突然、周囲がお金持ちだらけに それでも自分の金銭感覚を変えない方法とは?

お金を貯めるにあたっては、「貧乏時代から金銭感覚を変えない」ということが基本ですが、ついつい変えてしまうことがあります。それは、就職したり転職したり、出世した元同級生と会った時です。


同僚には超大手企業の御曹司

今回、MONEY PLUSのM編集者から「中川さんは博報堂に新卒で入って周囲が派手なカネの使い方をしている様を見ていると思います。それでも金銭感覚をいかに変えなかったのかを教えて欲しい」と言われました。これについては、博報堂自体は日本の会社の中ではそこそこ給料の良い会社と見られていることから来た質問といえるでしょう。

実際に多いのか少ないのかといえば当時の感覚からすれば「多い」と言うしかなかったです。私は4年で会社を辞めましたが、1999年・26歳だった3年目には860万円の年収がありました。養う人間もいない者としてはこれは十分「多い」額です。

確かに当時の同期の姿を見ても、合コンにはタクシーで行き、飲み会の帰りは躊躇することなくタクシーに乗っていました。住むマンションは1990年代後半~2000年代前半でありながらオートロック完備で恵比寿や目黒といった人気のエリアも多い。そしてゴルフをやる者もいました。

結婚式はそれなりにステータスの高い式場で行ない、妻は美人で相当日々のファッションやコスメにお金をかけているであろうことがすぐに分かる。さらには、同僚には超大手企業の御曹司がいたりもしました。彼らはその育ちの良さと実家の金持ちっぷりをひけらかすことはしないまでも、スーツは明らかに高級に見えたし、選ぶ店も私が大学時代によく行っていた「東京で一番旨くて安い店」を謳う居酒屋チェーン「一休」などには行きません。

「一休」はその場にいる人間全員が500円で入会できる「一休カード」を持っていれば、「9」がつく日や「19日」は激安になることで知られていました。今はどうなってるのかな~、とHPを見たところ、さらにすごくなっているではないか!

「月曜日と9の付く日」はおつまみとドリンクがすべて半額になり、火曜日はグループ全員が男性の場合は半額、水曜日はグループ全員が女性の場合半額、木曜日は会社員は半額となっています。

最近でも同チェーンではおトクになる企画をやっていました。11月12日から14日にかけてザ・プレミアムモルツ生とジムビームハイボールとレモンサワーが何杯飲んでも100円。しかも「税込108円」と軽減税率のような設定にしているのです。とはいっても、同店では一休カードを持っている客であれば普段はこれらドリンクが190円で、どう考えても普段から安すぎるのです。通常の店で生ビールを飲むと490円~650円はするものですからね。

私は学生時代、「一休」で十分満足していました。ある時などは年に有数の大キャンペーン日で、「生ビール1杯90円、サンマの塩焼き1本90円」となっており生ビールを12杯飲み、サンマを5本食べるなどして2,000円以下でグデングデンに酔っ払い、腹いっぱいになりました。社会人になった後でも「一休」で十分満足しましたし、今でも同店に学生から誘われたら行くことは厭いません。

「ステータス」に合わせる必要はない

お金が貯まらない多くの人は恐らく「自分はこの立場になったのだから、このレベルの生活をしなくてはいけない」という固定概念を抱いているからではないでしょうか。実際、私も「広告会社の社員はクライアントに対してカッコの良い姿を見せなくてはいけない」と言われ、高めのスーツを着た方がいいと言われたり、グレードの高い家賃の家に住むべきだ」、と言われたりしました。当連載でも再三申してきましたが、「どれだけカネを使うかは現状のステータスに合わせる必要はない。自分が本当に必要なカネを使えばいい」ということに行きつくのです。

だからこそ社会人なのに大学の寮に住んだり、カゴが取れたボロボロのママチャリで通勤をしたりしている状況を同僚に見せたら「ウチの会社にいるのになんで?」と言われました。ですが、「オレはこういう人間なんです」こうしたスタンスを貫き通した結果、何が起こったかといえば「中川は変人だ」という評価を得られる。これが実は良いのです! 一度「変人」の評価を得ると、行動が自由になるのです。

さすれば、「余計なカネは使わない」とか「ゴルフの誘いを断る」みたいなことであっても「まぁ、あいつはそういうヤツだからな」で終わり。女性とサシで飲食をするにしても、「大手広告代理店社員なんだから高級割烹とか高級フレンチに連れて行かなくてはいけないのかな」なんて感覚は一切持ったことはありません。

さすがに「一休」とか「養老乃瀧」なんかには行きませんが、「下北沢の老舗の焼き鳥屋・Sがウマいんですよ!」みたいな言い分が完全に通用します。単価は4,000円ぐらいですかね。「変人」評価を得ると、途端に節約人生を送ることが恥ずかしくなくなるのです。

こうした考えを持つのに加え、「他人と比較しない人生」ってものを心掛ければ別に周囲の金銭感覚に引きずられることはなくなります。学校もそうですね。結局私は小学校から大学まですべて公立でした。

「周りが“お受験”しているからウチもしなくちゃいけないんじゃないかしら……」なんてウチの両親は思わなかったし、貧乏エリアの公立に行ったものだから、「周りは“七五三”で着物を着たり写真館で記念撮影するみたいだけど、ウチはやらないでいいのかしら……」みたいなことは一切親は考えませんでした。その考えを私も引き継いだのですが、面倒くさかったり、お金がもったいないと思うのであればやらないでいいんですよ。

上流に合わせた末に

一方、私の姉は違いました。「上」の方に合わせてしまったんですよね……。今でも彼女のことをアホだな、と思うことがあります。彼女のお金の使い方というものは反面教師にしてきたところがあるのですが、立川第六中学校という公立からせっかく東京都の「第8学区」ではNo.1の立川高校に次ぐ第2位の「北多摩高校」に合格したというのに、なぜか「私立に行くのが格好いい」という当時のハイソな漫画やらちょっとしたきっかけで出会ったであろう知り合いの空気に流され、私立を受けるわけですよ。

結果的に某私立女子高に行くに至ったのですが、「制服がダサい」と散々文句を言ったかと思えば、入学からわずか半年でアメリカに我々の一家は引っ越すことになるわけです。 あの100万円の入学金はどうなるんだよぉ~という両親の悲鳴が聞こえてきそうですが、このミーハーな彼女のブランド志向というものはその後も続き、行った大学は日本屈指のお嬢様大学。

当然エスカレーター式のため、在校生は金持ちだらけ。「あのな、ウチなんてその学校からすれば階級が違い過ぎるんだよ……」と言いたくなるのですが、彼女はその大学へ入ってしまいました。

その後彼女は金持ちの娘である友人と行く店を合わせる結果になったため、バイトを必死にやる必要があり、一体お前は大学で何を学んだんだオラ、といった状況になってしまったように私からすれば感じられます。

「オレはオレ、あいつらはあいつら」

私が博報堂のそこそこ裕福な方(含む超お坊ちゃん、お嬢ちゃん)と同僚になってもそこに引きずられなかったのは、姉が分不相応なことを無理してやった無様で惨めな姿を何年か見てきたからかもしれません。私は「我が家は公立で大学まで行くべき家庭」だと思っていましたし、博報堂のような会社に入っても「オレは裕福な家のご子息とは違う」ということは分かっていました。

だからこそ、「オレはオレ、あいつらはあいつら」の考えが分かってきたのでは、と今は思っています。また、現在はそれなりにお金は稼いでいると思うものの、別に突然行く店のグレードを変える気もありません。

とはいっても、時には散財する必要があることは分かっています。毎週通う某飲食店があるのですが、その店の馴染みの店員が高級店に転職をしました。その店のオープニングスタッフとして請われて移ったわけですが、彼女の転職祝いはしたいですし、彼女がキチンとした働き者であることを新たな職場の人に見せる必要があると考えました。それまで彼女が務めていた店は2人で1万1,500円ほどです。

しかしその転職先、2人で45,000円! でもいいんです。こういう時はキチンと払いますし、店長や他の従業員がいる前で彼女に転職祝いのお土産を渡す姿も見せます。

とにかくお金の使い方というものは、周囲に流されることなく、昔と変わらぬ金銭感覚を持ち、必要な時は躊躇することなくドーンと払う。これでいい、とつくづく思っています。

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