柔道 女子最重量級で柔よく剛を制す 素根輝が掴んだ小さな体に大きな夢

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女子78kg超級 表彰式 Photo:Itaru Chiba

『柔道グランドスラム大阪2019』大会第3日(11月24日・丸善インテックアリーナ大阪)。女子78キロ超級の素根輝(環太平洋大)は決勝でオルティス(キューバ)をゴールデンスコアに持ち込む熱戦の中、大内刈で撃破。昨年に続いてグランドスラム大阪(以下GS大阪)を制するとともに、全日本柔道連盟の強化委員会の審議で満場一致で柔道の五輪代表に内定した。

知っての通り、素根は女子最重量級で闘う身ながら、身長は162cmと78キロ超級の強化選手の中でも下から2番目に背が低い。しかしながら無類のスタミナと技のキレを武器に日本代表の座を射止めた。

決勝ではオルティスに奥襟をもたれる場面もあったが、臆することなく相手の釣手を切り、試合の流れをたぐり寄せた。

先の世界選手権決勝ではオルティスに奥襟をもたれ「指導」を受けている。わすが3カ月の間に素根は同選手権で得た反省を糧に組手を進化させたということだろうか。

素根とオルティス 抱き合い互いに健闘を称える Photo:Itaru Chiba

柔道には″柔よく剛を制す″という言葉がある。相手の力を利用して小さい者が大きい者を泣け飛ばすという意味だ。素根の戦い方はまさにそうだろう。この日も大きな対戦相手に対して、2回戦は体落、続く準々決勝は大内刈を決めて勝ち上がった。女子最重量級で柔よく剛を制すを具現化させた闘いが見られるとは夢にも思わなかった。

試合後行なわれた会見で素根は時にはニッコリと笑いながら決勝を振り返った。

「今大会で優勝して東京五輪(内定)を決めることを目標にずっと練習に取り組んできたので、今回優勝することができてよかった」

大会初日には同じく代表内定に王手をかけていた同い年の女子52キロ級阿部詩(日体大)や丸山城志郎(ミキハウス)がそれぞれ決勝で敗北。内定まで届かなかったので、素根が重圧を感じなかったといえば嘘になる。

だからこそ内定のことはあまり意識せず大会に臨んだという。

「ひとつの大会で優勝するという気持ちで、挑戦者の気持ちを持って臨みました。本当にホッとした気持ちと代表になって良かったなという気持ちがあります」

最後まで代表の座を争った朝比奈沙羅(パーク24)は準々決勝でまさかの一本負け。日本人同士による決勝は実現しなかったが、素根は国内のライバルに感謝することも忘れなかった。

素根がオルティスとの熱戦を制し金メダル Photo:Itaru Chiba

「朝比奈さん倒さないと五輪は絶対になかった。朝比奈さんにまずは勝てるようにずっと追いかけていた。やっぱり朝比奈さんがいたから自分もここまで強くなれたと思う」

そして、いつも素根の練習相手を務め、試合直前にも背中を叩いてもらい気合を入れてもらっていた兄・勝さんについても言及した。

「お兄ちゃんと一緒に練習するようになってから勝てない時もきつい時も一緒にいろいろ考えながら乗り切ってきた。本当に感謝しかない」

東京オリンピックについて訊かれると、素根はハッキリと答えた。

「自分は東京五輪に出て必ず金メダルを獲るという気持ちで取り組んできた。東京は苦しい戦いばかりだと思うけど必ず優勝したい」

今回の代表内定を受け、12月のワールドマスターズ出場は回避。早ければ、来年2月か5月の大会でオリンピックに向けての試運転をする予定。オリンピックの78キロ超級で日本代表の優勝は2004年アテネ大会の塚田真希の一例しかない。16年ぶりに素根は快挙を成し遂げることができるか。

文=フリーライター・布施鋼治