“これから先生になる人たち”のためのプログラミング教育

2020年からはじまるプログラミング教育。各地で教員研修会が行われるようになり、少しずつですが、指導者育成が進んでいます。しかしこれから先生になる人のためのプログラミング教育は、あまり行われていないのが現状です。今回は、筆者が携わっていた教員志望学生のためのプログラミング教育プロジェクトを紹介しながら、今後どのような施策が必要かについて考えます。

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教職課程の生徒に指導できる先生も少ない

現場の先生のなかでプログラミング教育がわかる人が少ないのはよく言われることですが、大学の教職課程で教えている先生のなかにもできる人は少ないのが現状です。たとえば情報系の学部であればプログラミングそのものの研究をされている先生はたくさんいますが、小学校での教育も一緒に考えるとなると話は変わります。また、教員養成課程の先生のなかでコンピュータなどのICT機器を得意としている人もあまりいません。

プログラミング教育はとても新しく、まだまだ小さい分野のひとつです。理論的な話が決まるよりも先に実践が求められるという、なかなかに不思議なことになっているため、戸惑いが強いのでしょう。小学校の現場でも言われていることが、大学でも同様に起こっているということです。

筆者は2019年現在大学4年生であり、小学校の教職課程に在籍しています。筆者の同級生たちは新しい学習指導要領が全面実施される来年度から教壇に立つことになります。そのときに、やはりプログラミング教育はある程度理解しておいたほうがいいだろうということで、2018年度に「プログラミング教育研究サークル」なるものを立ち上げ、学生自らがプログラミング教育を研究し実践する場をつくりました。

なかったら自分たちでやってみよう

実際のワークショップ

サークルの目的は、将来自分たちが教師になったときプログラミングを使った授業ができるようになることです。活動は主に3段階で構成されています。

1. 概説

概説では、プログラミング教育とはそもそもなにをするのか、どんな目的で行われるのか、具体的に教員にはなにを求められているかといったことを学びます。学習指導要領の確認はもちろん、プログラミング教育の手引きやMITメディアラボのミッチェル・レズニック教授が提唱している「Creative Learning(創造的な学び)」についても学び、小学校におけるプログラミング教育で、どのように創造的な学びができるかも考えます。

2. 演習

演習では、実際に Scratch を使いこなせるレベルになるまでプログラミングを学びます。CoderDojo Kashiwa から提供してもらっている「Scratchトレーニングブック」を中心に、一通りの機能を自分のペースで学び、最終的には自らの作品をつくり発表するところまで行います。

3. 実践

実践では、概説と演習を踏まえて自分たちでワークショップを企画・運営・実行します。小学校の授業ということはあまり意識せず、ワークショップ形式で行うことで、なにかにとらわれず自由な発想で学びの場をデザインすることを学びます。

サークルでの活動を企画するにあたってとくに意識したのは、演習と実践を必ず行うことです。プログラミング教育の教員研修会では、概説的な話+簡単な演習はよく行われます。しかし、時間をかけてプログラミングを覚えたりなにか作品をつくるといったことはなかなかできません。学生というまだ時間があるうちにこそ、じっくりと教材研究に取り組めるのです。

また、自分たちでワークショップを企画して運営する経験もなかなかできることではありません。子どもたちと実際に接する機会をつくることで、プログラミング教育のイメージを具体的にすることを狙いました。

プログラミングワークショップの様子

サークルで学んだ学生たちは、教育実習でもプログラミング教育にチャレンジするなどさまざまな広がりを見せています。やはり大学生の間にある程度経験しておくことが大切だとわかりました。

少しでも体験してみたり学習しておいたほうがいい

今回紹介した事例は、国内でも珍しい取り組みになります。自分たちで学ぶことをこれから先生になるすべての学生に強制することはできません。しかし大学で学べないからといって、なにも対策をしないまま教壇に立つよりは、自分で少しでも体験してみたり学習しておいたほうがいいでしょう。

また、大学でどのような授業をしていくべきかを早急に立案する必要もあります。プログラミング教育は各教科のなかで行われることになっていますから、教科教育法のなかでやるのか、あるいはICT機器の利活用とまとめた授業をつくるのか、などなど検討すべきことはたくさんあります。

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