「ラトバラに会わなければトヨタはWRCにいなかったかも」豊田総代表、チーム離脱3人に感謝

 2020年のWRC世界ラリー選手権に向けて、起用する全ドライバーを変更するTOYOTA GAZOO Racing WRT。トヨタ自動車代表の豊田章男チーム総代表が、2019年限りでチームを離れることとなったオット・タナク、ヤリ-マティ・ラトバラ、クリス・ミークの3名に対してコメントを発表した。

 11月19〜22日の最終戦ラリー・ジャパンまでの全14戦で構成される2020年のWRCに向けて、トヨタは起用ドライバーを一新。新たにセバスチャン・オジエ、エルフィン・エバンス、カッレ・ロバンペラの3名を起用してドライバーズチャンピオン、コドライバーズチャンピオン、マニュファクチャラーズチャンピオンの3タイトル獲得を目指す。

 これにあわせて、2019年シーズンを戦った3名はチームを離脱。タナクについてはすでに発表されているようにヒュンダイへ移籍するが、残るラトバラとミークについては現時点で去就は明らかになっていない。

 豊田チーム総代表は体制発表リリースのなかで、チームを離れる3名に対する感謝を述べている。豊田チーム総代表のラトバラ、ミーク、タナクに対するコメントは次のとおりだ。

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ヤリ-マティ、3年間ありがとう。

僕が初めて、フィンランドに行った時、トヨタは、まだWRC復帰を決めていなかった。

はじめてのWRCに興奮していた僕は、選手を直接見たくてホテルのロビーで出待ちをしていた。

そこに現れたのがフォルクスワーゲンのヤリ-マティだった。

ドキドキしながら声をかけると、君は実に気さくにこたえてくれた。

話しながら、僕がトヨタの回し者だと気づいた君は、自分の乗っていたカローラやセリカの話を、とても嬉しそうにしてくれた。

こんなにトヨタのことを覚えていてくれている選手がいる内にWRCに戻らなきゃ…と、復帰への決意ができたのは、あの時だった。

トヨタファンの気さくなフォルクスワーゲンドライバーに出会えていなかったら、今、トヨタはWRCにいなかったかもしれない(笑)。

その2年後、君がうちのエースドライバーになってもらえると聞いた時は、不思議な縁に本当に感動したよ。

そして、今だから正直に言うと、最初のシーズンが始まる前、1年目から勝てるなんて思っていなかった。あの時は「1年かけて表彰台に上ろう」が我々の目標だった。

でも、初戦のモンテカルロで君はすぐにトヨタを表彰台に導いてくれた。その翌月には、表彰台の一番高い所にまで連れて行ってくれた。本当に夢のようだった。

昨年、やっとフィンランドで君と一緒に表彰台に上れたのはとても嬉しかった。あとから写真を見返したら、オィットに渡されたシャンパンを僕は真っ先に君の方に向けていた。そのくらい君と上れたことが嬉しかったってことだと思う。

カローラやセリカをあんなに大切に乗ってくれている君だから、これからもトヨタのサポーターでいてくれると信じてます。よろしく。

クリス、君にも、今だから正直に話さないといけないことがあります。

君を迎え入れる時、ヤリスが転がったり、道を間違えたり、駐車場を走ってしまうんじゃないかと、すごく心配だった(笑)。

でも、君は、トヨタのために、しっかり仕事をしてくれた。どんな時でも限界までアタックしてくれたし、元エンジニアだからこそのアドバイスでヤリスを強くしてくれた。1年間ありがとう。

そして、オィット…。

チャンピオンという夢を君が叶えられたこと、自分のことのように嬉しく思う。そして、その手伝いをさせてもらえたことをトヨタは誇りに思っている。

僕は友山(GAZOO Racing Company プレジデント)と違って表彰台に上るのが苦手だったんだけど、昨年のフィンランドで君が初めて僕に高い所への上り方を教えてくれた。君のおかげで、やっとあの景色を見ることができたし、シャンパンがいかにベトベトするものなのかも知ることができた。本当にありがとう。

「目標を達成した今、環境を変えて次の挑戦に臨みたい。」という君の決断は本当に素晴らしいと思う。来年からは君がトヨタのライバルになる。強いライバルがいることは、僕らにとっての大きなモチベーションになってくる。

表彰台の上り方も、シャンパンの開け方も、しっかり教えてもらったから、次に表彰台で会う時は、上から君にシャンパンをかけることができると思う。また表彰台で会おう!

2018年ラリー・フィンランド表彰台。豊田章男チーム総代表は、まずヤリ-マティ・ラトバラへシャンパンを向けた

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