平和・協同ジャーナリスト基金賞 「揺るがぬ証言」奨励賞 長崎の被爆徴用工 勝訴と支援の記録

受賞作の「揺るがぬ証言」を手に喜びを語る平野さん=長崎市役所

 平和や人権問題に関する優れた報道をした個人や団体、作品に贈られる第25回「平和・協同ジャーナリスト基金賞」が28日発表された。県内からは韓国人元徴用工3人が長崎市などに被爆者健康手帳交付を求め、訴訟で手帳を勝ち取るまでの経過を克明に記録した書籍「揺るがぬ証言 長崎の被爆徴用工の闘い」が奨励賞に選ばれた。
 元徴用工が手帳交付を求めた訴訟では今年1月、長崎地裁が3人の証言の信ぴょう性を認め、手帳交付を命じた。訴訟の過程では多くの支援者が証言や証拠集めに奔走。長崎地方法務局が被爆事実の証拠となる名簿を破棄していたことも明らかにした。
 書籍は支援者らでつくる刊行委員会が6月に自費出版。選考では「よくまとめられた記録」「日韓両国民の献身的支援が判決に影響を与えたことは特記されるべきだ」と評価された。
 刊行委の平野伸人代表(72)は「市民、刊行委の努力が認められたことは光栄。日韓の徴用工問題は根が深いが、本をきっかけに市民レベルの取り組みを知ってもらえれば」と話した。
 今回は自薦・他薦された61点を審査。大賞は京都新聞社取材班の「旧優生保護法下での強制不妊手術に関する一連の報道」、奨励賞は7点が選ばれた。

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