文在寅氏が抱える「自爆装置」が炸裂するタイミング

23日、名古屋で会談した日韓外相は来月末に中国で開かれる日中韓首脳会議を機に、昨年9月以来となる日韓首脳会談の実現に向け調整することで一致した。

史上最悪と言われる日韓関係を解きほぐす上で、両国首脳のリーダーシップは不可欠であり、これはきわめて重要な機会と言える。

米国の「最後の脅し」

とはいえ、ハッキリ言って「期待」より「不安」が勝るのが、正直なところだ。重要な機会であるだけに、その場で「爆弾」がさく裂しようものなら、文字通り取り返しのつかない事態となる。

そうでなくとも両国は、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の失効回避を巡り、言い合いをしている。韓国側は、日本が先に輸出管理強化措置の見直しの意向を示したと強調し、日本側は、韓国が輸出管理の問題点を改善する意欲を示し、WTO提訴の手続きを中断する意向を伝えたから主張する。

またこうした発表の食い違いを巡り、韓国側は「日本がわい曲し、謝罪した」とし、日本側は「そんな事実はない」と否定している。関係改善を目指す国同士のやり取りとは、とても思えない。

現時点で確かなのは、韓国の文在寅政権の方が、よほど旗色が悪いということだ。韓国政府はGSOMIAの失効回避に当たり、「終了通知の効力停止」という表現を用いて、いつでもGSOMIAを終了させることができるとの前提を付けた。反日に傾き、GSOMIA破棄に賛成していた政権支持者たちに、「引いたわけではない」と言い訳する余地を残したわけだ。

しかしこれこそは、文在寅政権にとっての「自爆装置」だ。政権支持者たちが日本への不満を募らせたら当然、「今こそGSOMIAを破棄しろ」との声が噴き出すだろう。そうなっても、GSOMIAの終了にまったく痛痒を感じていない日本側には、何のダメージもない。

一方で韓国側は、支持者に従わねば政権の地盤沈下につながり、GSOMIAの破棄に走れば、文在寅政権を腰砕けにした米国の「最後の脅し」が現実のものとなる。


GSOMIAの失効が回避されてもなお、文在寅政権は危機から抜け出せていないのだ。

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