エボラに第二のワクチン登場、MSFが接種を開始

史上2番目に大きな規模となったエボラ流行が続くコンゴ民主共和国(以下、コンゴ)に、新たなワクチン( Ad26.ZEBOV/MVA-BN-Filo)が導入され、北キブ州ゴマ市内の2つの保健地区で11月14日から接種が始まった。国境なき医師団(MSF)は、今回の接種と臨床試験に取り組む共同事業体にパートナーとして参加。コンゴ政府および国立医生物学研究所(INRB)との協力の下、MSFはこのワクチンの接種を担当する。

MSFの地域連携チームは、最初の接種地区に選ばれたマジェンゴ地区とカヘンベ地区で、住民との対話を重ね、予防接種についての情報を伝え、住民の疑問に答え、接種の準備を進めてきた。まず4ヵ月間で5万人の接種を目指している。

今回のワクチン接種でMSFのプロジェクト・リーダーを務めるジョン・ジョンソンに、新しいワクチン導入の意義について聞いた。

新たに接種が始まったワクチン © Gabriella Bianchi/MSF

新たに接種が始まったワクチン © Gabriella Bianchi/MSF

Q. なぜ第二のエボラワクチンを導入する必要があるのでしょう?

ワクチン接種はエボラウイルスから人びとを守るための鍵となる手立ての一つです。すでにコンゴで使われているメルク社製のワクチン「rVSV-ZEBOV」は効果が証明されており、エボラ流行対策の重要な核になっています。

今回の第二のワクチン導入の意図はrVSV-ZEBOVとの差し替えではなく、これを補完するもので、うまくいけば将来のエボラ流行に備えて追加の対応策が得られることを期待してのものです。コンゴではこれが10回目のエボラ流行ですから、第二の選択肢となるワクチンを求めることには意義があるでしょう。 

Q. 今回のワクチン導入で目指していることは?

臨床試験の第一の目的は、実地の環境におけるワクチンの効果についてのデータ収集です。検査室での試験ではエボラに高い免疫反応を生じさせることがわかっていますが、検査室の外での有効性を確認するには、流行中に導入するしかありません。要するに、今回の臨床試験の目指すところは、このワクチンが実際の流行において人びとを守れるのだと証明することです。

実地の環境で検査する理由はほかにもあります。たとえば、このワクチンが人びとにどう受けとめられるか把握すること、そして、このワクチンは2回の接種を必要とするので、流行時に2回接種という方法が現実的か否か、対象者が予定通り2回目の接種に来るか否か、などを検証することです。

今回のワクチンはジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)社の医薬品部門ヤンセンファーマグループ製で、人を対象とした初期の試験において良好な安全性を記録しているものの、安全性に関するデータがさらに集められます。また、このワクチンの導入と試験をさらに進めれば、将来の流行に使う際に役立つことにもなります。
 

Q. 新規の患者数が減ってきていることは、臨床試験に影響しますか?

週ごとに報告されている新規の症例数は減りつつあります。患者が減ることは間違いなく朗報ですが、ワクチンの有効性を確認することは難しくなるかもしれません。今回のワクチン接種は現行のエボラ感染地域の近隣に住む人びとへの提供を目指しており、リスクに直面する住民を守ってくれるものと期待しています。

流行がこれからも続き、今回の予防接種を実施した地域にまで及んだときに、接種を受けた人びとが守られたことがわかります。それは、地域の人びとにとってもエボラへの勝利となりますし、ワクチンの有効性も確認できることになるのです。 

ワクチンについて説明するMSFスタッフ © Gabriella Bianchi/MSF

ワクチンについて説明するMSFスタッフ © Gabriella Bianchi/MSF

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