欠いた「チームの共通理解」 J2リーグ戦総括 V長崎12位で終了 個のレベルアップ、効果的な補強不可欠

最終節の新潟戦で先制されてうつむく手倉森監督。就任1年目のリーグ戦は結果を出せなかった=新潟市、デンカビッグスワンスタジアム

 サッカーJ2のリーグ戦は24日、全日程を終了。V・ファーレン長崎は12位で、目標のJ1復帰に届かなかった。チームとして十分に機能しないまま、17勝5分け20敗で負け越し。手倉森体制の1年目は厳しい現実を突きつけられた。

  ■呉屋が頼り

 上位に力の差を見せられ、下位にも勝てない。そんなシーズンだった。

 優勝した柏、昇格プレーオフに進出した大宮のほか、水戸、岡山にはホーム、アウェーともに敗れた。逆にV長崎が2戦とも勝った相手はゼロ。戦績が不安定だった今季を何より物語っている。

 前評判は決して悪くなかった。J2降格で主力級が引き抜かれた一方、元日本代表の玉田をはじめ、J1経験が豊富なベテラン勢を補強。顔触れは柏や大宮と遜色なく、J2トップ級との声は多かった。

 だが、ふたを開けてみると、歯車がかみ合わなかった。第7節を終えて20位。特に攻撃力不足は深刻で、この時点でチーム総得点は「2」にとどまっていた。1月のキャンプ時から念入りに取り組んできたはずの「組織で持ち上がるサッカー」は鳴りを潜めていた。

 3月下旬に獲得したストライカー呉屋という“特効薬”で、不安は一時解消されたように見えた。7月には手薄だったボランチも補強。だが、根本的な課題は克服できないまま、終盤は覇気を欠く試合も目立った。

 呉屋の存在は大きかった。決して得点機が多くはない中、強烈な個の力でゴールを量産。5~6月にJ2最多タイとなる7試合連続弾を決めた。通算22ゴールは外国籍選手が並ぶ得点ランキングで堂々の3位に入った。

 ただ、一時はランキング首位に立ったものの、マークが厳しくなった終盤は失速。チームも順位を下げた。良くも悪くも呉屋頼みだった今季を象徴する結果となった。

途中加入ながら22ゴールと活躍した呉屋=デンカビッグスワンスタジアム

 下位の栃木に敗れた11月16日のホーム最終戦。試合後の角田の言葉が、今季のチームを的確に表現している。

 「相手に引かれると、それを崩せるほどのクオリティーが今の自分たちにはない。ただ蹴っているだけで、誰が競って誰が拾うとかもない。行き当たりばったりになってしまった」

 ■戦術の変更

 手倉森監督の就任で戦い方は変わった。システムは3バックから4バックへ、戦術は堅守速攻からポゼッションとカウンターの併用となった。

 中でも影響が大きかったのは、コーチ陣が細かく指示するスタイルを、可能な限りピッチ内で解決するように見直した点。選手の自主性を育み、J1で戦う土台をつくる狙いがあったが、選手たちはこの難題をクリアできなかった。

 7年間在籍して、今季限りで退団する高杉が無念の思いを口にした。「これまでは管理されていて、今年は良くも悪くも自由。もっと選手間で話し合う必要があったのだろうけれど、最後までチームがまとまりきれなかった」。指揮官も「割り切るサッカーと崩すサッカー、柔軟性を持ってやってきたが、どちらか針を振り切った方が良かったのかもしれない。チーム状況に戦術を合わせるアプローチも必要だった」と悔やんだ。

 ■若手は成長

 あらゆる面で反省点が多かった今季。来季、同じ失敗を繰り返すわけにはいかない。結果を真摯(しんし)に受け止め、チームとしての共通理解をより深めるためには何が必要か。ベンチの方針の確立とチームへの浸透、選手一人一人のレベルアップ、効果的な補強-。やるべきことは山積していると言える。

 そのチーム編成について、気になるのは移籍関係。主軸の呉屋、イバルボ、秋野、カイオセザールは、いずれもJ1クラブからのレンタル組で、残留する保証はない。今季のリーグ戦は半数の21試合で複数失点しているだけに、守備のてこ入れも不可欠だろう。

 カップ戦で活躍した吉岡、畑ら若手は、リーグ戦の出場機会が増えた。GK富澤は徳重と定位置を争うレベルになり、プロ2年目の米田はシーズン終盤にサイドバックで頭角を現した。

 手倉森監督は「リーグ戦、ルヴァン杯、天皇杯。今季の長崎はJ2で一番多くの試合をこなしてきた。育まれたものは必ずある」と前を向く。実績があり、選手たちのやる気を促す力がある指揮官が迎える来季。すべてにおいて成熟した“大人のチーム”になることが求められる。

© 株式会社長崎新聞社