取扱総額105億円!「三越本店」宝石サロン30年ぶり刷新の全容

「来年3月の完成に向けて、『世界最高のおもてなし百貨店』を目指してリモデルを進めています。日本橋本店ならではの品ぞろえと、100年以上続くおもてなしを掛け合わせた、6階のジュエリーギャラリーはリモデルの象徴的なフロアになります」

11月27日に日本橋三越本店で開かれた、「ジュエリーギャラリー」のリフレッシュオープンのプレスプレビュー。その冒頭、牧野信喜店長は同日にリニューアルオープンする宝飾品売り場に関して、このように手応えを語りました。

日本を代表する老舗百貨店の高額商品フロアは、30年ぶりのリニューアルでどのように生まれ変わったのでしょうか。世界の至宝を集めたという圧巻の売り場を取材しました。


美術館で鑑賞するように宝石を買い回り

1908年に日本の百貨店で最初の宝飾品売り場として誕生した、日本橋三越本店の宝石サロン。コンセプトを「THE GALLERY」として、30年ぶりのリニューアルに臨みました。

売り場の設計は、美術館やギャラリーでアート作品を鑑賞するように、自由に商品を見て回ることができるように配慮。従来よりも動線を広めに取り、陳列ケースの高さも10センチメートル上げました。

「宝飾品フロアにいらっしゃる間、お客様の視線の中に常にジュエリーが入るように設計しました」(特選MD統括部の菅百代マーチャンダイザー)

陳列ケースは従来よりも10センチ高くした

売り場は、大きく分けて2つのゾーンで構成されています。壁面には、逸品やハイジュエリーを中心としたジュエリーブランドのブティックを配置。「フレッド」が新規にオープンしたほか、「ウェレンドルフ」「ショパール」「タサキ」などのブランドが各々のコンセプトに合わせて、出店場所を変更しました。

壁面ゾーンにはブランドのブティックが出店

そして、もう1つのゾーンが、今回のリニューアルの目玉でもある、フロア中央の編集ゾーンです。「GEM GARDEN」と名付けられたこのゾーンには、ダイヤモンド、パールなど素材別で編集した売り場と、世界の逸品を集めた「至宝ギャラリー」とで構成されています。

“日本でここだけ”の至宝を集めた

この至宝ギャラリーは、日本では日本橋三越でしか取り扱っていないような至宝級の宝石を取り扱っています。12月3日までは世界的にも希少性の高いルビーを展開。販売価格が3億円を超えるルビーのネックレスが目玉商品となっています。

販売価格3億円超のルビーのネックレス

また、素材別の売り場は、ダイヤ、パール、カラードストーンの3つで構成。同じ素材の中でも、さらに細かい種別に分けて展開しています。

たとえば、パールの場合、定番のアコヤパールの隣りに黒パール、さらにその隣りには最近人気が高まっているというゴールデンパールを配置。カラードストーンの売り場では、ルビー、サファイア、エメラルドといった定番商品に加えて、希少性の高いトルマリンやヒスイ、オパールなども取りそろえています。

ゴールデンパールも豊富に品ぞろえ

「同じ素材でも、さまざまな種類や価格帯の商品があることを感じていただける作りにしています」と菅さん。取扱点数は約6,430点、取扱総額は約105億円に上るといいます。

菅さんによると、検討客が宝飾品を購入する際の選び方には3つのパターンがあるそうです。1つがブランドの指名買い、2つ目がダイヤやルビーといった素材別、3つ目がピアスやネックレスといった形態別。今回のリニューアルでは、ブランド別と素材別で需要を捕捉することを狙いました。

横に寄り添う共感型の接客に

今回のリニューアルに合わせて、もう1つ見直したのが接客方法です。これまでは陳列ケースを挟んだ対面接客が主流でしたが、今後は客の横に店員が立って、寄り添いながら接客するスタイルに変更します。

ケースを挟んだ対面ではなく、側面で接客

このスタイルを取り入れるメリットは、対面接客で客に与えてしまっていた圧迫感が抑えられ、共感型の接客が可能になる点。また、商品を試着してもらう際、対面だとケースから商品を出して、客の後ろに回るため、時間がかかっていましたが、横に寄り添うスタイルだと、商品をすぐに試着してもらえるという利点もあるといいます。

さらに、売り場内の各所に試着スペースを新設。動線からは見えにくい半個室のスペースで、ソファに座りながら、自分好みのジュエリーを選べる工夫を施しています。

ゆったり商品を選べる試着スペース

新たなジュエリーギャラリーの販売目標は、リニューアル前の4~5割増し。10月の消費増税の影響で、足元は宝飾品全体の売上高が落ちていますが、1,000万円以上の価格帯については増税よりも株価の騰落の影響のほうが大きいため、需要は底堅く推移しているそうです。また、年度ベースで見れば、売上高は上昇トレンドをたどっているともいいます。

商品陳列と接客手法を大きく見直した、老舗百貨店の挑戦。足元は逆風が吹いている高額消費ですが、売り場のリニューアルを起爆剤に、年末商戦で顧客を呼び戻すことができるでしょうか。

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