思わず応援したくなる!? 日ハム大渕スカウト部長の愛情溢れる新人紹介全文

23日に札幌時計台で新入団選手発表が行われた【写真:石川加奈子】

ドラ1河野は「何よりこの大きな目」、ドラ2立野は「投手らしい投手」

 日本ハムは23日に札幌時計台でドラフト指名した10選手の新入団発表を行った。この毎年恒例の行事で密かに楽しみにしているのが、大渕隆スカウト部長が行う選手紹介だ。

 単にプレーヤーとしての特徴を述べるだけではなく、アマチュア時代のエピソードなども交えて選手の人柄や球団の期待の大きさを伝える内容となっている。その愛情たっぷりの紹介を聞いていると、思わず応援したくなるから不思議だ。

 早大出身で元高校教師という異色の経歴を持つ大渕スカウト部長は、2012年にメジャー挑戦を決意していた大谷翔平投手(エンゼルス)との交渉に臨み、日本ハム入団を決意させた立役者の一人。熱い思いにあふれた選手紹介を今年もここで取り上げたい。

○ドラフト1位 河野竜生投手

「今年の社会人ナンバーワン左腕です。マウンド度胸が非常に良く、ゲームをつくる能力に長けています。150キロを超える強い直球と切れ込むスライダーが武器です。そして何よりこの大きな目。この目で打者をにらみつけ、今から1軍強打者との対戦が非常に楽しみです。社会人出身ではありますが、21歳とまだ若く、感性の高さ、考える力がまだまだあり、これからも伸びていくと見ています。担当の加藤スカウトとは同じ徳島県の出身で、しかも同じ会社から同じくファイターズに入ると言う偶然がありました。さらに加藤投手も左投手、しかも名前にも『竜』という文字が2人とも入っているという偶然がありまして、まさにファイターズに導かれたような選手であります。ファイターズに来るべくして来た救世主。名前の通り、昇り竜のような派手な活躍を1年目から期待してます。頑張ってください」

○ドラフト2位 立野和明投手

「投げるセンスに長けた総合型の投手です。バランスの良いフォーム、スピンの効いたボール、切れの良い変化球、そしてボール半分の制球力を持つ、投手らしい投手と言えます。残念ながら今年は不調が続き、不本意なシーズンであったとは思いますが、我々は将来ローテーションを任せられる彼の素材の高さを評価しています。社会人からの入団とはいえ、彼もまだまだ伸びしろがあり、一時はドラフト1位も予想された夢のある選手です。同い年、社会人出身、そして同じポジションの河選手との競争が非常に楽しみです」

○ドラフト3位 上野響平内野手

「ご覧の通りのきゃしゃな体からは想像もできない強肩と洗練された守備は見る者を魅了します。ただ守備がうまいだけではなくて、打球の予測、一歩目の速さ、無駄のない捕球など、常に最高のプレーをするにはどうすべきか考えられる、高校生ではありますが、非常に職人的な気質を持った選手です。一方、攻撃面は課題です。聞けば守備練習が好き過ぎて、打撃練習中も守備に就いてばかりいたということです。今後は打撃、走塁のレベルアップに本格的に努めてほしいところです。今年唯一の高校生選手ですが、肝は座っており物怖じしない性格も見逃せません。頑張ってください」

○ドラフト4位 鈴木健矢投手

「高卒社会人4年目、変速のサイドスロー投手です。力強い直球を両サイドに決め、横滑りのスライダーは左右両打者への武器となります。1軍では中継ぎの即戦力として挑戦してほしいと思います。ドラフト解禁の昨年は指名漏れ。満を持しての今年でしたが、春先に肘痛を発症し早々に戦線離脱。しかし、この夏パワーアップして帰ってきたところを担当スカウトが発見。以来ストーカーのように担当スカウトが密着し、ファイターズの指名となりました。新人の坂本スカウトにとってはスカウト人生初の担当選手。また今年就任した小笠原コーチとは高校時代の恩師が同じなど、これまたファイターズとの縁がある選手です。ぜひ頑張ってください」

○ドラフト5位 望月大希投手

「ご覧の通りの長身、長い足に長い腕、角度のある球筋と変化球の切れ、特に縦割れのカーブに良さがあります。このカーブで大学選手権では9回2安打1失点の好投を見せました。現在187センチですが、まだ身長が伸びているということで、まだまだ角度も出てくるでしょう。一見ぎこちないフォームも指先の感覚は良く、素材としてとても良いものを持っています。心技体すべてに伸びしろを残しており、大化けする可能性があります。4位の鈴木選手とは高校時代、甲子園を争った同級生。活躍を競う良いライバルであってほしいと思います。頑張ってください」

○ドラフト6位 梅林優貴捕手

「甲斐キャノンならぬ、梅キャノン、梅ちゃんバズーカ。いずれも担当スカウトが形容した梅林選手のスローイングのことです。実際、肩はプロの1軍でも目立つことでしょう。彼はドラフトの解説者も知らなかったという隠し球的選手でした。中国リーグという決してレベルが高いとは言えないリーグのしかも2部。のんびりとした練習で、私が実際グラウンドに行ってもチームメイトはバイトの話をしていました。そんな中、彼だけは淡々と自分の練習に静かに取り組み、試行錯誤していた姿がとても印象的でした。また経済面を補うため、授業と野球の合間を縫って2つのバイトをかけ掛け持ちしながらプロを目指してきました。その真摯な姿でこれからも変わらず努力を続けてほしいと思います。頑張ってください」

育成ドラ1宮田は「2階級特進も…」、育成ドラ2樋口は「和製アルトゥーベ」

○ドラフト7名 片岡奨人外野手

「184センチの長身でありながら俊足、強肩、強いスイングの持ち主で、とにかくアグレッシブなプレーが魅力の外野手です。守備範囲の広さはすでにプロでも上になります。しかし、まだまだその他にやるべきことは多く、逆に言えば伸びしろが多く残されている選手です。持ち前のやる気と勤勉さを生かして、近い将来1軍での活躍を期待できる高い能力を持っています。生まれは函館、その後、門別、札幌とすでに北海道のことはよく知っている生粋の北海道民。北海道出身選手として活躍を期待したいところです。頑張ってください」

○育成ドラフト1位 宮田輝星外野手

「彼の売りは間違いなく足の速さです。陸上選手のような軽やかな足は見る者の目を奪います。チームが今最も必要としているスピード、その持ち主で、結果さえ出せば2階級特進の1軍でのチャンスも十分あるでしょう。将来代走のスペシャリストになるか、守備代走要員なのか、はたまた打撃力を上げ、レギュラーを奪うのか。チャンスを生かすも殺すも本人次第。まずは支配下契約を勝ち取ってください。頑張ってください」

○育成ドラフト2位指名 樋口龍之介内野手

「独立リーグでは本塁打、打点ともに日本人ナンバーワンの成績で、リーグを代表するスラッガーです。今年も横浜高校の1つ先輩である近藤選手らと徳之島で自主トレをしました。それが功を奏したのでしょうか。リーグ3年間の打撃成績は打率が2割6分、2割9分、3割5分と年々上がっていきまして、本塁打も1年目は2本でしたが、その後10本、今年は19本と一気に伸びてきた有望株です。実際167センチとプロ野球では非常に小柄で、しかも25歳でのプロ入り。しかし、和製アルトゥーべとして活躍できれば、小柄な選手には夢を、独立リーグの年を重ねた選手には希望を与えることができます。ぜひ頑張ってください」

○育成ドラフト3位 長谷川凌汰投手

「ご覧のような188センチ、98キロと素晴らしい体格から角度のある150キロを超える直球と低めに集まるフォークが武器です。昨年の指名漏れをバネに、今年1年本当に頑張りました。課題であった制球を改善し、1年間安定したパフォーマンスを出し、誠実に投げ続ける真摯な姿はまだまだ成長できるものを感じさせてくれます。年内1軍登板を目指し、頑張ってください」(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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