オワコンと思われた「国内パソコン市場」が新成長期に入った理由

スマートフォンやタブレット端末の高性能化に伴い、一時は「オワコン」(終わったコンテンツ)扱いされたこともあるパソコン。ですが足元では、国内出荷台数の伸びが加速しています。

なぜ今、国内のパソコン市場が新たな成長期に入っているのでしょうか。そして活性化する市場の中で、活躍しそうな企業はどこなのでしょうか。


出荷台数は2四半期連続で大幅増

JEITA(一般社団法人電子情報技術産業協会)が発表しているパーソナルコンピュータ国内出荷実績によれば、2019年4~6月は216.7万台(前年同期比35.5%増)、同7~9月は287.6万台(同66.0%増)と、需要の伸びが加速しています。

急拡大の背景には消費税率の引き上げ(2019年10月)やWindows7のサポート終了(2020年1月)がありますが、前回の消費税率引き上げ時やWindows XPのサポート終了時にあたる2014年1~3月の伸び率(30.5%増)をも大きく上回りました。

これは慢性的な人手不足が続いている一方で、「働き方改革」など業務効率性を追求する流れも加わり、法人向けを中心にIT投資に対するニーズが高まっていることが需要押し上げ要因になっているため、と当研究所では推測しています。

企業における生産性向上ニーズは、以前とは比べ物にならないくらい高まっています。たとえば「ワーク・ライフ・バランス」が求められる世の中に移行している中で、「テレワーク(離れたところで働く、在宅勤務など)」の導入が見込まれます。日本のテレワーク導入率は米国などと比べてまだ低いのですが、今後のポテンシャリティととらえることができるでしょう。

教育のICT化も、パソコン需要にとっては追い風になりそうです。6月25日に文部科学省は公立小中学校・高校などの先端技術活用推進方策を公表し、その中で2025年度までに児童生徒1人に1台の学習用パソコンの整備を目指す方針を盛り込みました(2018年3月末の整備状況は5.6人に1台)。

全国の小・中学校、高校の児童生徒数(私立学校などを含む)は約1,300万人で、国内パソコン需要全体から見ても無視できない大きさです。さらに2020年度からは小学校でプログラミング教育の必修化が始まりますが、これらを通じて家庭でのパソコンに対する関心が高まることで、家庭向けパソコン需要の回復にもつながる可能性があるでしょう。

<写真:ロイター/アフロ>

追い風が吹く分野は意外と幅広い?

パソコンの国内市場が新たな成長期に入ると予想する中で、メーカー、ソフト、卸・小売店など、幅広い関連企業に追い風となる可能性があるでしょう。

国内パソコン市場は、NECレノボ、富士通、デル、日本HPといった国内外の大手メーカーがしのぎを削る構図です。その中でシェアは3~4%程度に過ぎないものの、堅調な業績拡大を続けているのがMCJ(マウスコンピュータ)です。

同社はBTO(受注生産)方式により多様なニーズに応えながら、リーズナブルな価格で製品提供が可能であり、今後のシェア拡大が期待できます。

パソコンの1次卸として国内首位のダイワボウホールディングスにも、着目しておきたいところです。同社の中核子会社であるダイワボウ情報システムは、IT関連製品の草分けとして、地方を中心に自ら在庫を持つビジネスを展開し、強固な営業基盤(全国約90拠点の営業網)を構築しています。

独立系マルチベンダーとしてのネットワーク力やソリューション力を武器に、過去10年間での国内シェアを11.1%から22.0%(法人向けに限れば13.8%から28.3%)へと上昇させるなど、競争力は抜群です。国内パソコン市場の新成長期入りを迎えるにあたり、同社の中長期的な収益成長ポテンシャルは高まっていると考えられます。

パソコンの小売りに関しては、家電量販店などが想起されますが、当研究所ではソリューションサービス主体のピーシーデポコーポレーションに着目しています。

教育のICT化推進により家庭におけるパソコンへの関心が再び高まると考えられますが、同社のプレミアム会員は親子同居世帯などが多く、これまでもパソコンのサポート・提案に注力してきた実績から考えて、追い風となる可能性が高いでしょう。

<文:企業調査部 張谷幸一>

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