FXの損失100万円“塩漬け”状態、損切りの決断ができない

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、塩漬けになったFXをどうすべきか悩んでいる39歳の主婦。余剰資金ではあるものの損失額は100万円にも上り、損切りしたくてもなかなか踏ん切りがつかないといいます。FPの伊藤亮太氏がお答えします。

塩漬けになったFXをどうするべきか、迷っています。2015年くらいに購入した米ドル、ユーロ、オーストラリアドルのFXが、マイナス100万円くらいになっています。余剰資金なので早急に現金化する必要はなく長期保有しておこうという気持ちがあるものの、マイナスを見るのは気持ちがいいものではないので損切りしたいとも思います。しかし、100万円となると躊躇してしまい、迷っているうちにここまで来てしまいました。アドバイスをいただけるとうれしいです。よろしくお願いいたします。

〈相談者プロフィール〉

・女性、39歳、既婚(夫:40歳、会社員)

・子供1人:6歳(保育園)

・職業:会社員

・居住形態:賃貸

・毎月の世帯の手取り金額:85万円

・年間の手取りボーナス額:400万円

・毎月の世帯の支出目安:50万円

【支出の内訳】

・住居費:11万円

・食費:10万円

・水道光熱費:1.5万円

・教育費:5万円

・保険料:1.5万円

・通信費:1万円

・車両費:1万円

・お小遣い:8万円

・その他:10万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:35万円(うち預貯金は5万円)

・現在の貯蓄総額:1200万円

・現在の投資総額:3000万円

・現在の負債総額:なし


伊藤:ファイナンシャルプランナーの伊藤亮太です。

ご相談者さまのように、投資による損失で塩漬けになっているケースは多く見受けられます。ただ、ご相談者さまの場合は、100万円ほどの損失であり、現状の貯蓄額や投資総額から見ればそこまで大きな損失にはなっていないと思います。

その他の投資状況にもよりますが、仮にFXのみに損失が発生して、その他がプラスとなっているのであれば、気持ちよく処分するために他のプラス資産を多少売却すると同時に損切りも行い、なかったことにしてみてはいかがでしょうか。

ただし、FXの場合には、株式など他の金融商品(一部デリバティブ除く)のプラスとは損益通算ができません。なお、翌年以降3年間にわたって繰り越し控除ができるため、短期売買でFX等を行い、利ざやを稼ぎ、その後繰り越し控除を活用するといった方法は検討できます。

世界情勢・金融情勢を考慮した判断を

ご相談者さまの場合、長期保有しようとするのは、塩漬けになったからなのか、そもそもレバレッジをかけずに長期保有しようとしていたからなのか、どちらの理由かによって長期保有すべきかどうかも変わってくると思います。

例えば、スワップポイントを重視し、損失分をスワップポイントで軽減していくこともひとつの手段です。

そこで考えるべきポイントは、今後の世界情勢・金融情勢です。仮に世界情勢がさらに不安定になり、金融危機とまではいかないにせよ、景気悪化に伴い世界的にさらなる金融緩和が行われることになると、相対的に見て日本円は円高へと流れが生じる可能性もあります。こうした状況になれば、損失はさらに膨らみ、かつスワップポイントも減る可能性があります。

もちろん、米中の関税問題が解決し、ドイツなども含め世界各国で財政出動が生じ景気に弾みがつくようなことが起きれば、リスクオン状態から世界的に株価が上昇、為替も円安へと流れが変わる可能性もあります。米国がいったん利下げストップの状況にあるのも救いです。

どちらに世界が向かうと考えるか? これにより判断が変わってくると思います。

損切りする場合としない場合の対処法

今の状況で精神的にマイナスとなるのであれば、例えば半分お売りになって、残り半分は少しでも円安になったら売却するというのもアリでしょう。いさぎよくすべてを売却し、その分を他の金融商品で稼ぎカバーするのもアリです。

また、普段の貯金でカバーできるなら、勉強代として損切りするのもよいのではないかと思います。そしてリスタートかけるほうがよいように思います。

仮に継続して長期保有で持つなら、レバレッジをかけている場合にはロスカットに注意する必要があります。レバレッジをかけていないのであれば、そのまま保有しスワップポイントを稼ぐほか、追加で外貨を買い単価を下げる方法も検討しましょう。

豪ドルは米中の関税問題の影響も受けていますので、好転すればある程度は戻すことも想定できますので、追加で購入し損失を軽減できるような体制をとるのもよいと思います。

2020年11月に米国の大統領選挙があります。あくまでも私の見解ですが、少なくともそこまではボラティリティが大きくなるものの、最終的には世界的な株高・円安(外貨高)はある程度続くのではないかと考えます。

ただし、大統領選挙が終わった後はどちらに転ぶかを想定するのが難しいため、2020年中にある程度売却をはかっておいたほうがよいかもしれません。

一歩踏み出して、売却してすっきりするのも手

まとめになりますが、株式など他の投資で利益を稼ぎつつ(もちろん本業でも)、FXでマイナス軽減をはかるか、損切りして他の投資へ振り向ける方向を検討されてはいかがでしょうか。

ご相談者様の相談内容を見ると、売りたいのだけどその一歩が踏み出せないという気持ちが強いようにも思います。とりあえず売却し(その後のことはその後考える)、すっきりするのが一番良いかもしれませんね。

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