【MLB】大谷翔平がイチロー氏から得た「自信」 草野球“初対戦”は「恐れ多いです」

単独インタビューに応じたエンゼルス・大谷翔平【写真:小倉元司】

大谷インタビュー第2弾、イチロー氏から「自分のポテンシャル、持っている物、日本でやってきたことを信じて」

 エンゼルス・大谷翔平投手のインタビュー第2弾は、今季限りで現役引退した憧れのイチロー氏(現マリナーズ会長付き特別補佐兼インストラクター)について。一時帰国した23日に都内のスポーツ用品大手「デサント」東京オフィスで取材に応じた25歳は今オフに草野球デビューするイチロー氏との将来的な“初対戦”には「恐れ多いです」としたものの、レジェンドから学んだことを打ち明けた。また、日本人最速165キロの更新への意欲を見せるなど大いに語った。

――今年の野球界の大きな話題の1つはイチローさんが現役引退したこと。イチローさんから引退会見で「世界一にならないといけない選手」とゲキを送られた。

「イチローさんが質問されたから言っただけでね。1人のファンからしたら『そういうことは聞かなくていいのにな』と思いましたけど。答えていただいて、ありがたいなという気持ちはあります。イチローさんから勉強になることもたくさんありますし、そうコメントしてもらえるだけでもありがたいなと思います」

――メジャー1年目のスプリングトレーニング中に自宅で打撃指導を受けた。イチローさんから学んで今に生きていることは。

「技術的な話は色々あると思う。『もっと自分を信じて』というか、『自分のポテンシャル、持っている物、日本でやってきたことを信じてやっていくのが大事』とおっしゃってもらった。それを誰が言うかが大事だと思うんです。イチローさんに言ってもらうのか、僕の父が言うのか。それは大きな違いなので。同じ言葉ですけど、とらえる側としては全く別物というか。どちらがいいかというのではなくて。イチローさんに言ってもらえるのは日本の野球選手からしたら、ないことだと思う。それは自信になりましたね」

――実際に会って野球の話をしたのは1年目のスプリングトレーニングだけか。

「今年、マリナーズは日本開幕戦だったのでスプリングトレーニングも早かった。(調整の)ペースも全然違ったので、実際に家に行ったりとかは今年はなかったです。僕も(右肘の)リハビリでバットを振れる状態でもなかったですし、まだティー打撃をやったりとかだったので(会う機会はなかった)。去年のオフに会ったりはしましたけど、挨拶をさせてもらっただけです。神戸へ仕事で行った時に、(イチローさんが)ほっともっと(フィールド神戸)でやっていたので、挨拶に行っただけです」

――イチローさんは12月に草野球デビューする。もし誘われたら……。

「僕はできないですよ。はい」

――イチローさんは引退会見で「対戦したかったですけど。できれば僕ピッチャー、翔平バッターでやりたかったです」と話していた。

「……恐れ多いです」

単独インタビューに応じたエンゼルス・大谷翔平【写真:小倉元司】

右肘のトミー・ジョン手術明け、投手復帰1年目へ「不安よりは早く戻りたい気持ちが強い」

――現在のリハビリの状況は。11月中旬にエプラーGMはキャッチボールで150フィート(約45.7メートル)を投げていると話していた。

「だいぶやれることは増えましたね。ランニングは今日も帰ってからやりますし、有酸素運動もできるようになっている。下半身はほぼ問題ないんじゃないかなと思いますね。あとはブルペンで投げてという感じじゃないかなと。1回、12月、1月ぐらいで(リハビリが)1回切れると思うので、そこまでしっかり上げて」

――痛み、違和感はまったくないか。

「そうですね。強度が上がればもちろん、張りとかは出ますけど。筋トレとかもそうですけど、普通のことなので。打者に投げるまで続くんじゃないかと。それだけ強度が上がるので。ブルペンで思い切り投げるのと、打者に思い切り投げるのは違いますし、それはその都度その都度(で張りが出るん)じゃないかなと思います」

――ブルペンでの投球を再渡米後に再開する。どのくらいのペースで行うのか。

「1日置きぐらいで投げると思います。(まだ具体的なメニューは)何も言われてないです」

――リハビリをやっている中で球速が戻らないなど不安はあるか。

「どうですかね。不安よりかは早く戻りたいなという気持ちが強いと思います。どのレベルで戻るということではなくて、まず戻ってから。そこで出る課題が大事だと思う」

――むしろ楽しみが大きいか。

「不安はもちろんありますけど、早くやってみたいなと。楽しみとかでなくて。楽しいかも分からないし、楽しくないかも分からないですが、やっぱり試合で投げてからだと思う。そこまで(状態を)早く持っていきたいなという気持ちが強いかなと思います」

ベストを出すための右肘手術、日本人最速165キロ更新の「可能性は出てくる」

――右肘のトミー・ジョン手術をした際にベストパフォーマンスを出すためと話していた。日本ハム時代には最速165キロを記録。その上を目指していくか。

「それだけ思い切り腕が振れれば、その可能性は出てくるんじゃないかなと思いますけど、まずは投手としての純度を高めていく。球速もそうですし、コマンド(制球力)もそうですし、オフスピードのボールもそう。全体的なトータルのバランスも。ゲームで抑えられるレベルに戻していって、(最高球速更新は)その先じゃないかなと思います。僕の1番の持ち味は真っ直ぐなので、そこを伸ばしていくのか、またはウィークポイントを潰していくのか。そこ(の選択)は試合で出た課題によるんじゃないかと思います」

――今季中のキャッチボールではテークバック時に右手を早く上げて肘の負担のかからない投げ方のように見えた。手術前と投球フォームを変化させたか。

「色々と試したりはしてますね。今だからこそできることはあると思います。こういう投げ方は次の日に(肩肘が)張るなとか、こういう投げ方は負担がかからないなとか。健康な状態だったら分からない。どの投げ方でも変わらないように感じたりするので。今のうちに効率的に投げられる、負担のかからないように投げられる。ベストなポジションを探っていくのは大事と思います」

――投球フォームの具体的な変化とは。

「(右腕を)どういうルートで上げていくのか。上げていくことばかりを考えても良くなかったりするので。自然とそのルートに入っていったりとか、じゃないかなと思います」

――今季終了前に左膝を手術した。やはり来季の開幕戦(現地時間3月26日の敵地アストロズ戦)に投打でプレーできるのが目標か。

「そうですね。たぶん今年はイニング数とか1試合の投球数、シーズントータルの投球数とか(が制限される)。1年の投球数はリハビリの過程で決まっていると思う。1シーズンを通して分けるのか。それとも、ある程度、ポストシーズンを想定して後半にずらしていくのか。それはチームの監督とGM次第なので。それ通りに従いたいなと思っています。投げられないとしても打者として出るので、そこで頑張りたいなと思っています」

――選手としては開幕から出たいのでは。

「開幕から出たいなというよりは来シーズン、(シーズン総イニング数が)100イニングか150イニングか分からないですけど、例えば100イニングだったら、それを全うしたいなと思いますね。早くやって(シーズンで)90イニングしか投げられなかったということがないように、できればしたいなと思いますね」(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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