【MLB】ヤ軍が“不良債権男”への支払い義務28億円を拒否? 鍵握る医師が米メディアに証言

ヤンキースから契約解除となったジャコビー・エルズベリー【写真:Getty Images】

論争の中心となる医師が「仕事関連の怪我の治療をしていない」と証言

 ヤンキースは7年契約の1年を残して契約解除としたジャコビー・エルズベリー外野手への、来季の給料2600万ドル(約28億3000万円)の支払いに難色を示している。エルズベリーはこの2年ほど怪我などで出場機会がなかったが、球団はこの間の通院に問題があったとして支払いを避けようとしているという。この論争の鍵を握るのがプログレッシブ・メディカル・センターのビクター・ブーケット医師だ。

 米スポーツ専門メディア「ジ・アスレチック」は、ヤンキースがエルズベリーへの残りの支払いを拒否するためには、エルズベリーが球団の承認なしで外部の医師を訪問しただけでなく、仕事関連の怪我の治療を受けたと示さなければならないと言及している。この外部の医師というのがブーケット医師。同氏は、同センターは特定の怪我のリハビリだけでなく、根底にある原因を特定して治療し炎症を緩和させることにも注力しているとし、「仕事関連の怪我でエルズベリーを治療したことはない」と同メディアに語ったという。

 また、ブーケット医師は、ヤンキースはエルズベリーが5月に同センターで治療を受けていたことを当時から把握しており、さらにヤンキースからMLBで禁止されている薬物リストを把握しているか、そのリストに入っているものを投与しないように約束する書面の提出を求められたと取材に対して明かしている。その書面はエルズベリーが同センターで治療を受け続ける条件としてヤンキースが出したものだといい、ブーケット医師はその書面を5月31日にヤンキースに提出したと言及。「その時はエルズベリーの契約を解除しようとしなかった」とも“証言”している。

 一方でヤンキース側は、エルズベリーとブーケット医師から受けた情報が十分でないと考えているようだと同メディアは指摘。球団は治療が怪我のリハビリに悪影響を与えたと捉えているが、ブーケット医師は「ヤンキースから求められた記録を提出した」と記事内で語っている。ただ、エルズベリーが最初に訪問した時にヤンキースから承認を受けていたかは「分からない」とし、エルズベリーはあるプロのアスリートからの推薦で訪問したとしている。

禁止薬物に関して調査を受けているとの一部報道にも反論

「私が知る限り、(ヤンキースは)全く反対していませんでした。私がヤンキースから求められたことは、禁止薬物を把握しているか、それについて書面を提出することだけでした。(その時点では)ヤンキースとの連絡はそれだけでした」

 このようにも語っているブーケット医師。だが、ニューヨークの地元紙「デイリーニューズ」はMLBがプログレッシブ・メディカル・センターを禁止薬物の件で調査していると報じており、これに反論するように「炎症を起こしている人にアナボリックステロイド(筋肉増強剤)を投与すると、表面上は症状が緩和されたように見えるかもしれません。しかし、根本的な問題は大きくなります。実際は害の方が大きいのです」とも話したという。

 ヤンキース側の主張や薬物への疑惑などに一定数反論する形になった今回のインタビューだが、依然として決定打とは言い難く、球団も真っ向から対立する形となった。複雑な展開になったこの問題はますます注目を集めそうだ。(Full-Count編集部)

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