型破りで進歩的 日本一の相撲部屋を目指す鳴戸部屋に密着

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師匠の鳴戸勝紀

__そこに秘められたドラマをあなたはまだ知らない

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一昨年の春。東京の下町、古びたビルの一室で鳴戸部屋の物語は始まった。

弟子はたったの三人。それでも親方は燃えていた。鳴戸部屋をいつか日本一の相撲部屋に。

創設から二年、鳴戸部屋はついに自前のビルを構えた。一階が土俵になっていて、総工費およそ3億円。新弟子もなんと6人も入門してきた。

三島は高校レスリングで全国3位に入った実力者。身長も190センチある。

櫻井は日体大相撲部の出身で、早々と部屋のムードメーカーになった。

中学を出たばかりというあどけない二人も。丸勝はヒューマンウォッチャーで長期の密着を続けている新潟県立海洋高校だ。

裏方も入った。中学を出て入門、角界最年少行司となった式守昴明。行司も各部屋に所属することになっている。

そしてもう一人。元林は、朝乃山らを輩出した近畿大学相撲部の前主将。将来を嘱望される怪物だ。

迎えた7月、名古屋場所。なんと鳴戸部屋の三人が全勝で並び史上初、三つ巴の優勝決定戦に。この前代未聞の同門対決を制したのは怪物、元林。

猛暑の8月、鳴戸部屋一行が向かったのは泣く子も黙る地獄の夏合宿だった。逃げ場のない山奥にぽつんと立つ一軒家。日本代表の合宿も行なわれ、あの吉田沙保里も通ったレスリング道場だ。

朝7時。まずは起伏の激しい山道を巨漢を揺らしながら7キロ走る。次は全速力での坂道ダッシュ。記憶が確かならお相撲さんがダッシュしている姿を初めて見た気がする。

こんな稽古をする相撲部屋、見たことがない。なんとも型破りだが、親方にはこれでいいという確信があった。

母国ブルガリアではレスリングをしていた鳴戸親方。自分が知る科学的な鍛え方と相撲古来の伝統的なやりかたを融合させれば、最強の力士を作れると考えていたのだ。

重要になる秋場所。注目は序二段だ。怪物元林を含め前回三つ巴の優勝戦を戦った三人が、揃って昇進している。そして千秋楽では元林が優勝決定戦を制した。

これで二場所連続の全勝優勝。海洋高校魂の丸勝と日体大出身の櫻井も好成績を収めた。結局、鳴戸部屋は12人中7人が勝ち越し、夏合宿の成果を実らせた。

次は九州場所、10月の末から鳴戸部屋は佐賀県唐津市の公民館を間借りして寝泊りしている。

地方場所での仕事は相撲を取ることだけではない。力士という名のプロ。地域との交流も大切な役割である。

この日は、鳴戸杯と銘打った少年相撲大会に駆けつけた。親方の真剣な眼差しは相撲界の未来に向いていたに違いない。こうした場所にもダイヤの原石はいる。

10月の終わり九州場所の番付が発表された。昇進を果たした弟子に親方から直接、雪駄が手渡された。なぜなら雪駄は三段目になって初めて履くことを許されるからだ。

守るべき伝統は守るのが親方のやり方だ。

三段目で戦う5人。注目はやはり、三場所連続優勝がかかる元林だろう。もしも元林が勝ち越せば鳴戸部屋初の幕下力士誕生となる可能性が高い。

後に続けと周りも意気込む。切磋琢磨。互いを磨く良い関係が今の鳴戸部屋にはある。型破りで進歩的。

角界に一石を投じようとしている鳴戸部屋。彼らが旋風を巻き起こす日はすぐそこに来ているのかもしれない。