やってはいけない闇バイト、海外電話の「かけ子募集」に電話をかけてみると

タイやフィリピンから詐欺の電話をかけていた大規模なグループが11月13日、摘発されました。

どのようにして詐欺組織に引き込まれるのでしょうか。知人からの紹介もありますが、お金に困った人たちが、SNSや掲示板などの闇バイトを見て加担するケースも多くみられます。実際に電話をかけて、その実態に迫ります。


詐欺だと自ら認める

詐欺の被害は、なかなか減りませんが、これは、詐欺行為に加担する人が後を絶たないことが大きいでしょう。今、SNSの書き込みやネットの闇サイトの掲示板には、様々な高額収入を謳う怪しげな募集が載っています。いわゆる闇バイトといわれるものです。

あるテレビ番組にて、私も同席・監修しながら、芸人さんに電話をかけてもらいました。

掲示板にはいろんなものがあります。「全額日払い、高収入。すぐに仕事に入れます」「月50~100万円。やる気のある方、ご連絡ください」「ほぼノーリスクの仕事です」一見しただけでは、どんな仕事なのか、よくわかりません。

その中でも、とくに目を引いたのが、「海外での仕事になります。月に最低保証付きで最大300(万円)は稼いでいます。費用は掛かりません。日払い30万以上! 月収300万円以上可能! お金困っている方は気軽に問い合わせてください」とあります。メールで連絡をとると、非通知で電話がかかってきました。

相手は中年男性の声でした。「どんな仕事なのですか?」と尋ねると、最初は「電話での勧誘です」とのみ答えます。さらに「何の勧誘ですか?」と突っ込むと、男は「それは、クレジットやキャッシュカードになりますね」と言いいます。クレジットカードの勧誘電話をかける仕事なのでしょうか?

それにしても、高額な報酬過ぎます。その辺りを探ってもらおうと、芸人さんにメモ紙で指示を出そうとすると、相手の男はそれを察したように「はっきりいって、これは詐欺です。詐欺」と開き直ったように言い出しました。「年配の人から、キャッシュカードを騙しとって、それを引き出す仕事ですよ!」さらに「まず大手デパートのTやMの人間として、電話をしてもらう仕事です」とも言います。

デパート店員になりすまして電話

これは、このところ被害の多い手口で、デパート店員になりすました人物が「あなたの名義のカードで、ブランド品を購入しようとした人がいました」と、ウソの電話をかけます。本人は「身に覚えがありません」と答えます。すると「あなたの個人情報が悪用されて、勝手にクレジットカードを作られたようです。カードは使用停止にします」と言われます。安心したところに、詐欺師は畳みかけます。

「銀行のキャッシュカードも不正に作られて、お金が引き出されている可能性があります。確認しておいた方がよいですよ」と相手から言われ、不安になった人が、教えられた全国銀行協会の電話番号に電話をします。銀行協会は実在しますが、電話番号は詐欺師たちに通じる嘘の番号です。そこで、「残高照会のため」「本人確認のため」などという口実で、暗証番号を聞き出されます。詐欺師は「お金は引き出されていませんが、念のため、キャッシュカードを作り直しましょう」と言ってきます。これに同意をしてしまうと「古いカードと交換するために」という口実で、偽の銀行関係者が家を訪ね来て、カードを騙しとられてしまいます。

どうやら、今回は、この詐欺電話をかける仕事のようです。

発信元は中国・延安

「すぐに、仕事はできるものですか?」と尋ねると、「これは慣れだよ。1日、2日電話をすれば、慣れてくる」と答えます。男はさらに、「キャッシュカードを騙し取るマニュアルを読んで、10時~17時まで、名簿を見みながら電話をかけるんだ。騙せる人に会えない時は、何百人に電話をかけることもあるよ」と、悪びれることなく、話します。

どこで電話をかけるのかを尋ねると、「中国の延吉といって、北の方だね。隣が北朝鮮」今、男が電話をかけているのも、その場所からだといいます。男は「日本はダメだね、捕まってしまうから。中国から電話をかけている分には、証拠が残らないから」と話を続けます。

あくまでも男の言い分ですが、中国から電話をかけても、いろんな国の基地局を経由して日本に電話がつながるようになっているので、発信地を特定されにくくなるということです。「日本はだめだ」、男がそういった理由には、2016年12月施行された通信傍受法の改正があるかもしれません。

これまで、電話の会話やメールが傍受できるものは、薬物や銃器などの犯罪に限られていましたが、その対象が広がり、組織的犯罪の振り込め詐欺にも適用されるようになりました。これにより、詐欺事件が摘発された事例もあります。それゆえ、日本の捜査が及ばない国外から詐欺電話をかけて、摘発を逃れようとしているといえます。

報酬の受け取り方について尋ねると、「月に70万~100万円を稼げる。銀行振り込みでもいいけど、足がつく可能性があるので、円ではなく、中国の元でお金を受け取る人が多いよ」と言います。「いつから、電話をかけているのですか?」と尋ねると、半年前に掲示板を見て、中国にきていると答えました。「君は、やるの? やらないの?」「ここにいる中国人のボスは気が短いからね。仕事をするなら、すぐに決めた方が良いよ」などと言います。

ここからみえてくるのは、“日中が組んで”詐欺を行っている実情です。今年、タイやフィリピンから詐欺の電話をかけていた大規模なグループも摘発されましたが、今は国内からだけでなく、海外のいたるところに拠点を置いて、電話をかけているのです。

海外でも、結局は捕まる

しかし断っておきたいのは、こうした電話をかける架け子にせよ、詐欺のお金を受け取る受け子にせよ、結局は捕まるということです。

この中国のグループは、帰国後、続々と、メンバーらが逮捕されています。その規模は、50人と言われており、タイのグループよりも大掛かりな組織といえるかもしれません。この間も、フィリピンで詐欺の電話をかけていたグループ36人も摘発されています。海外だから、悪事がばれず、捕まらないということはありません。

お金に困っているからといって、安易な気持ちで闇バイトの誘いに乗ってしまうと、一生、後悔することになりますので、絶対にやってはいけません。

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