ママ友たちとの悩みがきっかけに。議員としての苦労の先にあるやりがいとは(やなざわ亜紀 港区議会議員へのインタビュー・聞き手:池田麻里)

「女性議員が増えることで、本当に、暮らしやまちは良くなるのか?」
2018年5月に成立した「候補者男女均等法」では、女性候補の割合を50%にするよう政党に努力義務を求めています。女性議員の増加は、政治や社会にどんな変化をもたらすのでしょうか。政治の現場で活躍する女性議員へのインタビューを通じてその実情に迫ります。

今回は自民党の港区議会議員やなざわ亜紀さんにお話を聞きました。美人すぎる政治家として注目されたことで多くのご苦労もされたとのことでしたが、待機児童解消や女性政策に取り組むなど経験を重ね、現在3期目を務めています。(聞き手:池田麻里

ママ友たちの悩みを解決するために

池田麻里(以下、池田):全く政治に関係する経験の無いままに選挙に初挑戦なさったのですね?

やなざわ亜紀・港区議会議員(以下、やなざわ区議):はい。全くなかったので、ピンと来なかったというのが最初の印象ですね。

池田:お子さんが生まれて、でも、簡単に保育園に入ることができなくて、社会に課題があるなということが区議会議員を志したきっかけと伺いましたが、課題を解決するためには、例えば、保育園を作るとか、色々な方法があると思うのですが、その中で、区議会を目指されたのはどういった理由があったのでしょうか?

やなざわ区議:保育園を作るっていう考えは思い浮かんで3秒くらいで消えたんです。周りにたくさん保育の素晴らしい事業者さんがいるにも関わらず、待機児童の問題が解決しないとか、どうしてこんなに上手くいかないのだろうかって思ったんですね。そこの根本を解決しなきゃいけない。事業者さんが保育園を新設したり、動きやすい、仕組みを作らなきゃいけないと思ったので、区議会議員を志しました。

池田:それまでは、区議会議員とか政治家がどういう仕事をしているのか、というイメージはお持ちでしたか?

やなざわ区議:区議会議員については、それも無くて(笑)
必ず投票には行っていたのですが、投票先を覚えていないぐらいの関心だったんです。それが、保育園の課題に気付いて、調べてみると、保育園の設置の許可は基礎自治体だと分かりました。そこで、区議会議員さんたちはどんな活動をしているのかな、ってホームページを見るようになって、そしたら、子育てしていたり、子育て政策をうたっている議員さんがすくなくて。
今でこそ、港区議会にも女性議員が増えて3分の1以上いるのですが、当時はまだまだ少なかったですし、私自身がママの代表として声を届けなきゃ!と思いました。

池田:選挙に挑戦しようと決意されて、最初の仲間づくりとか準備というのはどうやって進められたのですか?

やなざわ区議:仲間づくりという点では、子供が生まれて日常の子育てをしていく中で、自然にママ友ができて、そのママ友たちと一緒に、これが足りないよね、とか、もっとこうだったらいいのに、という話をランチや公園でしていたので、そのママ友たちが「亜紀ちゃんが、変えてくれるんだったら応援するわ!」と言ってくれて。一生懸命応援してくれました。

池田:ご出身地でないところでの挑戦ということで……

やなざわ区議:そうなんです!今思うと、狂気の沙汰だったなと思うのですが(笑)
あの時は、どうしてこうなってるんだ!という怒りだったり、変えたい!やらなきゃ!という使命感が強くて。

池田:(笑)そうすると、選挙ってこういうものっていうのを知らなかった時だから挑戦できた感じですかね(笑)

やなざわ区議:本当にそうですね。あれもこれもやらなきゃで夢中でしたね。子育ても、まだゼロ歳だったときで、民主党から立候補しましたが、当時は民主党政権下で最悪の時期でしたし、不安も大きかったですけどね。

池田:最初の選挙の時に、ご自分なりのやり方、工夫はありましたか?

やなざわ区議:んー、そうですね。街頭演説をして、チラシを作って、ホームページを作って、SNSを開設して、それから、地域を歩きましたね。町内会とか。高層マンションが多いエリアでしたし、ママ友も他地域から港区に流入してきた人が多くて地域団体との関りは薄かったのですが、区議会議員たる者、やはり地域を歩かなくてはダメだということを聞いて。そうなんだ!と思いまして。「この度、選挙に出ようと思っております、やなざわと申します」というご挨拶から始めました。

池田:千代田区とか、港区って、住民というイメージが捉えにくいような、どこに区民がいるんだろうというような気が、外から見ているとあるのですが

やなざわ区議:港区議会だと1000票から1200票が当選ラインですが、ママ友がそれだけいるかといったらいないですし、例えば自分が直接、挨拶だけではなく、話しをするほど、交流が持てるお友達といったら1日多くて30名とかですから、そこからの拡がりも限られていますし……。そもそも、当選するのかしないのか、全く分からなくて。
高層マンションが多いですし。

池田:高層マンションって、ポスティングもできないですしね!

やなざわ区議:そうそう。やったら怒られるし(笑)
だから、できるだけ多くの方に、港区民の方ではないかもしれないですけれど、日本国民の方、外国人の方も、みんな子育てしづらさを抱えていらっしゃったり、困っていたり、共感してもらったり、応援していただける部分があると思うので、港区民に対してというよりも、皆さんに対して、という感じで訴えていましたね。

池田:当選後は、ご自身が想像していたような活動ができましたでしょうか?

やなざわ区議:議員になる前は、区議会議員になったって何も変えられないよ、と言われることが多かったのですが、実際に議員になってみると、もちろん理解を得られるまでの過程には苦労もありましたが、こんなに変えられるものなんだと、変わるものなんだと、想像以上にそう思いましたね。

池田:当初は女性議員も少なかったということですが、もともとのお勤め先は資生堂ということでとても女性が働きやすい職場ではないかと思うのですが、そこから急に男性社会である議会にきてどうでしたか?

やなざわ区議:資生堂は本当に女性が子育てしながら働きやすい職場なので、自身が(ゼロ歳児を)出産して、社会は全然違うなと驚いたんですね。それは政界に入る前なんです。こんなにも差があることを変えなくてはいけないと思ったので、議会に入ってからの違いは感じませんでしたね。もう子供を産んだ時に既に感じていたので。
議会に入って思ったのは、男性ばかりというよりも、区民の方からより多くのご相談をいただくので、自分が思っている以上に女性が働きにくい、子育てしにくい職場があるんだと知りました。社会で女性政策がまだまだ追いついていないという現状を知りましたね。

池田:子育てと議員活動との両立はいかがですか?

やなざわ区議:職場としての議会というよりは、土日と夜の地域行事等が多すぎて、そこはやっぱり女性が飛び込みにくいところなのかなと思います。必ず出席しなければならないもの、出席したほうが望ましいところ、で土日はぎっしりになってしまいます。夜も、出席するかどうかは自分の意志次第ではありますが、町内会や団体などの会合、式典、勉強会が多い。
私も今、一番の悩みは自分の時間が全くないことです。シングルマザーでずっと来ていて、正直、身体もガタが来ている感じですね。

池田:うーん、どこまでやるかですよね……

やなざわ区議:そう、どのレベルまでやるか。難しいです。
今、3期目ですが、選挙については、3期目は2期目を当選しているのでイメージしやすかったのですが、初めての選挙と2期目の選挙は、自分がやってきたことが、区民にどう評価していただけるのかがあまりにもイメージしにくいので、1期目の時はとにかく全て出席していました。すごく大変でした。2期目は少しイメージできるようになったので、出るものと出ないもの、本当は出なくていいものなんて一つもないのですが、自民党なので地域ごとに議員さんもいらっしゃるので、他の地域のことは地域の議員さんにお任せしよう、という風にしてきて今があります。

池田:他の女性議員からも1期目の壁についてお聞きしました。議会や行政でのスピード感と自身の政策実現のスピード感のギャップや、議会や地域でのセクシャルハラスメントや、後援者との距離感、そういったことに悩む方も多いようです。

やなざわ区議:うーん、それは今も悩みますね。
今は議会でも女性の活躍とか、セクシャルハラスメントへの理解も進んできましたし、最近では票ハラスメントという言葉も出てきましたが、それでもハラスメントを感じることはありますし、初当選当時は、私自身も子供は連れて行かないようにと自粛したり、子育て中だから出席できません、とは言えなかったです。

池田:初めて選挙に出た女性候補者から相談を受けたことがあるのですが、選挙区ではない地域の男性から、繰り返しポスターを送って欲しいと依頼があったりとか・・・

やなざわ区議:あります、あります。

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