7年間の“不倫同棲生活”を終え…38歳女性の今

不倫の恋といっても、その形はさまざまです。昨今、多いのはお互いに既婚で、家庭を壊さないようにつきあうダブル不倫ですが、中には夫が家を出て独身女性の元へ身を寄せるケースもあります。


いつか一緒になりたかった

29歳で彼に出会い、30歳から一緒に住んで7年、そして今年の夏に彼と別れたというのはタカミさん(38歳)です。5歳年上の彼とは職場恋愛でした。

「とはいえ、当時から彼は結婚していましたから誰にも言えない関係でした。彼との関係がどんどん強くなって、『家を出て一緒に住もう』ということになったので、それをきっかけに私は転職しました」

当時、彼には3歳年下の妻との間に、すでにふたりの子がいました。しかも彼の両親と同居していたのだそうです。

「私はワンルームに住んでいたので、広めの1LDKに引っ越しました。そこへ彼が身の回りのものだけもってやってきたんです。いったい、親や妻にどう言って出てきたのか気にはなりましたが聞くことはできませんでした。私は彼と一緒にいられるだけでいいと本気で思っていた」

彼は離婚を望んでいましたが、妻と子どもたちは自分の両親と暮らしています。そこに彼の苦悩もあったようです。

「彼の父親はすでに定年になっていましたが、その後も働き続けていたし、お母さんも仕事をしていたようです。彼の給料の半分は妻の元へ、半分は私に預けてくれました。“奥さん”として暮らすのは本当に楽しかった」

毎日、連絡をとりあって落ち合い、外で食事をしたり一緒に帰宅して夕飯を作ったり。彼もそんな生活を楽しんでいるように見えました。

「ときどき子どもさんの学校行事などには参加していましたね。彼はそれを隠さずに言ってくれるし、私もよけいな嫉妬はしませんでしたから、ケンカひとつしたことがなかったんです」

彼女の誕生日のたびに、彼は「来年のタカミの誕生日までには離婚するから」と言い続けました。彼女は彼を信じていたので、「急がなくていい。いつかそういうタイミングが来るから」と言い続けていたそうです。

突然の破局を迎え

ただ、5年ほどたったころタカミさんは少し焦り始めます。

「このままだと立場的にも経済的にも子どもが産めない。35歳のときにそう思って、彼にせめて子どもだけは産みたいと言ったんです。彼は少し考えてから、『そうだよね』と。ふたりで納得の上、それまでずっと飲んでいたピルをやめました。いつ妊娠してもいいと思って覚悟を決めたんです。戸籍にはこだわりませんでした。子どもが生まれたら、奥さんが離婚してくれるかもしれないという期待もありました」

ところがなかなか妊娠はしませんでした。かといって不妊治療をする気にはなれなかったといいます。最優先は彼との生活、子どもは授かりものだと思うしかありませんでした。

「それから2年ほどたった今年の夏、ある日突然、彼のお母さんが訪ねてきたんです。日曜日の早朝でした」

彼の母は、タカミさんに向かって深く頭を下げました。

「この子の父親が昨晩、倒れました。今も意識は戻っていません。倒れる前にも息子夫婦の将来を心配していました。私はアユミ(彼の妻の名前)の苦悩をずっと見てきて、もう我慢してはいられない。そう思ったから来たんです。息子を返していただけませんでしょうか」

怒鳴られ罵倒されてもしかたがないと思っていた人に、土下座までされてタカミさんの心が揺れます。彼はそばで泣いていたそうです。

その涙を見たとき、タカミさんはこのままではいけないと強く感じました。

「私が別れないとごねることはできる。そうしたら彼はこのままの暮らしを続けてくれるだろう。でも、本当にそれでいいのだろうか。お母さんの伸びた白髪を見ながらそう思いました。彼が去った家庭では、義父母と奥さん、そして子どもたちも苦しんでいるに違いない。そしてこの人は私を責めてはいない。その懐の深さに負けたんです」

タカミさんは、彼に「荷物はあとで送るから、おかあさんと一緒に帰って」と言いました。不思議と涙は出ませんでした。
帰り際、彼の母はふくらんだ封筒を差し出しました。

「あなたの気持ちをお金でどうこうという意味ではありません。私たちの謝罪と受け取ってください」

現実に向き合う一歩に

彼が母親と出ていったあと、彼女は1日中、座り込んで泣いたといいます。封筒の中には200万という大金が入っていました。

「その後、彼に荷物を送るためにやりとりしていたら、おとうさんは亡くなったそうです。家は針の筵だと嘆いて、彼はときどき連絡を寄越してよりを戻したいと言ってきましたが、私はあのおかあさんの様子が目に焼きついていたので、彼を受け入れることはできませんでした」

とはいえ、彼女の喪失感は強く、あっという間に7キロもげっそりと痩せたそうです。別れて数ヶ月。今は少し落ち着いたものの、彼と暮らした部屋にいるのがつらく、もうじき引っ越すそう。新たな部屋を借りるため、あのお金を使いました。

「これからどうしたらいいんだろう。そんな現実的なことをようやく考えられるようになりました。結局、子どもは産めないままなんでしょうね」

この恋愛を、いつかどう総括するのか。それが彼女の未来への一歩となるのかもしれません。

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