【社説】「桜を見る会」疑惑 なぜ反社会的勢力まで

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 来春の開催中止が決まった「桜を見る会」を巡る疑惑が深まっている。とりわけ反社会的勢力の関係者が出席していたと報じられ「写真があるのなら結果として会場にいたのだろう」と、菅義偉官房長官が人ごとのように答えたことに驚く。

 野党は衆参予算委員会での集中審議を求めてきた。与党は来月9日までの国会会期は延長しない構えという。主催者である安倍晋三首相が審議に応じないままなら、政治家の倫理にもとる。参加者が増え過ぎたことの「反省」にとどまらず、責任の所在を明らかにすべきだ。

 反社会的勢力の出席を巡るはぐらかしはこれだけではない。「結果として会場にいた」と述べたかと思えば「出席したとは言っていない」という答弁もある。一体、どちらなのか。

 招待していないのに会場に現れたのなら、警備に問題があるとも言えよう。内閣府や警察庁の担当者は野党の追及に「個別の事案には答えられない」と防戦に終始しているが、首相周辺への忖度(そんたく)というしかない。

 公的行事に反社会的勢力の関係者が堂々と出席し、税金で飲み食いしたとなれば聞き捨てならない。吉本興業所属の芸人たちが反社会的勢力の集まりに同席するなどしたためにトップが謝罪し、芸人が謹慎処分を受けたことは記憶に新しい。社会正義が政治家の足元から揺らいでいる証しにほかならない。

 4年前には、マルチ商法被害が問題になっていたジャパンライフの当時の会長が招待されていたことも分かった。出席はしなかったものの、招待自体を宣伝に利用していた。衛藤晟一消費者行政担当相が遺憾の意を表明したが、消費者保護を無にするような不祥事であり、被害者の憤りはいかばかりか。

 招待者名簿を巡る疑惑も広がっている。各省庁がおおむね3〜10年の保存期間を設けているのに対し、首相らが推薦する内閣官房は1年未満とし、今年分は既に廃棄したという。しかも廃棄した5月9日は共産党から資料要求があった日であり、何らかの理由で隠蔽(いんぺい)工作をしたと見られても仕方がない。

 野党はシュレッダーで処理したという名簿の復元を求めている。記録や参考になる資料をいちいち廃棄する必要はないという見方は与党内にもあり、疑惑を晴らす意味で野党とともに復元を求めるのが筋だろう。

 総じて公的行事の私物化であり公私混同といえよう。安倍首相は「私自身も事務所から相談を受ければ招待者について意見を言うこともあった」と人選について関与を認めている。

 今年の推薦枠は首相が千人、自民党が6千人というから公費による大盤振る舞いというしかない。さらには首相夫人の昭恵氏の推薦も明るみに出た。

 昭恵氏は森友学園問題で名前が取り沙汰されたものの、政府は「公人ではなく私人」と閣議決定している。桜を見る会の人選は内閣官房や内閣府が最終決定する建前だが、昭恵氏の推薦が影響を及ぼしているのかどうか、これも説明を求めたい。

 また首相は「安倍事務所や安倍晋三後援会としての収支、支出は一切ない」としてきたが、事務所スタッフの上京旅費を巡る疑惑も新たに浮上している。政治資金絡みであれば、逃げの一手は許されまい。

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