼らのエネルギーになっているのだと思います」

──ありがとうございました!

【番組情報】


__フジテレビ開局60周年記念
アニメ「サザエさん」放送50周年記念スペシャル企画「磯野家の人々~20年後のサザエさん~」__
フジテレビ系
11月24日 午後8:00~9:54

取材・文/藤田真由香(フジテレビ担当)