高級ラーメン屋の真実 一杯4800円! 一部ネットで不評の高級ラーメン店に行ってみた結果、意外な事実が

あの話題のラーメン(筆者撮影)

山手線の某駅から徒歩2分の高級ラーメン店。高額の飲食代、高飛車な店主の悪評ばかりがインターネット上に広まっています。ティッシュで鼻をかんだら店主に叱られたとの投稿までありました。

でも、味に関する誹謗中傷のコメントは、ほとんど見つかりませんでした。きっとおいしいのでしょう。残念ながら店に3回足を運びましたが、閉店していましたので一時は断念しかけた時もありました。お店に電話してもつながらない日々が続きました。不定休と記載されていますが、悪評のあまり店を閉めてしまったことを心配もしました。近隣の知人に開店状況を確認してもらったり、日々お店に電話をかけたりして、ようやく開店している日を確認。お店に潜入です。

4800円ですがよろしいですか?

小雨の日に店に立ち寄りました。暖簾をくぐると、大名屋敷を彷彿させるような上品で気品のある空間。L字型のカウンターには11席。午後の中途半端な時間にもかからず、6席埋まっています。お客様は黙々と召し上がっています。店内にはアコースティックギターのBGMが流れる他は、食器の音しかしません。

席はラーメン店にしてはゆったりとしています。カウンターの中では店主が調理に夢中。白髪の老夫婦で切り盛りしているようです。女将さんが「いらっしゃいませ」と出迎えて下さいました。女将さんはベリーショート、店主は自民党の甘利明さんに俳優の梅宮辰夫さんをブレンドしたマスクに、声は石原慎太郎風です。

以下、時系列でレポート。

――傘立てはどちらでしょうか(尋ねたものの沈黙が24秒)

「いらっしゃいませ。こちらに座って下さい」

傘の件はスルーされてしまいました。

――傘は席まで持参してよろしいのでしょうか?(沈黙13秒)

「そちらに」

職人気質でやや不愛想なだけのようです。メニューを拝見するとA3見開きでたくさんありましたが、鶏蕎麦等が2500円。その他は限定麺が並び値段が記載されていませんでした。九十九里浜のシジミ、浜名湖のアサリ等食材の産地にこだわっているようです。

――限定麺でできるのありますか

店主「どちらにしますか? 言ってください。フカヒレは今日はないです」

――アサリできますか

店主「はい、4800円ですがよろしいですか」

――大丈夫です。あさりお願いします(同伴者は鶏蕎麦を注文しました。ピータンのトッピングが500円、飲み物はこの日はジャスミン茶とウーロン茶のみで、それぞれ500円でした)

インターネットの投稿では、事前に値段を提示しないとか、恫喝する等の記載が散見されましたが、別の店員の方がいらしたのでしょうか? ネット上ので散見したイメージよりも、ずっとマトモです。(1分12秒経過)

女将「はい、どうぞ」

お水が出てきました。

――先週来たら、閉まっていましたが、何曜日がお休みなのでしょうか?

女将「先週は、ずっと休みだったんです。はいっ、どうぞ、おしぼりです」

メニューを改めて拝見すると、料理を撮影する場合は、事前に許諾を得る旨、店員、店内の撮影は禁止の旨が記載されていました。

――お料理のお写真撮らせていただいてもよろしゅうございますか?

女将「はい」

――産地直送で入れているんですか?

女将「……」

――お水に炭が入っているですね(お水のピッチャーの中に炭が入っているのが印象的でした)

女将「はい、鶏蕎麦」

先に鶏蕎麦が出てきました。注文から7分27秒経ちました。

店主「どうぞ。こちらがアサリになります。これが殻入れ」

私は食道炎を患っており、脂っぽいと体調が悪くなるのですが、あっさりとしてとても美味しく優しい味でした。箸は進み、スープも最後の一滴まで残さず頂きました。アサリも大きく柔らかかったです。

せっかくなのでサイドメニューも頂きたく、肉みそのサラダ(1900円)も頂きました。

ネット上で無愛想とされている主人は単に職人気質の照れ屋だった

――ドレッシングも自家製ですか

店主「ドレッシングも作りますよ」

――すごくおいしいですね。感動しました。メニューがたくさんあるので通わせていただき、制覇させていただきたいです

女将「ああ、ありがとうございます。」

――マスターはホテルのシェフご出身でいらっしゃるのでしょうか。

店主「……」

女将「はははっ、照れちゃって答えられないですよ。」

――こんなにおいしいラーメンは初めていただきました

店主「はい、ありがとうございます。人の経歴とかお店のこととか、インターネットは適当なことばかり書いているでしょ。嘘ばかり」

――インターネットのイメージではコワいマスターを想像していたんですが、昭和の映画スターのような素敵な笑顔でいっしゃいますよ

店主「……」(照れ笑い)

――これだけ美味しかったら、貸し切りのお客様もいらっしゃるのでは? 一人二万円くらいなら貸し切りできますか?

店主「そうね。一人、2万から3万で貸し切りのお客さんがいますね」

貸し切り営業で一人2万円としても22万円の売上になります。

――レタスも美味しいですが、産地直送なのでしょうか。魚介類等は仕入れに産地に買い付けにいらしたりするのでしょうか?

店主「俺、仕入れに行かないから。時間かかるから市場で買った方がいいよ。わざわざ行く意味ないでしょ。飲食関係者なの?」

――私は飲食関係ではありませんが、友達の飲食店経営者が産地に買い付けに行ったりもしているようです

店主「鶏とか自分で仕入れるの? 行かないでしょ? 普通。そういう風な考え方がおかしいよね。持ってくるまでに鮮度落ちるでしょ。でも、製麺を自分でやっているところはないでしょ。だいたい業者の麺を仕入れている。ウチは自家製麺だから」

私達が飲食している間にお客様も三組来店なさいましたので、適度な回転率でしょう。行列に並ばないといけない店よりは幸せにおいしく頂けると私は思いました。

――美味しいお料理に感動しました

店主、女将「ありがとうございます」

会計を済ませて、帰途に就く私たちに三回も「ありがとうございます」と連呼してくださったお二人。職人気質で、やや不愛想なお二人の言動が気に入らなかった一部の人の投稿に愉快犯が便乗した可能性があるのではないでしょうか。

試しに私が鼻をかんでも、恫喝されませんでしたし、「ティッシュありますか」とおっしゃった他のお客様には女将さんが差し出しているシーンもありました。店名の英語の花言葉は、「純粋」「幸福の再来」「謙遜」。次にお店にうかがったら、幸福の再来を満喫できそうな気が私はしました。(文◎星野純連)

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