『MANRIKI』 普段見られない芸術性の高さに興奮

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 監督としても活躍している俳優の斎藤工が、芸人・永野、ミュージシャン・金子ノブアキ、映像クリエイター・清水康彦と一緒に立ち上げた映像クリエイティブ集団「チーム万力」が手がけた初の長編映画です。原作を担当した永野がファッションショーに出演した際、小さい顔で細いスタイルのモデルたちが一生懸命小顔になろうとしているのを見たことが、本作誕生のきっかけとなったのだそう。どこへ行っても自分が「顔デカ」と言われているようなパラノイアに陥り、ついには整形へと向かうヒロインを見ているうちに、携帯のエフェクト機能を使ってはパシャパシャと写真を撮っている世の中の女性たちに感じていたモヤモヤした恐怖感が蘇ってきました。

 万力という機械の中で顔を締め上げられた彼女が壮絶な痛みに絶叫した時に感じる人間らしさ、恍惚の表情を浮かべながら女性の顔を締め上げる、斎藤工が演じる「整顔師」の奇怪さ、それに加えて、奇妙な笑顔を浮かべる永野。現代社会の縮図のような現実味と、隣り合わせのように感じてしまう超現実的な恐怖世界にいつしか引き込まれてしまう自分がいました。芸人・永野の持つ独特なユーモアが、この映画をさらに面白くさせて、つい笑わせてくれる瞬間をもたらします。

 芸人の原作と侮るなかれ。永野の世界観は芸術そのもの。不条理な世界観も実験的な映像も、「斎藤工」「SWAY」そして「金子ノブアキ」といった若者たちのアイコンたちがハブとなって、こういう野心にあふれた面白いアート映画に触れ合える機会がもっといっぱい増えたらいいな!って思います。★★★★☆(森田真帆)

監督:清水康彦

出演:斎藤工、永野、金子ノブアキ

11月29日(金)から全国順次公開

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