何歳まで生きれば得?老後資金を1000万円増やす方法について考える

「老後2000万円問題」が話題になりました。この2000万円が不足するという数字は、金融庁の金融審議会の報告書の中にある数字です。毎月の実収入が22万2834円、支出は25万5707円で不足金額は4万1872円ということです。毎月約5万円の不足が出るということで、90歳以上生きるとしたら総額で約2000万円が不足するということになります。

しかしこの数字は、つまり人によっては持ち家の場合を想定しているので、住宅ローンが残っていたり、賃貸だったりした場合は不足額が変わってきます。老後資金は2000万円ではなく、3000万円、4000万円が必要になってきます。

それに、もし認知症になると、さらに介護費用など必要額が増えていきます。そう考えると、できるだけ老後資金は多めに準備をしたいものですね。しかし現実には、2000万円の老後資金を準備するのにも大変です。それなのに3000万円も準備するなんてできない!とあきらめていませんか?

じつは、老後資金を簡単に1000万円増額する方法があります。今回は、本当に必要な老後資金の考え方と増やし方を解説します。


本当に必要な老後資金とは

まず、「老後資金は、本当のところどのくらい必要なのか?」という疑問です。この答えは、難しいです。いちばん無難な答えは、「人それぞれ」と言ってしまうことです。

しかし、この答えではなかなか納得できませんよね。もう少ししっかりとした目安が欲しいと思いますよね。そこで、私は、こう考えます。

老後資金の必要額は、老後生活の「収支のバランス」で決まります。老後生活の収支は、シンプル。収入は、公的年金、個人年金保険、企業年金などの年金が中心です。

支出は、生活費などが中心。収支のバランスで、収入より支出が多い場合には、老後資金からの取り崩しになります。毎月の取崩額×12ヵ月×死ぬまでの年数。死ぬまでの年数というのはわかりません。今40代、50代の人が高齢になった時には、平均寿命はさらに延びていると考えられるので、一応95歳として考えます。

たとえば、毎月5万円足りないとしたら、65歳から95歳までは30年間あります。老後に必要な資金は、5万円×12ヵ月×30年=2000万円です。

これがもし毎月10万円の赤字ならば、3600万円くらい必要になりますね。収入と支出が同じならば、老後資金はそれほど必要ありません。でも、介護が必要になった場合に800万円ぐらいの余裕資金は取っておきたいですね。

これが、必要な老後資金になります。

老後資金の大きな目標は、収支のバランスを取る

もし収支のバランスが取れているのであれば、多額の老後資金を用意する必要はなくなるということです。ではまず、老後の収支バランスを取る方法を考えてみましょう。

ひとつは年金の受給額を増やすことです。公的年金は、通常65歳から支給になりますが、60歳から70歳までの間であれば、いつから受け取ってもいいのです。65歳以降に受け取ることを繰下げ受給といいます。繰下げ受給をすると年8.4%の増額になり、70歳まで繰り下げれば、最大42%の増額になります。

iDeCoで積み立てたお金や退職金を利用して、70歳までの繰下げ受給に使ってみるのは、いかがでしょうか?

そして、収支のバランスを取るためには支出の見直しも大切になります。現役時代のような支出をしていては、老後資金がすぐに底をついてしまいます。

収入に合わせて、支出を見直すことが必要です。会社員として働いているときに、毎月の給料の範囲内での支出を考えるのと同じです。現役時代はボーナスなどを穴埋めに使っていたかも知れませんが、年金にはボーナスはありません。きっちり計画を立てましょう。

老後資金を1000万円増やす方法は

やはり、老後資金は多いほど安心ですね。あと1000万円くらい老後資金が増えればいいと思いませんか? じつは、意外と簡単に実現できるのです。どうすればよいかというと、繰下げ受給をするだけで、1000万円の上乗せになるのです。

先ほど繰下げ受給の説明をしましたが、繰り下げると増額された年金額は一生涯続くので、長生きをすればするほど得をします。残念ながら、早死にをすると損になります。その損益分岐点は約82歳です。82歳以上生きることができれば得になるのです。

具体的に説明をしましょう。たとえば、公的年金の受給額が年200万円の人が、65歳から年金を受け取ると95歳までの30年間に受け取れる総額は6000万円です。

ところが、70歳まで繰下げ受給をすると受給額は年284万円に増額になります。95歳までに受け取れる総額は7100万円です。ということは、5年間繰下げ受給をするだけで、1100万円増えるという計算になります。

ただし、95歳まで元気でいることが、前提になっています。もちろん早死にをすると少なくなります。とは言え総額で1000万円以上増えると考えれば、豊かな老後生活に近づくのではではないでしょうか。

65歳までにできるだけ資金は準備しておくことも大切

ここで問題なのは、65歳から70歳までの繰り下げている期間の生活費です。これは、iDeCoなどを利用して準備した老後資金を使ったり、また70歳まで働くということも考えられます。

この問題をクリアすれば、株式や投資信託であわてて資金運用するより、簡単に老後資金を増額できると思いませんか。ぜひ、検討してみてください。

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