佐藤寛太と大原梓の共演でNHK福岡が2019年度ドラマの制作を発表

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NHK福岡放送局は11月20日に、2019年度NHK福岡ドラマの制作発表および出演者記者会見を行った。タイトルは「となりのマサラ」。2020年12月に開局90年を迎える同局の記念作品で、NHK福岡ドラマとして初の在日外国人がテーマだ。ネパール人コミュニティーと日本人の若者との交流を描く。2020年2月28日午後7時30分から九州・沖縄のNHK総合テレビで放送される。主役の佐藤寛太とヒロインの大原梓が共演し、若い彼らに加え、野間口徹や梶芽衣子、光石研ら実力派俳優が出演する。会見には出演者の佐藤と野間口、脚本家の北阪昌人氏、制作統括するNHK福岡放送局の中村雅郎チーフプロデューサー、演出を担当する同局の安藤大佑ディレクターが出席した。

中村雅郎チーフプロデューサー
「2002年からNHK福岡放送局では地域発ドラマという形で、県内のさまざまな地域において年に1度のペースでドラマを作ってまいりました。地域からドラマを作り、発信していくことを始めたのはNHK福岡放送局からです。私事ですが福岡放送局勤務は3回目でして、最初の勤務時よりドラマ制作には、何らかの形で携わってまいりました」

「今回、(安藤)監督と内容をディスカッションしていく中で『日本に暮らす外国人の方の話にしようじゃないか』とまとまってまいりました。コンビニエンスストアのレジを打っていたり、飲食店のキッチンにいたり、たくさんの外国人の方の働きで、私たちの生活が成り立っているんではないかと。その割には彼らの暮らしぶりを知らない。そのような思いからネパール人コミュニティーと共に作り上げていくという、福岡発地域ドラマとしては前例のない、外国のキャストの方にもたくさん登場していただく、新しいテイストのドラマになるかと思います。あわせて今、(NHK福岡放送局がある)六本松界隈ではカレーが非常にブームであります。そんなブームに乗っかろうかという、ちょっとした魂胆もありつつ(笑)、面白くて心温まるドラマになればと思っております」

安藤大佑ディレクター
「福岡に住む外国人、特にネパール人コミュニティーに入っていく(日本人)青年のストーリーというものをやることになりました。外国人の方が増えているというのが企画の発端です。特に今年に入ってからは4月に入管法の改正があったりだとか、どうやって共に暮らしていくか、さまざまな形で語られています。コンビニに行けばネパール人やベトナム人が働いていたり、街中でも多くの外国人が行き交い、無関心ではいられない状況です。そんな(ことが)ニュースではたくさん取り上げられていますが、ドラマの中で人と人のかかわりを描くことで、いろんな気づきを持っていただけたらなと企画いたしました」

「全国的にネパールとベトナムの方が増えてまして、特に福岡ではネパール人の増加が全国でも有数。それは福岡に日本語学校が多いというのが理由なんですが、そんな中で取材を始めるとネパール人の暮らしに触れてみたり、イベントだとかお祭りだとかに参加させていただくと、彼らの熱い生き様というか、あるいは日本とのズレがあって大変だったりだとか(が分かります)。そういう実感を佐藤さんをはじめ役者の方々に演じていただくドラマにしていきたいと思っております」

佐藤寛太
「今日からクランクインで、野間口さんは空港についてからまだ1時間もたっていない(状態です)。僕は福岡出身で外国人の方が多い中で暮らしてきたので、言葉の壁や文化の壁があっても、お互いを知ろうとすることが一番大事なんじゃないかと(実感している)。そういうことを考えさせてくれるドラマになるんじゃないかなと。グローバル化が進んで、いろんなものが急速に成長していく中において、人間だけが取り残されてるような気持ちを感じるので、そんな同じような気持ちを持つ人々の心に火をともすようなドラマになればいいなと思っております」

野間口徹
「ちっちゃな小競り合いだとか偏見だとかが大きな戦争になってしまうこともあるので、そういうことがなくなるようなきっかけになればいいなと思います。それが福岡から始まれば、なおいいなと思います」

北阪昌人氏
「脚本を作るために安藤ディレクターといろんなところへシナリオハンティングに行かせてもらったんですが、たくさんのネパールの人たちにも会わせていただいたり、福岡で起きていることが日本全国で行われることの縮図というか、これから全国的にも行われることだと実感しました。ただドキュメンタリーではなくドラマなので、最後まで皆さんが飽きずに見られる、そして『これは自分にも起きるのではないか』と実感していただけるようなドラマになるように書きました。素晴らしいキャストの方に恵まれましたので、これから僕も出来上がっていくのが楽しみです」

──ネパールをはじめ外国に対する印象は?

佐藤「上京して一番利用しているコンビニがあるんですが、そこの店員さんがネパール人で、このドラマをやる以前から知っていたんですが、すごく気さくな方で。国民性とかは分からないですが、僕が知っている限りでは明るい人で。人って仕事だと冷徹というかマシンみたいに徹することができるじゃないですか? だけどその店員さんって、すごく優しくて、毎回、これでもかというくらい話しかけてくれまして。『今日は〇〇買わないから二日酔いじゃないんだね』とか、そういうことまで把握されて、ちょっとした怖さもあるんですが(笑)。それでも、東京に行って、知らない土地で声をかけてもらう、あったかさみたいなものを感じて。そういうことも含めて、あったかい国なのかなって想像します」

野間口「(福岡)空港を降りてすぐ、モデルになったカレー屋さんのカレーを食べてきたんですが(笑)。抽象的なんですが『やわらかく、かたい方』という印象を受けて。ただ、奥さんの尻に敷かれているという。ネパールや外国に対する(特別な)意識はないですね」

──初めて台本を目にした気持ちは?

佐藤「身の回りの話になるんですが、親族に外国との懸け橋になるような仕事をしている人がいて、人ごとじゃないというか。人を知りたいという興味だったりだとか、あったかい気持ちになれるドラマになればいいなと思いました」

野間口「『ああ今、福岡、こんな風になっとるんか』と思いました。僕は18歳まで北九州にいたんですけど、その時は東南アジアや南アジアの方ってあんまりいらっしゃらなくて、どっちかというと朝鮮半島の方が多くって、そういう学校もありましたし、そことの付き合いだけだったんですけど、これからはアジアだけじゃなくて、きっとヨーロッパとかからもたくさん人が来るようになって『まあ、今まで通りじゃいかないぞ』っていう、そこのつなぎ目のつなぎ役という役柄なんですけれども、どのような距離感でやればいいかなって、結構悩んで、一回忘れようとして、もう一回悩んで『もういいや』ってなったり、ここ2週間そんな感じでしたけど。台本もらってすぐに思ったのは『ああ、仕事で福岡に行ける。おいしいもの食べよう』って(笑)」

──佐藤さんは福岡市出身ということで、撮影が行われる予定の福岡市南区の印象や思い出などがあれば?

佐藤「友人が通っていた高校があって、そこの体育祭などに誘われて見に行ったりだとかしていましたし、今同じ事務所にその高校出身の者もいて、福岡にいた時は、しょっちゅう(南区へ)行ってましたね。それと、少年野球もやっていて、(南区の)長丘だとかのチームと練習試合をやって負けていた印象ですね。野球が強いというイメージが一番かもしれません(笑)」

──地元で撮影されるドラマですが、どのような気持ちで臨まれますか?

佐藤「二番煎じですが、おいしいものが食べられるなと(笑)。やはり、親孝行になるかなと。台本を読んで、こんなにしっかりとした(人物の)役をやるんだと。外国と懸け橋になっている人、外国からやって来る人、そして日本に暮らす人、そんな人々の思いを色濃く深く掘り下げて描いていくので、何か考えるきっかけになればいいかなと思いますので、そういう意味でも地元に貢献できるっていうのは一番うれしいかなって思います」

野間口「僕も同じく貢献度が上がればいいなと思いますし、あとはこういう風に福岡発のドラマっていうのがね、朝ドラ(NHK連続テレビ小説)も東京と大阪だけじゃなくって、福岡も名古屋でも、いろんなところでやればいいのにって。福岡で作るドラマがいっぱい増えれば『もう福岡に戻ってくるのに』って思うんですけどね。どのドラマも同じモチベーションで臨み、全力で役に取り組むだけなんですけど、福岡というだけで、若干いつもよりテンションが上がっております」

会見後、中村CPが取材に応じた。

──従来までの福岡発地域ドラマとは作りが違うようですが?

「(特産品だったり名所だったり)福岡県内各地域の特性を生かした、これまでの地域ドラマとは異なるアプローチになるかもしれません」

──呼称も従来までの『福岡発地域ドラマ』ではない?

「もう『NHK福岡ドラマ』でいいかなと。『地域ドラマ』も、この間宮崎でやりましたし、ローカル局単位でドラマを作ることもわりとポピュラーになってきまして『福岡でやってますよ』ぐらいのイメージで」

──ロケ地は福岡市南区?

「(南区)が中心になります。今日は、これから(西区)愛宕浜で海辺のシーンを予定していますし、(中央区)天神でのロケなども散発的に予定。福岡市からは出ないですね」

──日程的には?

「今日クランクインしまして、天気などで大きな順延がなければ12月7日クランクアップ予定です」

──出演するネパールの方は素人でしょうか?

「全員、素人ですね。オーディションして、演技経験者はほぼ皆無。日本の劇団の方に演技指導していただき、異国の地で初の役者デビュー(笑)という方が6人ほどいらっしゃいます。セリフがかっちりある方が3人。その次ぐらいの方が3人ほど。ほか、群衆的な方を含め、総勢で30人くらい在福ネパールの方にお世話になります。おおよそ南区に住まわれている方々です」

──具体的なストーリーは?

「外国人アレルギーというかフォビア(恐怖症)というか、不快感に囚われていた主人公の若者が、浜辺で在福ネパール人の団体とトラブルになり、それが発端となって彼らのコミュニティーに連れていかれるんですね。そこで彼らの喜びや悲しみ、苦労を、大原さん演じる同世代の日本人女性との触れ合いを通じて、徐々に理解していく。『となりの~』というタイトルに象徴しているんですけど、自分たちの隣人がこういう人だったんだねって、気づく。その過程で、自分の中にあった人種差別的な、といったら大げさですけれども、外国から働きに来ている人たちを一段低く、無意識のうちに見ているみたいな意識に気づかされ『全然逆じゃん。自分の方が精神的に貧困な暮らしをしている』みたいに目覚めていく感じです」

──そんなにシリアスしているわけではない?

「はい。対外国人に限らずなんですけれども、誰もが思いがちな偏見だったり先入観だったりがあるけれど、そういうのって会ってみれば案外すんなりと解消されるよねっていう。あんまり大上段に構えなくても、結構そういう気づきって簡単に得られるよねって。それを象徴しているのがカレーで、温かさだったり、スパイシーな味わいだとかが、傷ついた心に沁(し)みてくる。食べ物を通じて異国の文化に触れるというのも、よくあることですし。在日外国人問題というと、すごく大変そうだな、面倒臭いなと思うところを、昨今ブームの本格カレーを随所に散りばめていきながらとっつきやすいお話にしていきたいかなと。10~30代の若者に関心を持って見ていただきたく、努力していきたいなと思っております。その考えもあって、佐藤さんと大原さんというフレッシュなキャストを主人公に据えさせていただきました」

──モデルになったカレーの店は南区?

「南区ではなく天神です」

──タイトルの「マサラ」とは?

「ガラムマサラ(ミックススパイス)などのように、混ぜたものという意味の言葉。制作陣でうんうんうなりながら考えたタイトルです。福岡って昔から外国の人がたくさん来られているという状態、さまというか、それも表してみました」