新庄剛志氏が「自由契約選手」として公示 「任意引退」との違いはなに?

自由契約選手として公示された新庄剛志氏【写真:Getty Images】

日本ハムから自由契約選手、NPBが公示

 11月27日、日本野球機構(NPB)は、元プロ野球選手で現役復帰を表明した新庄剛志氏を自由契約選手として公示した。日本ハムからの要請を受けてのものだ。新庄氏が日本ハム球団に現役復帰の意向を伝えたことから、今回の措置が行われたと思われる。

 一度プロ野球選手として球団と契約した選手が、現役生活を経て「自由契約」になることなく、引退を宣言して野球界から離れた場合、「任意引退」という扱いとなり、再度プロ野球に選手として復帰する場合は元在籍した球団としか契約交渉できない。

 新庄氏の場合も、2006年11月18日に本人の希望もあって「任意引退」になっていた。このためNPBに現役復帰する場合は日本ハムとしか交渉できなかった。

日本プロフェッショナル野球協約

 第59条(任意引退選手) 1 選手が参稼期間中又は契約保留期間中、引退を希望する場合、所属球団に対し引退したい理由を記入した申請書を提出する。球団は、当該選手が提出した申請書に球団としての意見書を添付し、コミッショナーに提出する。その選手の引退が正当なものであるとコミッショナーが判断する場合、その選手の引退申請はこの協約の第78条第1項の復帰条件を付して受理され、コミッショナーによって任意引退選手として公示され、選手契約は解除される。 2 任意引退選手は、引退当時の所属球団の文書による申請により、コミッショナーが前項の公示を抹消したときには自由契約選手となる。

 第78条(復帰すべき球団及び引退中のプレー) 1 コミッショナーにより復帰申請が許可されるためには、任意引退選手、有期又は無期の失格選手は、引退又は処分当時の所属球団に復帰しなければならない(中略)。

野茂氏のメジャー挑戦では近鉄が任意引退とした

 新庄氏は第59条2項によって、自由契約となり、全球団との交渉が可能になった。

 野球選手は引退の仕方によって、再度復帰する場合には立場が異なるのだ。1994年オフ、近鉄のエース、野茂英雄氏は球団との契約更新を保留し、MLBへの挑戦を表明した。しかし近鉄側は野茂氏を自由契約にはせず、任意引退とした。これによって、野茂氏は日本球界に復帰する場合には、近鉄としか入団交渉ができないこととなった。

 野茂氏はNPB出身2人目のメジャーリーガーとして123勝を挙げる大活躍。しかし、40歳になる2008年の4月にカンザスシティ・ロイヤルズを戦力外となった。もし、野茂氏がこの時点でNPB復帰を考えたとすれば、本来は近鉄としか入団交渉ができないはずだった。しかし、近鉄は2004年の球界再編でオリックス・ブルーウェーブと合併、実質的に消滅していた。野茂氏に日本球界復帰の可能性が取りざたされた際に、球団を引き継いだオリックスの任意引退選手になるのかどうかが話題となったが、前例がないことであり結論は出なかった。その後、楽天が入団交渉の意思を示したと報じられたが、野茂氏は楽天のオファーに応じず、この年7月に引退を表明した。

 現在では海外移籍をする選手は、海外FA権を行使するか、ポスティングシステムを利用してNPB球団を自由契約になって移籍するので、野茂英雄のようなケースは起こらない。NPB球団を退団する際に、自由契約ではなく任意引退となった選手は、何年経っていてもNPBに復帰する際には、新庄氏と同様、球団の承認が必要となるのだ。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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