FA市場の目玉野手・レンドン データが示す驚異の安定性

「Expected Batting Average(期待される打率:略称xBA)」という数値がある。これは打球の初速度、打球の発射角度、打球のタイプ(ゴロ、フライなど)、打者のスプリントスピードなどをもとにしてその打球がヒットになる確率を算出し、それにもとづいた打率のことである。今オフのフリーエージェント市場の目玉野手であるアンソニー・レンドンは、このxBAに関して球界最高級の安定性を誇っており、フリーエージェント市場で安定性を買いたい球団にとっては唯一無二の存在となっている。

通常、打率とxBAには程度の差はあるものの、乖離が発生するのが一般的である。たとえば、スクーター・ジェネットは2018年の打率.310に対してxBAは.259だったが、今季は.226まで打率を落とした。ジョーイ・ウェンドルも2018年は打率.300、xBA.263で今季は打率.231に終わり、アルバート・アルモーラJr.も2018年の打率.286、xBA.254から今季は打率.236へと成績を悪化させた。要するに、xBAよりも打率のほうが極端に高い選手は、本来アウトになるはずの打球がヒットとなる幸運に恵まれていた可能性が高く、翌年は成績を悪化させる傾向があるのだ。

では、レンドンはどうなのか。今季は打率.319をマークしたレンドンだが、xBAも打率と全く同じ.319を記録。昨季も打率.308に対してxBA.307をマークし、打率とxBAの差が.001以内だった選手は2年連続でレンドンしかいなかった。しかも、レンドンは打率.215の選手がxBA.215を記録しているわけではなく、3割を超えるレベルでこの安定性を実現している。つまり、ハイレベルで安定した選手であると言える。しかも、今季に関しては、長打率.598に対し、xBAと同様にして算出される「期待される長打率」も.599と限りなく一致していた。

これは、レンドンの広角に打球を打ち分ける技術により、相手チームがめったに守備シフトを敷かないことが影響していると見られる。今季、レンドンは全打席のうち7%しか守備シフトを敷かれなかったが、これは500打席以上の打者114人のなかで90番目の数字だった。守備シフトを敷かれないことにより、ヒットになるべき打球がしっかりヒットとなっているというわけだ。

また、2017年から3年連続で打率.300以上かつ長打率.530以上を記録している打者はメジャー全体でレンドンだけ。3年連続40二塁打以上はレンドンのほかに、フランシスコ・リンドーアとムーキー・ベッツしかいない。さらに、3年連続三振率14%以下はレンドン、ユリ・グリエル、ホゼ・ラミレスの3人だけである。

今季のレンドンは、三振率13.3%、ハードヒット率46.6%を記録したが、これより低い三振率かつ高いハードヒット率を記録した打者は皆無。2018年も同様で、三振率がレンドンの13.7%より低く、ハードヒット率がレンドンの44.6%より高い打者はいなかった。今オフのフリーエージェント市場における最高の野手と評価されるレンドンだが、それにはしっかりとしたデータの裏付けがあるのだ。

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