読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、「貯めるよりも増やした方がいい」というアラサー独身女性。手取りの3割を投資に回し、家計は毎月赤字です。家計再生コンサルタントの横山光昭氏が運営する『マイエフピー』のFPがお答えします。
社会人8年目の独身女性です。お金は貯めるよりも増やしたほうがよいと考えています。今も、貯金よりも会社の持ち株と株式投資にお金を回しています。
投資は分散投資がよいと思いながらも、持ち株だと投資額に10%上乗せをして買ってもらえるので、これでいいかと思っています。また、株式投資では、30万円ほどマイナスになっていますが、損切りできないで保有したままです。
今、働きながら大学院に通い、キャリアアップを図っています。終了まで、あと130万円ほどかかる見込みです。それとともに、結婚も考え始めました。私の年収は約550万円、彼は400万円ほどのようですが、今後に向けお金に対する考え方や家計状況など見直していく必要はあるでしょうか。お稽古は絶対やめられないので支出を減らす対象にはできず、通うための交通費も減らせません。
将来的な希望としては、結婚式は小規模でも挙げられたらと思っています。その後は、子どもは二人欲しいと考えており、いろいろなことを体験させたり、塾も習い事もさせてあげたいと思っています。旅行にも連れていきたいです。マイホームは特に欲しいとは思っていません。
〈相談者プロフィール〉
・女性、29歳、未婚
・職業:会社員
・毎月の手取り金額:19.2万円
(税・社保のほか社宅家賃1.8万円天引き後)
・年間の手取りボーナス額:95万円
【現在の資産状況】
・貯蓄:210万円
・株式投資:100万円
・持ち株:320万円
【支出の内訳(23.3万円)】
・住居費:0(社宅のため給与天引き)
・食費:4.8万円(外食費込み)
・水道光熱費:0.7万円
・生命保険料:0.1万円
・交通費:2.5万円
・通信費:0.4万円
・交際費:2万円
・被服費:1万円
・美容費:1.8万円
・趣味・習い事費:1.2万円
・その他:2.8万円(奨学金の返済、新聞ほか)
・投資:6万円
FP:家計の改善が必要かどうか、ということですね。収支の状況を見ていると、支出や投資の影響で毎月赤字のやりくりになっています。ここは、改善したほうが良い点です。
生活費は収入内なのに、投資で大幅に赤字に
ボーナスからは余剰が出ているようですので、年間で見ると収支は黒字。ですが毎月で見ると、生活費自体は収入内でやりくりできているのに、投資額の負担が大きく、4万円ほどの赤字になっています。そのため、おそらくボーナスから補てんされていて、ボーナスが入っても全額自由には使えない状態ではないかと思います。
今はこの状態でもなんとかなっているのかもしれませんが、ご結婚後まで長期間続いてしまうと、支出のコントロールが難しくなることもあります。できるだけ支出は月の収入の中に収めるという習慣を作るほうが良いと思います。
今できることは、毎月の支出の中から削減できる部分を削減していくことと、投資額を減額することのどちらか、もしくは両方です。別な考え方としては、投資は毎月の収入から出さず、ボーナスの中から予算を作り、投資に充てていくという方法もありますが、これにはきちんと貯金があることが条件となります。
生きていく中では、突発的にお金のかかる出来事が生じることがあります。これから学費で大きなお金が出ていく予定の中、おそらく学費に付随した支出もあることでしょう。そのような中で、お金のかかる出来事が起きてしまえば、現金不足で対応できないということも起こりかねないのです。
こう考えると、相談者さんはまだ「生活を防衛するための預金」ができていないため、今後のご結婚の予定を考えても、投資を優先的に考えるよりは、しっかりと貯金を作ることが必要だと言えます。
生活防衛資金は7.5ヵ月分、投資分は含まずに
漠然と貯金を作りなさいという話をしましたが、では、いくらあると良いでしょうか。
基本的に、お金は3つに分けて準備しておく必要があると考えています。
まず、毎月の生活をきちんと営むためのお金。「使う」ための括りです。これは毎月の生活費の1.5ヵ月分あるとよいと思います。なぜ0.5ヵ月分多く設定するのかというと、毎月必要ではないけれど、イレギュラーな支出があった時にも、貯金を下ろさず安定した暮らしができる金額だろうと考えたゆとり分です。このお金ができた後、貯めるお金を作ります。
この「貯める」は、前述した“生活防衛資金”部分です。最低限6ヵ月分があれば、万が一収入が途絶えることがあっても立て直すまでの期間、対応できるのではないかと思います。これだけでは不安な場合は、8ヵ月分でも1年分でもいいです。教育費や結婚資金といった目的のある資金は、これとは別に貯めていくことが必要です。
以上から、相談者さんに必要な生活防衛資金+生活費部分として、最低限生活費の7.5ヵ月分、つまり1ヵ月の純粋な生活費は17万円ほどですから、127万円ほどの現金が常に銀行口座などにある状況を作っておく必要があります。そのうえで、結婚資金を準備してください。
こう考えると、今後学費で最低130万円は支出するので、現金は少し足りないですね。投資分があるからよいと思われる方もいますが、投資は相談者さんの株式投資のように、売ると損失が確定してしまうという状況も起こり得ます。万が一の時に売ってしまうと大きく損をすることがあるので、生活防衛資金としては適しません。
投資をするなら「投資信託」をおすすめする理由
会社の持ち株を購入している人は多いですね。10%上乗せなどメリットも大きいですし、自分の会社ですから、株を持っていたいと思う人もいるようです。
ただ株価は、個別株同様に動き、業績により大きく変動することもあるでしょう。つまり、個別株を保有していることと同じなのです。自社の株は優遇されているからというところだけを見て、この点を忘れてしまう人が多いものです。
長期的に資産を増やしたいと考えるのであれば、相談者さんご自身も理解されているように、分散投資で、長期的に保有できる投資をしたほうがよいと思います。投資信託などで投資をすると、簡単に分散投資ができるうえ、複利の効果で長く持てば持つほど資産を増やせる可能性があります。20代の相談者さんであれば、効果を十分に期待できるでしょう。
株式投資では、配当金で資産を増やせる可能性がありますが、分散投資をするにはかなりのお金がかかります。そうであれば、投資信託に変えてみても良いと思います。ただ、投資の効果が出るには数年単位という時間がかかるので、株式投資ほどの面白みは感じられないでしょう。その分、ある程度放っておけるということも、働く人、これから育児などで時間がなくなる予定の人には良いのではないかと思います。
持ち株は、退職まで社員が自由に売ることができないというケースが多いので、売却までは考えなくいてもいいと思いますが、毎月の購入金額を減らす、または持ち株会の継続を検討するということはできそうです。
投資との付き合い方はいろいろな考え方がありますから、ご自分は今後どうしていきたいかを改めて考えてみてもよいですね。