タイヤも自動運転社会で変わる!?
従来のタイヤは使えば使う分だけ摩耗していく、というのが常識である。ところが、ダンロップが2020年代の発売を目標に開発しているタイヤは”使えば使うほど性能が向上する”というもので「スマート タイヤ コンセプト」をテーマに鋭意開発中だという。今回のネクストIIIもこのコンセプトに従って開発されている。
世界初の技術でウェットグリップ性能を長期持続
新たに採用したに「水素添加ポリマー」はタイヤの酸化を防ぎ、濡れた路面でのグリップ性能の向上に成功した。この水素添加ポリマーは、JSRが開発したもので、特徴は分子同士の絡み合いの増加、硫黄架橋点の均一化、炭素二重結合の減少につながる。
噛み砕いて説明すると、何らかの衝撃や摩耗によってタイヤにキズが付いたとする。従来品では、そのキズ口からタイヤ内部の酸化が進んでしまっていた。だが、新たに採用した水素添加ポリマーは酸化する前に分子同士がより強固に結合。結果として分子同士が破断しても修復してくれるのだ。
タイヤの性能低下の原因を突き止めたのはAIだった!?
タイヤの性能が低下する要因は3つある。ひとつは路面との接触によって起こる「き裂摩耗」、ふたつ目が「経年変化」だ。これら2つに対応したタイヤはすでに市販化されているが、今回のキーとなるのは3つ目の化学変化によって起こる「メカノケミカル変化」だ。このメカノケミカル変化こそが性能低下に大きな影響を与えるもので、今回発表したエナセーブ ネクストIIIはこれを解明したタイヤなのだ。
タイヤ内部の変化の解析に成功
医療用に開発されたAIを応用して、メカノケミカル変化の解明に挑んだのだ。発売が計画よりも1年早まった理由も、このAIの処理能力が大幅に向上したことが要因である。
AIで使用後のタイヤがどのように変化するかを画像解析し、今までわかっていなかったタイヤ内部の全容を把握することに成功。そのうえ、従来タイヤの開発でも使用している大型放射光施設などで素材の解析も並行して行ったという。
ロングライフ化に成功! 残る課題はコストだ
エナセーブ ネクスト IIIは従来品よりき裂摩耗が27%、メカノケミカル変化が62%、経年変化50%それぞれ抑制。この性能が評価されると、サイズラインアップはもとより価格も下がるようだ。
エナセーブシリーズの新たな試みなどから、今後の展開される商品に注目したい。
【筆者&撮影:MOTA編集部】